rie-ru.2 さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
本懐への道標
クズというのは自嘲の言葉。
探し求め、変化を願い、想いを得るために彷徨うひとたちの影。
それにしても、なんて真正面から青春を扱った作品なんだろう。
そこには否応なく性が、自意識が付きまとう。
優位と劣位が、好意と欲が、恋と親しみが分かちがたく入り混じっている。
この作品は当事者のいない恋愛を、本物になれなかった恋愛をこそ描いている。
だから当たり前に弱く醜く、けれど深々と響く。
それしかない恋愛、自分が依存するための恋愛、そんな空虚を経てそれら自身を乗り越えるべきものとしているのだ。
それゆえ、外見に反して本作の核心はとてもピュア。
堕ちて終わるということがない。
堕ちてしまっても、あるいは堕ちかけてしまっても、そこで幕は閉じ夢は醒める。
そして本懐に気づき、あるいは本懐を見つけるのだ。たとえ叶わぬものだったとしても。
最後、二人すれ違うシーンがとても清々しいのは、互いに空虚の殻を破ることが出来たから。
一話で男子生徒に告白された時、「興味のない人に好かれても嫌でしょ」と冷たく言いのけた花火が、
最終話で「ありがとう」と微笑んだのは、きっとその変化を表しているのだろう。
彼ら彼女らがいつか本懐を遂げられるのか、それはわからないけれど。
そこへ真摯に向き合おうとする限り、決してクズなんかじゃない。
そう私は思う。