AXIOM25 さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
・・・信者と言われてもかまわない!
去年(2011年)ネット上でやたらと話題になっていたので見てみる事に。
その結果ドはまりして近年のアニメもちゃんと見なくては!と思うようになりました。
◎物語の評価 :序盤でいかにもな魔法少女ものと思わせておいて3話からのダークな展開。
人生観に関わるようなシリアスなテーマを、分かりやすいストーリーで描いていると思います。
そして全体を通して無駄の無い場面とセリフ回し。
全12話という長さに濃い内容を入れるために、必要の無い部分は削ぎ落としている印象。
そのためにストーリーにスピード感があり尚且つ理解しやすい。ここがこの作品の一番の優れた所だと思います。
賛否両論あるラストも個人的にはとても好きです。
悲しさ虚しさがあるものの、人の願いというものを肯定的に描いてあるので安堵感があり、そこにメッセージ性を感じます。
◎作画の評価 :正直に言うとキャラクターの絵柄は最初抵抗がありましたが、作品全体が好きになるにつれ好ましく思えるようになりました。
アニメーションとして見ると一部のアクションシーンを除いて、クオリティーが高いとは言えない所があると思います。
しかし、特筆するべきは魔女の結界の描写、通称「イヌカレー空間」
その表現の手法は毎回違っていて、1話2話はコラージュ的手法でヤン・シュヴァンクマイエル等のアートアニメや横尾忠則のようなサイケデリックアートを思わせます。
3話の魔女は水野純子という漫画家さんの絵を連想しましたが 現代アートの村上隆との比較をネットで見かけて、なるほど!と思いました。(これはパクリ云々ではなく色々な要素がミックスされているという事です。)
7話では影絵のような表現、これはキャラクターの精神状態とリンクしていて非常に高い相乗効果を生んでいます。
そして9話の魔女はそれまでの物語の結果として現れるもので、それ以前の魔女の結界内の描写がほぼ意味不明だったのに対して、そのパーツ一つ一つに意味があることが分かります。
このことでそれ以前に出てきた魔女の考察なんかをしたくなってしまうんですよね・・・。
劇団イヌカレーによるこれらの魔女の描写はそれだけでも見るに値するものだと思いました。
◎音楽の評価 :1話冒頭から流れるMagiaはヘビーなギターとブルガリアンヴォイスを思わせるコーラス、全体に重い雰囲気ながらキャッチーなメロディで印象的です。
3話よりEDとして使われますが、その不安を煽るような映像と合い待ってインパクトがあります。
次回予告で使われる曲はsaltarelloという中世イタリアの舞曲がベースではないかと思います。
そして魔女のシーンなどで流れるBGMにはダークな打ち込み+民族音楽風味のものが多い。
これまで上げた音楽に共通したイメージは一言で言うと「ゴシック」。
これは単純な考察をすれば魔女=キリスト教徒に対しての異端、異教徒と言うような考え方が出来ます。
反対に平穏な日常のシーンではアコースティックギターなどを使った穏やかで優しい曲が印象的。
最終回では正調でクラシカルな曲が使われ物語の結末を情感溢れるものにしています。
最後にOP曲のコネクト、とてもキャッチーで普通に良い曲だとは感じていたのですが、10話のEDとして流れた事により更に特別な曲と感じることになりました。
◎キャラ・声優の評価:この作品はどちらかと言うとストーリー重視で、キャラクターは物語の必要に応じて作られていると感じます。
しかしモノローグを必要最低限に抑えて、セリフと画だけで主要なキャラの心情をリアルに伝えていて、特にさやかは非常に現実感のある女の子として、ほむらとまどかは多様な面を描きつつ芯の部分では一貫性のあるキャラとして、声優さんの演技もあってか強く印象付けられます。
キャラクターデザインの面では魔法少女たちについてはこれ以上無いと思えるほど好きになりましたが、大人のキャラに関してはやはりこの可愛らしすぎるデザインが足を引っ張っているように感じます。
逆に8話に出てきた顔の見えないホスト2人組みが、リアルな大人のキャラとして異常に印象的です。
◎全体的な感想:この作品の魅力は、脚本・キャラクター・異空間設定・演出・音楽・声優・・・など其々が持ち味を十分に発揮した上でまとまりのある作品になっている所。
色々な要素がぎりぎりのバランスで全12話に詰まっていて、画面から緊張感を感じます。
実際それぞれの個性が噛み合わずバランスを崩しているような所も多少見受けられますが、それを補って余るほどの熱と引き付ける力を感じる作品です。
そうした熱のようなものが、最近のアニメを見てなかった私のような人間にも伝わって今の人気につながっている様に思います。
そして繰り返しになりますがストーリーに無駄が無く理解しやすい所がこの作品の良さの根幹だと思います。