Progress さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:今観てる
MIX レビュー
今回は2クールの感想を書きたいと思います。個人的には1クール目に比べてトーンダウンしたように思えますね・・・
1クール目の「イコール」sumikaは、切なさのある音楽とボーカル、小学生の時期を描いた郷愁感、登場人物達の様々な表情や位置関係から見える関係性、四季の移り変わりを描いた時間的表現など、ハイレベルなOPでした。後述のVSの関係性と比較対象となるのは、投馬の性格や心、人間関係を中心に表しているOPだという事です。
蛇足でめちゃくちゃ重要なシーンについて話したいのですが、OPでビデオに投手が移っているシーンがあるのはご存じでしょうか。
このシーンは漫画の方で描かれたあるシーンでして、投馬の孤独性を強く描いているんですね。このシーンがあったから私はMIXが好きなのですが、果たして投馬の孤独は二人の兄弟によって癒されたのだろうかという疑問がわくほど、このシーンは意味が深いと思っています。
2クール目のOP「VS」ポルノグラフティは、高校野球の試合に臨む高校生たちの熱い夏を描いています。イコールと比べると、小学生時代から続く登場人物達のそれぞれの想い、ノスタルジーはそれほどなく、四季の移り変わりもなく夏という季節に焦点を当てています。
「VS」で強い要素は、やはりヒロイン二人の存在ですね。球場の外を歩く音美(この場所のヒロインをヒロインらしく見せる演出が好みではあります)、自転車を立ち乗りで漕ぐ春夏(ロングの彼女が行動力のある少女というギャップ性の面白さに焦点を当てた表現にも見えますね)。二人のヒロインの不自然すぎるほどの振り返りを連続で挟む。この二人の登場人物の性格を対比させています。
やはり「イコール」と「VS」で描いているものの違いは、主人公である投馬であるか、ヒロイン二人であるかという違いだと思います。
まあ、色々比較してみたのですが、どうも論点がそこではない。ぶっちゃけ私の好みの問題だと。
やはり音楽性や映像による「屈折感」がイコールの方が強い、逆に「VS」は真っすぐすぎると思うんです。
イコールを音楽性からみると、まず歌詞、「描いた理想とはかけ離れた自分」など、ちょっと挫折した感じに対し、誰かにそばにいてほしいという柔らかめの感情を押し出した前向きさがお互いを引き出しあっているのが私の琴線に触れたのだと思います。
「VS」は、冒頭の印象的なピアノ伴奏から入るノスタルジックさから少しずつ熱量が上がっていきサビで青春系の爽やかさを印象付ける構成です。VSの歌詞に「バーサス 同じ空の下で向かいあおう」というフレーズがあります。高校野球における試合相手がいるという構図を「バーサス」として、そのままサビに持ってくる素直さ、向かい合おうという、感情ではなく、意思と呼べる強いフレーズ。こういった物から、やはりVSは真っすぐであるのだろうと。
その二つの曲の「屈折感」「強さ」によって私の好みが決まっているのが大きいのでしょう。
さて、EDについて、1クール目のEDの「君に届くまで」の女性ボーカルグループの美しい歌唱が印象的であり、そして家族感を意識した映像については、1クール感想に書いたとおりですが、
2期Qyoto 『君に伝えたストーリー』についてはレビューを書くまであまり印象的ではなかったというのが感想です。
やはりこちらも、夏の印象が強く描き出されているように感じますね。家族的や柔らかさより、夕焼けや横顔、思い出などのノスタルジーのある絵が強い。1期はフォトグラフに移る意識した人でしたが、2期はカメラの意識のない人間の構図で描かれた人やパンチでありました。
好みの話で言えば、ボーカルの美しさという意味で1期のほうが良かったですね。
さて、内容について入っていくと、
1期の時点で危機感はあったのですが、試合のたびに強くなる「天丼感」。
それは、劇伴の使い過ぎが目につきましたね。
アバン(OP前に入るシーン)の試合シーンにほぼ毎回劇伴を使う、演出の使いまわしであったりとか、シーンごとに劇伴がはいるのはわかりますが、劇伴の入りすぎで、うるささすら感じるのが残念でしたね。
そして主人公たちが1年生という性質上のクライマックス感のなさ、長い物語の中で結実したような人間関係の上に作られた人間模様が外側で描かれていないのが残念。
つまり結果ではなく、過程の物語であるからして、まだまだ物語がラストに集約されていない、中間ぐらいの中だるみ感がありました。
2クール目でとりあえずMIXの放送は終わりですが、3クール目はこれよりノスタルジー感を強くしてほしいのと、演出の天丼感をなくした良いものにしてほしいと感じました。
1クール目の感想
今回は1クールが終わる前に一区切りレビューを書いておきたいと思いました。
移ろう季節の中で、少年達のゆっくりと変わっていく関係性にときめきを感じながらも、変わらない想いの美しさも描かれています。
あだち充先生らしいコミカルな日常の中で、子供達と親達の会話に家族の暖かさや優しさを感じられます。
そして野球では、まだまだ本当に熱い夏は訪れていませんが、兄弟バッテリーの強さが少しずつ明らかになっていくワクワク感を感じます。
---------------------------------
あらすじはあにこれのあらすじから引用(濁点で文字化けがあったので一部修正)。
あらすじ
舞台は「タッチ」と同じ「明青学園」。「タッチ」の主人公「上杉達也」の伝説から約30年、今、運命の兄弟が物語の扉を開く・・・親の再婚によって、血は繋がらないが誕生日が同じ、双子?の兄弟となった「立花走一郎」と「立花投馬」は、明青学園・中等部の野球部に所属する 中学2年生。走一郎は捕手、打者として活躍。投馬は「ある理由」から三塁手を務めているが、人並み外れた投手の才能を隠し持っていた。走一郎の実妹で、投馬とは血の繋がらない義理の妹「立花音美」も中学に入学し、2人の周囲はなにやら騒がしい。やがて高校に進学する2人は、甲子園の土を踏むことが出来るのか・・・(TVアニメ動画『MIX』のwikipedia・公式サイト等参照)
---------------------------------
さて、この作品は「タッチ」の世界を引き継いでおり、あだち充先生作品の様々な要素をMIXしたという話もありますが、私は全ては見ていないため、この要素はどの作品のあの要素という問題を解くことはやめておきます。
それよりも、それを知らなくても、本当に人間模様が美しいと思わせてくれる物語、セリフ回し、演出にひきつけられてしまいます。
冒頭に書きましたが、OPとEDで描写される四季を強く押し出す演出。
EDは、四季の移ろいと共に、現在の家族と、立花3兄弟の成長を描いた写真を見るような演出は、セリフがなくても3兄弟と家族の関係性や、家族の暖かさを感じられます。暖かさのどこかに懐かしさも感じられて、少しじわりときてしまいます。本当に素晴らしい。
物語内でも、回想や、現在の時点でも四季の移ろいというのがかなり意識されて描写されており、冬の日に小学生時代に投馬が背負って音美を家まで送った回想の日が印象的です。
おぶってくれた投馬へ、その時に音美が感じた感情を、「かっこいい」という言葉に凝縮したセリフ回しも素晴らしく、それが音美が中学時代になっても変わらないという、不変性の感情の美しさと相乗して、暖かさのある物語を生み出しています。
そして、立花家族の暖かさも、この作品の重要な要素です。あらすじにもあります「親の再婚」を得て、兄弟となった投馬と、走一郎と音美。
少し整理すると、投馬は親父(英介)さんの、走一郎と音美は真弓さんの連れ子となっています。
そんな環境で、投馬は音美を人見知りから明るくしたということで、真弓さんから感謝されています。その真弓さんの感謝の気持ちや、親父さんが走一郎を見守るシーンも、そして何より、兄弟達の中で構築される、兄弟らしさが、暖かくて、見ていてとても心地良いです。
OPの映像は今を目一杯生きるような爽やかな青春に、心を締め付けるようなせつなさのある歌声がはまって、心地よさがつまっています。
そして、高校編が始まり、春夏との出会いにより、恋の予感によって色彩がより鮮やかになり、次回、続きへの期待感が高まるばかりです。