ようす さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
広大な宇宙で、己の願いや理想を掲げた者たちの戦い。これは、歴史の物語。
原作もアニメも有名なこの作品は、
一度見ておきたいと思っていました。
こんなに長い話数のアニメを見たのは初めてでした。
覚悟はしていたもののやはり長くて、しかも話が難しくて、
途中、心が折れかけました。笑
だけど、彼らの戦いがどこにたどり着くのか。
それを見届けたい気持ちの方が強かったので、完走することができました。
結果、最後まで見てよかったと満足しています。
全110話です。
(他に外伝や劇場版もありますが、まだ見ていません。)
● ストーリー
広い銀河系に2つの勢力が存在していた。
ひとつは、皇帝と貴族が支配する銀河帝国。
もうひとつは、民主主義の理念を掲げる自由惑星同盟。
それぞれの勢力で、
後に歴史に大きな影響をもたらす存在が育っていた。
銀河帝国では、
姉を皇帝の後宮として連れていかれ、
姉を取り戻すための力が欲しいと軍人になったラインハルトが。
自由惑星同盟では、
望んでいなかったが士官学校に入り、軍人として武功を立て、
周りから期待されていたヤン・ウェンリーが。
2つの勢力は、互いの理想や目的のために争いを続けていた。
自分たちの信念が絶対的なものであることを証明するために…。
2つの立場が登場しますが、
どちらが正義だとか、どちらが主人公だとか、そういうものはありません。
どちらも正義で、どちらも主人公です。
どちら側にも、悪い人もいれば、いい人もいます。笑
帝国軍と同盟軍の話が交互に描かれています。
それぞれのお国事情にも触れていくので、
政治的な側面も濃いです。
もちろん銀河を舞台にして、
戦艦を使って戦う話も多く、
作戦を立てて、それが成功したり失敗したり、
知略のぶつかり合いが面白かったです。
ひとつの作戦で動きが変わり、
その作戦を見破ることでまた動きが変わり、
いくつもの作戦が張り巡らされ…
もうわけがわからないほどでしたww
どこまで先を読んで作戦がたてられているのか、
もはやついていけませんでしたw
それほど、じっくり深く練られていて、すごいんです!
≪ 歴史とは ≫
この物語のテーマを一言で表すのなら、
やはり「歴史」だと思います。
瞬間はただの“点”であるこの時間。
それらが重なってつながって“帯”となり、
歩みを振り返った時、それは“歴史”となって刻まれている。
歴史の流れの重さと、偉大さに圧倒される。
そういう110話です。
ひとつひとつのお話がすごいわけじゃない。
積み重ねられた歴史がすごいんだ。
なるほどこれは110話見なければ感じられない重みだと思います。
総集編やダイジェスト版では、
戦いのおもしろさや登場人物たちのすごさはわかっても、
重みまでは感じられないと思うので。
この「銀河英雄伝説」は誰のための物語なのだろう。
歴史は、誰のための物語なのだろう。
個人の思想や譲れないものがぶつかり合って、
生き残ったものや人が作りつなげていく物語。
それが歴史なのであり、
この作品なのだと感じました。
ヤンは元々歴史家になりたかったということもあり、
歴史に対する考え方を話すことも多く、
感心させられる名言がたくさんありました。
ヤン名言集とか、ありそう。ほしい。笑
いつの時代を見ても、
人類は同じような過ちを繰り返しているような…。
人は権力を求め、争わずにはいられないのか。
恒久的な平和など実現不可能なのか。
政治家や権力者が野心を出せば、簡単に壊されてしまう。
それ以外の人たちは巻き込まれて振り回される。
発展は悪いことではないけれど、
それを独占しようとする、権力を握りたいという欲望が、
たくさんの人の平和を脅かす存在となってしまうのかしら。
絵本「六にんの男たち」を思い出しました。
(戦争への道を歩んでしまう人間の姿が、
単純明快にわかりやすく描かれています。)
彼らが歩んできた、110話という帯がつづった歴史は、
長い長い宇宙の歴史の中ではほんの一部分のことでしかないけれど、
彼らの精一杯生きた証であることは確かです。
歴史はいつでも単純じゃない。
いろんな立場の、いろんな思惑が巡って絡み合って、歴史が動く。
そして、人生に終わりはあっても、
歴史には終わりもゴールもない。
≪ 2つの立場 ≫
1.
帝国貴族が支配している帝国。
同盟軍は帝国から逃げ出した“反乱軍”である。
だから戦争をするのだ。
2.
惑星が同盟を結び、帝国に抵抗する。
奴らは民衆を虐げる悪である。
虐げられた民衆を開放するため、我らは戦う。
どちらにも掲げる正義があり、
守りたいものがあり、
己の信じるものを貫かなければならない理由がある。
どちらの立場だけを応援なんてできないから、もどかしい。笑
帝国軍が優勢になると同盟軍の事が心配になるし、
同盟軍が優勢になると帝国軍応援したくなるし。笑
民主政治とは…専制政治とは…国家とは…
そんな理想や理論がたくさん語られます。
言っていることはおもしろそうなんだけど、
理解するのは簡単ではありません。
でも理解したいな。
なんとなくでしか理解できなかったけど^^;
● キャラクター
初めは全然覚えられなかったキャラクター。
だって多すぎるんだもの…!
そしてなんか顔が似てるんだもの!笑
しかし不思議なことに、
彼らはみんなかっこいいんです。
貫禄というかオーラというか、
活躍や言動を見ているとかっこよく見えてきます。
内面からにじみ出るかっこよさ。
帝国軍の偉い軍人の方(司令官?)たち、
初めは名前も顔も覚えられないし、
ちっともかっこよさを感じられなかったのに(見た目の話)、
今ではみんなそれぞれのかっこよさがわかるよ。
頭が良くて堂々としていて、惚れ惚れしちゃう。笑
帝国軍では、
ミッターマイヤー、ミュラー、ケスラーの三人が、
同盟軍では、
ヤンとアッテンボローの二人が印象的でお気に入りです^^
そして声優さんが豪華です。
聞いたことのあるベテラン声優さんの名前がずらり…。
「銀河声優伝説」という異名を持つのも納得です。
● 音楽
高貴な雰囲気の音楽が多いです。笑
OPは帝国軍、EDは同盟軍が描かれています。
どれも好きです^^
銀英伝の雰囲気にも合っていると思います♪
● まとめ
壮大な、だけど歴史のほんの一部分でしかない物語。
人は何のために戦い、血と涙を流すのか。
苦しい思いをしてまで戦い手に入れたいものは何なのか。
本当に手に入れたいもののためには、
時間も労力も惜しむことはできない。
戦い続けていなければならない。
それでも手が届かないまま死を迎えてしまうこともある…。
人生に終わりはあっても、歴史に終わりはない。
たくさんの喪失感を残しながらも、それでも歴史は続いていく。
また新しい者たちが時代を受け継いでいくから。
この作品らしさを感じられる、
余韻のあるラストでした。いやー、すごい作品でした。