鰺鱒 さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
あざとくしたたかな特地娘は大好きです。
[2019/04/16 v1]
[2019/04/20 v2 一言追加]
(長いですが、大事なことは末尾にあります)
原作はある理由から界隈で話題になったときに、チラリと。
一期、二期合わせての感想となります。
全体として作画は綺麗と思います。車両のでこぼこ道を走る描写も丁寧。
主要キャラクターも、出てくる人数の割には丁寧に描かれていると思うし、声の演技は総じて良いと思います。
音楽も良く、特に一期のOPと二期のEDはかなり好き。
世界観の根幹は、「戦闘妖精 雪風」に通じるものがあります。
雪風を「なんだかよく分からないハード目なSF世界と南極がつながっちゃって、超国家軍があちらでワッショイ」とするなら、本作は「なんだかよく分からないファンタジー中世風世界と銀座がつながっちゃって(これが、ゲート)自衛隊があちらでワッチョイ」。雪風では事実上あちらの世界から押し返されてしまいますが、本作では政治・軍事両面においてあちらの世界でこちらの世界のあれやこれやが無双します。とはいえ、自衛官単体では特地人の戦闘種族にはかなわず、魔法は扱えるものは小数ながら近代兵器を凌ぐ効果を持つ、また、特地に生存するドラゴンは自衛隊でも「全力」(分隊規模じゃ敵わない)そういう世界観になっています。
途中までの物語は、伊丹と愉快な仲間たち(第三偵察隊:人数的に第三分隊かな+特地三人娘)の周りで起こる出来事に視点を当てています。12話を境にして、伊丹を中心とする物語と、日本と特地帝国との国家間のやりとり=軍事を含めた外交戦の物語のパラレルへと分岐していきます。マクロと言っても、外交と特地の政治の現場で動く人の物語であり、群像劇的な展開となります。16話で完全にパラレルとなり、伊丹たちのミクロな視点の物語と、マクロな外交戦の物語の交差は(ちょっとした行き来はあるものの)最終話までありません。ゲートでつながった「特地」の謎をさらりと解説したところは良かったと思います。この回もそうなのですが、作品を通してCM入りのアイキャッチのまでの数秒間の使い方が良かったと思います。6、7話の伊丹の叫び連チャンとか。
ただ単に自衛隊が特地を蹂躙するのでは無く、自衛隊全体の活動としては特地において銀座とつながった一部(アルヌスの丘)をのみ「防衛する」というのが基本で、あとは「特地人の要請」もしくは「特地人の保護」を名目にドンパチします。帝国など、特地に存在する国家を認めているので、ある程度交流が進んでからは外交マターの比重が高くなり、反面、伊丹はもはや隊からは切り離された存在として特地を気ままに冒険することになります。
ここら辺は、うまくお話しを作ったなという印象です。原作者さんが元自衛官だそうで、しかも、自らがいた自衛隊という常に定義論争にさらされる存在を扱っているだけに、できる範囲の配慮はされているのでしょうか。アルヌスの占拠は、事実上の銀座防衛と解釈可能な範囲にあると言えなくも無い。とはいえ、偵察部隊の派遣やらドンパチやらは(如何に名目があろうと)リアルな自衛隊では難しいでしょうねぇ。まぁ、そこら辺はお話しなので、いちいち目くじらたてることも無いと考えます。冒頭に述べた「ある理由」もいわゆるポリコレ棒ブン回し案件なのですが、、なにがご不満だったのか。特地三人娘が国会議事堂に召喚される場面がありましたが、この場面における今(2019年4月現在)の野党に対する皮肉のこもった作劇にはゲラゲラと笑ってしまいました(完全に別件だが、別室で通訳していた3reconの二人、これに選ばれるとは実は相当優秀だな)。
主人公・伊丹をコミケ(とは言わない)に向かう電車のシーンで見た瞬間、頭に浮かんだ別の作品の人物がいます。カミソリ後藤の昼行灯。パトレイバーの後藤隊長です(漫画の方ですが)。伊丹が銀座を襲撃した特地兵のひとりをナイフで殺害する描写から実質的なお話しが始まりますが、これが批判されている向きもあるようですね。曰く、「一般の自衛官にあるまじき・・・」。僕はこの描写の時点で「この人後から強いぞ凄いぞがでてくる”一般じゃ無い”やつだ」と思ってしまいました。案の定、レンジャー持ちで特戦群あがり(こっちはちょっと驚いた、っていうかそれが知られてるのってまずいんじゃ・・・)というのが出てきましたね。それで階級据え置きくらってたって、逆に相当なもんだと思う。
そういえば昨期(2019冬期)にうっかり自衛隊を巻き込んでしまった作品がありましたが、こういうセンシティブな存在を描くなら、「戦国○○」とかのように、活動する場所を思いっきりリアルから離した方がいろいろ自由にできて、見る側も安心できる気がします。その点本作はうっかり銀座でつながっているだけでなく、こっちの世界でドンパチまでやるものだから若干のひやひや感は確かにありました。ただ、ここもうまいことやったなと思ったのは日本も含めた「特殊作戦部隊」同士の戦闘にとどめたことです。基本的に詳細非公開な人員同士なので、それこそ空想で押し通せます。しかも戦闘の幕引きは特地人なので、よりいっそう無問題。
自衛隊の協力を取り付けたらしく、軍事描写はマニアも認めるもののようで、いわゆる「海外の反応」サイトで大絶賛されていました。迫撃砲の着弾音が遅れて届く描写を褒め、とあるサイトでは世界のレーション品評会が開かれ、自衛隊の風呂はCrazyと書かれ、あるレビュアーは健軍一佐の拳銃の持ち方でイキかけたとのたまってました(さすがにわかんねぇ・・)。23話はその集大成といえるかもしれませんね。6話、イタリカ戦での「ワルキューレの騎行」は言うまでも無く映画「地獄の黙示録」のパロディですね。イタリカと言えば、イタリカで伊丹がぶっ倒れて以降、伊丹の特地語能力が飛躍的に向上しますが、あれは、膝枕の神官様がなにかしたのでしょうかね。
最終話の締めは、ベタと言えばベタなのですが。。。
身震いしてしまうほど僕が「望んでいたもの」が見られました。
24話の長丁場を経てからの、とても良い、綺麗な「終幕」の形だったと思います。
===========ここから大事なこと=========
と、ここまで特地三人娘のことを一切まともに書いていませんが、ここまで前置きです。
本作品は特地三人娘(テュカ、レレイ、ロゥリィ)とヤオ女史とピニャ殿下と薔薇騎士団の面々を愛で、たまにしか登場してくれない黒川さんの健康的な色気とテューレさんのやつれた色気を堪能し、シェリーの「すがわらさまっ」に舌打ちするのが本筋です。
テュカ、レレイ、ロゥリィの三人娘はいずれも捨て難く、「すがわらさまっ」の破壊力も認めつつ、個人的にはピニャ殿下がお気に入りでした。ですが、本作のこの方面でのピーク値、最大瞬間風速を取れと言われたならば、候補は他にもあって悩ましいが、第4話のCM入り直前にレレイが放った「いただき ます」を挙げたいと思います。