oxPGx85958 さんの感想・評価
4.2
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
真面目な作りで好感が持てた
原作マンガを読んでの追記
その後、原作のマンガを最新刊まで読みました。意外なことに、原作は「少年誌連載のちょっとエッチなラブコメ」ど真ん中という感じの作品でした。これと比べると、アニメ版はかなりシリアス寄りに作られていたと思います。「大人向け」という言い方も可能かもしれません。原作にある「少年誌向けの読者サービス」が減らされ、登場人物たちの描き方に、より現実味が与えられていたように感じます。
これを踏まえて、アニメ版の評価を一段階上げることにしました。マンガ版のスタンスも悪くはないのですが、アニメ版は「リアリズム指向のドロドロ恋愛もの」という、いまの深夜アニメの世界にはあまりない分野での良作になっていたと思うからです。
両者の違いを端的に表す例が、佳村はるか演じる柏原ももというキャラクターの描かれ方でした。極論すると、マンガ版の柏原ももは、ハーレム物の女性キャラクターの一人に過ぎず、彼女の生き方も背景もハーレムものとしての物語の中での一バリエーションにしか見えませんでした。一方、アニメ版の柏原ももには人間としての厚みが感じられたし、彼女の取る行動の痛々しさに現実味がありました。
ただまあ、ここまで書いて思ったのだけれども、アニメ版の『ドメスティックな彼女』がカバーしている範囲だと、まだ「ハーレムもの」としてのあり方がはっきり打ち出されていないんですよね。アニメ版は、物語が露骨にそうなる前のところで終わらせている、という感があります。仮に2期以降が作られることになったら、このシリアス路線を持続するのは困難になるでしょう。
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「ラブコメ」ジャンルのアニメに、投げやりになってるとしか思えない作品が氾濫するなか、本作は「ラブ」にも「コメディ」にも真面目に取り組んでいるのが伝わってきて好感が持てました。
女性の登場人物の造型に突き放した感じがあるのが面白いなと思ったら、原作の作者は女性なんですね。主人公の男の軟弱さに温かい視線が注がれるのも女性作家っぽい。
夏生を演じる八代拓と瑠衣を演じる内田真礼の演技・演出が大いに貢献していたと思います。内田真礼は同時期の『約束のネバーランド』と『盾の勇者の成り上がり』の3作で、それぞれまったく違う役柄をやっていますが、本作での瑠衣が最も野心的で面白かった。
一方、日笠陽子が演じる陽菜からは、場面場面をうまく処理する「技術」を感じてしまいました。このシーンではこういう心境の変化があったから、こういうトーンになっているんだな、というのが透けて見える、というか。
Wikipedia のあらすじ紹介を見ると、アニメ化にあたっていくつかの重要な要素や事件が削除されているようです。1シーズンで切りのいいところまでを描くという制約があるのは仕方がないが、本作のようなドラマでは、不用意な切り詰めをせずにじっくりと物語を追っていくほうがよかったのではなかろうか、と。
一番割を食ったのはアレックスだとして、文芸部顧問の桐谷先生も、その行動がそうとう意味不明になっているように感じました。アニメ化にあたって、原作のすべての要素を盛り込むのは無理だという一般論はともかく、問題なのは、アニメを見ているときに「そこにあってしかるべきものが欠けている」という感覚が生じてしまっていることなわけです。
音楽の甲田雅人は、直近では『あそびあそばせ』でコミカルなシーンに効果的な音楽をつけていた人。本作のシリアス路線もとても良かったです。