しゅりー さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
子供の世界を真摯に描いた名作
後に「この世界の片隅に」を描く片渕須直監督の劇場アニメ。
山口県防府に暮らすおでこに特殊なつむじをもった少女、新子が
東京から転校してきた貴伊子と友達になっていく日常を描いた物語。
昭和30年代の農村のおおらかな空気が見ていて優しく、
また各キャラクターの感性や話の進み方が
子供のころに感じた様々な物を思い出させてくれるような
そんなアニメだと感じます。
本編で例えて言えば貴伊子が転校してきた日の
珍しい物を見たり感じたりした子供たちの奇異のまなざしや
自然に異端を排除するような女の子達のちょっと残酷なところ。
そんなシーンの中で貴伊子から無神経に色鉛筆を借り、
筆圧が強すぎて色鉛筆の芯を折っても何も気にしていない男の子。
そうした小学校の風景にああ、小学生の頃って
そんな感じだったと思い出すことがあります。
また、人によるかもしれませんが
新子の想像として描かれる過去の風景が
日常的に唐突に空想に入る子供の感じ方を思い出させてくれたり、
本編中にはっきりと悪人として描かれる人物がいないことに
大人に守られて育った実感を思い出したりするかもしれません。
物語については本当にこの時代の当たり前なことしか
起こらない印象ですが、そんな中で次第に
防府の暮らしに慣れていく貴伊子の感情の動き方も
とても見応えがありました。
公開時の宣伝もあまり大規模には行われなかったようで
まさに「知る人ぞ知る」というような印象のあるアニメですが、
はっきり名作と呼ぶことのできる良いアニメだと思います。
日常に疲れた方への一つの清涼剤としてオススメします。