えりりん908 さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
笑顔の恐ろしさに憑きまとわれ、さいなまれます!
今敏監督の、「PERFECT BLUE」の鬱感覚に満ちた恐怖と、「パプリカ」の躁感覚に満ちた不安を結ぶ、重要な作品だと思います。
しかも劇場映画は4作品を遺してくれた今監督ですけど、TVアニメを監督されたのは、唯一この作品だけなんです。
この作品のメッセージ、視聴者はしっかりと受け取らなくてはなりません。
作品は、双極性障害の、一方の端から反対の端までを、ひとつの作品でつなごうとしてくるので、まったく気を抜けません。
テレビ放送された作品ですから、一見すると看過しそうなぐらいにオブラートに包まれてはいますが、
その中に心身を浸してしまうと、鮮やかでグロテスクな景色が見えてきます。
現実社会の理不尽も描かれます。
解離性障害に悩む人が出て来ます。
統合失調症らしき症状をもちながら、それに無自覚な人も出て来ます。
抑うつ症状が進行してしまって、完全に現実逃避してしまった人も出て来ます。
この世のものならざるものも、気をつけないと判らないぐらいにさりげなく出て来ます。
痴呆老人が、何故か「気」を孕んだキーパーソンとなって存在しています。
刑事も出て来ますが、この「気」に圧倒され、社会から逸脱していきます。
すべてを同じ目線の高さで体験しなければなりません。
そして、彼ら彼女らの絶望や希望をいっしょに体感することで、
オープニングの、登場人物が次々に出て来ては満面の笑顔で笑う画像が、
どんどんどんどん、怖くて気持ち悪いものに変貌していきます。
障害に苦しむ人は、その人自身は自らと向き合うことで、この狂気の底なし沼から解放されますが、
世の中がそれで良くなったりする訳ではない、という強烈なメッセージが、
最後には謎の計算式の見事な継承によって、
こんな事態は恐怖に圧迫され、現実に打ちのめされる人がいる以上、
何度でも何度でも何度でも、繰り返されることだと暗示されて、
作品は終わっても、あなたの人生はハッピーエンドじゃないでしょう?と密やかに伝えてきます。
オープニングの、満面の笑顔の恐怖を受けて、
その対比のように、
安らかに眠るすべての登場人物たち。
みんな、ただ眠っているだけなの?
それとも・・・