和球 さんの感想・評価
4.9
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
「音楽アニメ」として他の追随を許さない。平成を代表する作品
1期2期通してのレビューです。
これまで作中にたくさん音楽演奏のある作品をそれなりに鑑賞してきましたが、本作はパッと思い浮かぶ音楽アニメ作品のそれらとは別の次元の作品だと私は思っています。
本作は「音とそれに付随する尺の長さや作画」を根幹に構成された作品です。
ストーリーや人物にも魅力はあると思っていますが音に対するクオリティと熱量が他作品と比べ群を抜いています。
まず音の質ですが同じ曲や同じパートでも演奏者で音質が違ったり、ストーリー初期と後期とで個人や合奏全体のクオリティが異なります。
ながら見では分からないかもしれませんが集中して聴けば素人の私でもはっきり分かります。
少々ネタバレになりますが、作中の演奏曲ソロパートのオーディションがあるのですが、そのシーンはプロと音大生の演奏者を起用して音質の違いを表現しています。
これ、すごい事だと思います。言ってしまえばアニメは所詮アニメです。音質(演奏技術)など同じ人に演奏させて意図的に技術に差をつけるか、もしくは制作する過程で操作すれば進行上支障ないレベルに仕上げられます。
加えて、予算や利益的な側面を考えればプロを起用しないほうが確実にプラスなのにあえてクオリティを追求する姿勢に私は感銘を受けました。
音楽でも何でもアニメの中で一定以上のクオリティが担保されている状態で、そこからさらにクオリティの違いを表現するのは難しいと思います。それを補完する手法としては「やっぱり●●さんはレベルが違う」と言った演出的な側面で差を表現するケースが常套手段だと思いますが、本作はそれを純粋に「音」の違いで勝負しています。「音の【質】の違い」を表現するアニメ。これって今までのアニメにはなかったと思います。
これだけでも本作が音に対してものすごい熱量がある事が伺えます。
周回で鑑賞した際に、より違いを実感するために音響の良い環境で鑑賞しましたがあまりの違いにびっくりしました笑
次に尺の長さと楽器の作画です。
本作はとにかく演奏にかける尺が長いです。Aパートを短くしてBパートの大半を演奏に使ってたりする回もあります。演奏時間が増えれば当然演奏に関わるカット数が増え、運指(繊細な動作)や複雑な形をした楽器の作画も増えます。本作はそれらを無茶苦茶リアルに表現しています。
余談ですが、作中には水が流れるシーンや揺れるシーン、横断歩道の歩行者用ボタンなど音楽に何ら関与しない1秒にも満たないシーン等にもとんでもないレベルの描写が随所に出てきます。京都アニメーションの凄まじいクオリティが垣間見える瞬間です。
最後にストーリーや人間描写。
ストーリー概要は弱小高校の吹奏楽部が全国コンクール出場を目指す、その中で楽器経験者ではあるけどどこにでもいるような少し冷めた主人公の女子高生が人間的に成長していくと言ったもの。
吹奏楽が題材になっている作品は多くはありませんが「高校の部活で全国を目指す」と言った部分にフォーカスすれば一般的かつ王道的な青春ものです。
吹奏楽部が舞台のため主人公以外にも多数の登場人物がありますが、キャラクラーひとりひとりの特徴や魅力はもちろん高校生(思春期)ならではの繊細な心理描写も(私は)リアルに表現されていると思います。
特に先述の通り、少し冷めた主人公がストーリーが進んでいく中で人に対しても音楽に対しても熱くなって成長していく過程は必見です。
そんな魅力的で特徴ある登場人物達が積み上げてきたストーリーだからこそ、山場はもちろん何でもないようなシーンでも節々で琴線に触れます。
登場人物の魅力、ストーリー、音に対するクオリティと熱量、そのすべてが素晴らしいものだからこそ何でもないようなシーンでも映えます。
極力ネタバレを含まずに批評させていただきましたが、私が本作に抱いているイメージはこんなところです。
表題にも記載したとおり、本作は平成に残る至高の音楽アニメ作品だと思います。