えりりん908 さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
極彩色の狂気。予測を超える作画美。
今敏さんの監督デビュー作「PERFCT BLUE」を観て衝撃的だったので、続けて同じ今敏監督作品の「パプリカ」を視聴しました。
今監督の第4作というか、すでに若くして鬼籍に入られた方なので、劇場作品としてラストの一作が、この「パプリカ」です。
そして・・・
これが、スゴイ!「PERFCT BLUE」以上の衝撃。
内容自体は、ひとことで言っちゃうと、「夢探偵」という、割とありきたりな設定なんですけど、その中身は、想像の範疇外のアバンギャルドな映像と展開でいっぱい!
今監督お得意のメタ構造が、今度は夢と現実の境界線を侵食し、破壊し、逆転して鑑賞者の精神に迫ります。
しかも、今が現実なのか夢なのか? 夢と思った場面が、自分の夢なのか誰か他人の夢の中なのか判らない、という面白さ。
これは、「PERFECT BLUE」の鬱展開・恐怖感覚とは真反対の、
躁展開で、しかも愉快な狂気に満ちています。実際、吹き出しそうに笑っちゃうシーンもたくさんあって、思い返すとそれがすごく気味の悪いことだったりします。
こんなの見たことなかった。
強いて言えば、双極性躁鬱病の人の頭の中に入り込んで、誇大妄想を共有してしまうと、こんな風なのかな?という奇妙な感覚。
人の笑顔の気味の悪さと、視聴者の想像力を軽く超えてしまう、精妙なのに不思議で不安で気持悪い場面を嫌というほどリフレインされて、観ていて強迫観念とも違う不気味な感覚に襲われて、人の狂気のかたちの根源のようなものを、思う存分、疑似体験しているような感じです。
ついでに、「PERFECT BLUE」以来のエロチックでグロテスクな感覚も、一瞬ですけど、結構強烈に味わえますし、
なんだか妙に壮大な勧善懲悪のカタルシスも、最後には得られます。
ただし、気になるところもあって、それは、以下の2点です。
ひとつめは、キャラクターデザインが、いつもそうなんだけど、やっぱり劇画チックで癖が強すぎる。いわゆるTVアニメっぽいキャラとは全然違うので、この部分は慣れは必要だと思います。ただ、監督デビュー作だった「PERFECT BLUE」よりは、ちょっとポップな感じに寄せてきた気もするんで、この作品のキャラは、まあまあ見やすい方かも、とは思います。
もうひとつが、主人公のCVを担当する林原めぐみさん。上手い声優さんだと思っていたのに、今回はかなり残念な感じ。もっとやれたんじゃないかって思うんだけど、役作りが薄っぺらな感じがしたし、もしも不向きな役なのだったなら、こういう役に向く声優さんはいっぱいいるのに!って思っちゃいました。
ともあれ。
自分の夢に捉われて苦悩にまみれながら、さらに他人の夢をシャワーのように浴び続けて心痛にもがき続ける登場人物たちに同期してしまい、
「やばい。今夜、眠るの怖いかも。」と思った、珍しいタイプの恐怖感を植えつけてくれる、まさしく「怪作」だと思わせられた作品でした。