四文字屋 さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
隼貴神速→
レビュータイトルは、孫子の故事「兵貴神速」のモジり。
ハヤブサは神速を以て尊し。
うん。
我ながらいい四文字だ(笑)
作品自体は、ストーリーの薄っぺらさやらキャラの掘り下げ不足やらCG=特に日常パートでのキャラ作画の不出来やらで、
どうも世間ではかなり評判はよろしくなかった模様。
かく言う私も、2話ぐらい観たところで、
「これは空中戦以外には観るものがないな」と視聴中止し掛かったのは、まぎれもない事実。
でもそこから粘ったのですよ。
観続けた。
空中戦がちょっとあまりにカッコよすぎるもんで。
30年ぐらい前、飛ぶ鳥を落とす勢いのスタジオジブリが、
あの伝説の「飛翔作家」=宮崎大先生をして、
月産5分ぐらいだったと記憶している。
セル画の数でいうと2,000~2,500枚ぐらい。
美術=背景画数は推して知るべし。(せいぜい数十枚?)
もし30年前のアニメーションテクノロジーで、同じ見え方するように、この空中戦作るなら、まず背景画の枚数が莫大になる。
さらにはキャラやら戦闘機やらの原画枚数、圧倒的に違ってくる。
なにしろ隼だけでなく、いろんな飛翔体が向きと角度を変えながら動きまくる訳だ。
当時のジブリが同じ絵づくりしたら月産100枚だって作れるかどうか。
さすがコンピューターテクノロジー。
宮崎さんじゃなくたって観てるだけで泣いちゃうゾ!
てな訳で。
動画の面白さだけで観ていたら、
途中からどんどん、
世界観とか、メインキャラ(キリエ)とかの掘り下げが始まって、
いい感じに盛り上がってきた。
サブ爺と子供時代のキリエのエピソードなんか、
名作「シェーン」みたいでじんわりしちまった。
さらには仇役の存在も厚みを増して来て。鬱陶しくさの味付けがしっかり描かれだして。
ついでに「逃げられジョニー」なんてサブキャラまで、めちゃめちゃ笑えてカッコよくて痺れさせられたし。
このあたりでは、キャラのCGも制作側が慣れたのか見やすくなってたし。
まあそのあたりに至る頃には、作品の方は大半のアニメ好きには見切りつけられてたんだけど。
西部劇チックな世界観、なかなかによろしかった、と私は思う訳なのである。
ついでに言っちゃうと、
飛行船を空母に見立てるっていう発想が、作品世界の登場人物たちのアタマで編み出されてたってのが素晴らしい。
少なくとも太平洋戦争の頃の日本にそんなこと考える奴は、公式には存在しなかった、と、思う。思ってるってだけで真偽に責任はもてないが。
それと、メイン戦闘機を、誰でも知ってる名機「零戦」とかでなく、「隼」にしたのが、素晴らしい!
なにせ隼の持ち味が、非力なのに軽量性と旋回性能でドッグファイトに強いってのが、まるで峠のクダリで無敵だった頭文字DのAE86みたいに素敵じゃないか。まあ実際に86が競走してFDやランエボに勝てるとは全然思えないんだが、そこがミソっていうか、太平洋戦争当時の戦闘機の空中戦なんて、それ自体が21世紀を生きるわれらにはファンタジーみたいなもんなので、「それはないだろー笑」っていうことにならないのが、いい。
ウェスタン風戦闘機アニメとみせておいて、実はトンデモSFでした。って展開は、正直いかがなものか、と思うし、そこのところに決着付けられないなら設定自体をまるっきり別物にした方が。。。とか思ったりもしたりしたが、まあ、観ていて面白かったから、それでよし。ということにしておこう。