雀犬 さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ヤマアラシのジレンマ
【概要】
2012年夏。原作は庵田定夏によるライトノベル。原作の約半分、4巻までがアニメ化されています。第4巻「ココロコネクト ミチランダム」に相当する第14話~第17話はOVA制作ですが、今は各種配信サイトで第17話まで観れるはずです。(私はdアニメストアで視聴しました。)
私立山星高校に通う、文化研究部(通称、文研部)に所属する5人の男女(比率は男2・女3)が主人公の青春群像劇。5人は入りたい部活が特になかったので消去法的に文研部に入ったのですが、1年生同士、妙に気が合うところもあって平凡ながらも楽しく部活生活を過ごしていました。
ところがある日から5人の身に超常現象が起こるようになります。焦る5人の前に<ふうせんかずら>を名乗る謎の存在が登場し、「面白いから」という全く納得できない理由で、君たちで実験を行うと告げられます。<ふうせんかずら>は悪霊のように担任教師に憑依して現れるため5人は手を出すことができません。<ふうせんかずら>によって引き起こされる現象は{netabare}人格入れ替わり(ヒトランダム編)・欲望解放(キズランダム編)・時間退行(カコランダム編)・感情伝導(ミチランダム編){/netabare}とさまざま。
謎の現象が起きるたび、それぞれが密かに抱えている思いがみんなの前で晒され5人の友情関係にヒビが入ります。その危機を乗り越えて人間関係を修復し、より強い絆を作り上げていくというのがストーリーのあらましです。
【ヤマアラシのジレンマ】
「まぁそのうち気づくわよ。
大人になるってことは近づいたり離れたりを繰り返して
お互いがあまり傷つかずに済む距離を見つけ出すってことに。」
(新世紀エヴァンゲリオン 第3話「鳴らない、電話」より)
ヤマアラシのジレンマは、ドイツの哲学者ショーペンハウワーの寓話を元にした人間関係について例え話・心理学用語で日本ではアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の赤木リツコの台詞に登場し、有名になったと言われています。
ある冬の日のこと。ヤマアラシは一匹だと寒いから、他のヤマアラシと身を寄せ合おうとします。しかし、くっつくとトゲが刺さってお互いを傷つけてしまう。しかし離れてしまうと再び寒さに凍えてしまう。くっつきたいのにくっつけない、離れたいのに離れられない ――― こんなジレンマが人間関係に似ている、というものです。
ココロコネクトが描いているのは、まさにこのヤマアラシのジレンマではないでしょうか。直接的には、<ふうせんかずら>の傍迷惑な実験のせいで人間関係が拗れているように見えます。しかし<ふうせんかずら>が現れる前から文研部は問題を抱えている。そう、高校生の仲の良い美男美女グループで恋が生まれないわけがないんだよね。
軽薄キャラを演じている青木は「唯が好きだ」と公言しているけれども唯は本気に受け取らずやり過ごししている。唯には拒む理由があるのだけども明かさない。一方の太一・伊織・稲葉のトライアングルは全員ほぼ無自覚。要するに文研部は物語の始まりからすでに「感情の火薬庫」のような状態で、<ふうせんかずら>はそこに火をつける存在といえます。
数々のランダム現象によって、5人の秘められた恋心や過去に受けた心の傷などが明るみになります。これ以上傷つきたくないし傷つけたくないという気持ちと、友情を失いたくない、あるいは恋を諦めたくないという相反する気持ちに揺れる。その板挟みのなか、すれ違いや対立を何度か経てお互いに傷つけあいながらも、より親密な関係を築き上げていく。幾度となく訪れるピンチを乗り越える5人の強い絆が本作の見所でしょう。
全体的に会話が多く、シリアスな空気が漂い、ビジュアルイメージよりずっと内容は重い。生の感情をぶつけ合う姿は青臭くて観ていて疲れるところもあるけれども、見終えた後には青春らしい爽やかさを感じる良質な青春ドラマです。それと、いなばん可愛い。いなばん可愛いよ、いなばん。