えりりん908 さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
壊れた世界は、不気味な泡の実存を識るか?
この作品、相当なアニメマニアか、
セカイ系作品の愛好家だけが対象だったのかな?
よく理解できない部分、たくさん残ってしまいました。
配信サービスに旧作アニメの方もアップされてたので、
予習のつもりでちょっと観てみたら、
あまりにも凄惨で理不尽な感じで、
挫折してそのままにしていたので、
それがよくなかったのかも・・・
私のような、あまりアニメをしっかり観て来たって訳じゃない者には、
主語も述語もはっきりとしない文章を読み進めていく感覚に近くて、
例えて言えば、ヘンリー・ミラーの南回帰線を読んでいる時の様な。。。
その独特の、暗くて混乱してて不安定な雰囲気はすごく魅力的だけど、
今回放送された4つのエピソードのうちでは、
正直、中心的なエピソードだった「VSイマジネーター」編(#4~9)と、掉尾を飾る「歪曲王」編(#14~18)は、
誰が何処を向いて語っている物語なのか解らなくて、苦痛ですらありました。
そして、このふたつのエピソードで、
特にはっきりと出ていたのが、
シリーズを通しての基本姿勢として、
「誰が主人公なのかをはっきりさせない。」
「誰の視点での物語なのかを固定させない。」
「正義とか悪とかの立場をはっきりさせない。」
「対立構造が明快な対決的な展開にはしない。」
という演出態度で、会話劇としてのロジックの揺れや歪みを際立たせるとか、
回数ごとでも、エピソード内でも、時間軸をはっきりさせない、ということも含めて、
どうやら、
「そうでなければ(そういう風にしなければ)ブギーポップじゃない。」
というのが最初からの制作方針だったようなので、
ここは文句を言ってもしょうがないのかも知れないな、とは思いました。
その分、最初のエピソード「マンティコア」編」(#1~3)と、
三番目のエピソード「夜明けのブギーポップ」編(#10~13)は、
展開も解りやすく、悪(世界の敵)と正義(世界の敵の敵)との対立構造とかアクションとかも切れがよくて、
さらには、ブギーポップも炎の魔女も颯爽としてて格好よかったので、
これは見やすく、興味深く視聴できました。
ただ、全体を通して、観ていて不満を感じたのは、
あえてそのまま原作をリスペクトしたんでしょうけど、
キャラクターデザインがルックスも服装も髪型も台詞も、ひどく古臭いというのは強く感じました。
それ以上に不満だったのが、
会話劇の側面をもっている作品であるからこそ、
原作の言葉で現代にマッチしなくなった部分は、そのまま使うのでなく、
うまくアップデートして欲しかったと、思わずにいられなかったことです。
例えば、「高校生は男女交際は禁止だよ?」なんて台詞、無意味すぎてギャグかと思っちゃいましたし、
なによりも、特に中心的なポジションにいるブギーポップについて、
「多重人格」という、精神医療では半分死語みたいな用語を、
しかも「多重人格は証明されていない、虚構(詐病)かも知れない現象」などと、
30年以上前の常識を振りかざされて、納得しろというのは陳腐すぎます。
すでに症状自体は存在が確認されていて、
対処療法が確立されつつあるし快癒例も多々ある、
しかし病理の根本的な発生要因についてはまだ不明な部分も多い、
「解離性障害」として、ちゃんと現代的な解釈をほどこして、
そのうえで、それでも謎が多すぎるブギーポップという存在を
「不気味に浮かび上がらせて」欲しかったなと、思います。
まあこれだけいろいろ考えさせられているということは、
結局、何でかは判らないけど、それだけ惹き付けられたってことでもあります。
原作が、名作として高く評価されているから?
主要キャラクターたちが素敵で、格好いいから?
展開の不安定感や不気味さや不思議さが面白いから?
こたえはきっと、たぶん、全部YESであり、NOでもあると思います。
不気味な泡は、解釈して解ったつもりになっても、
あるいは
世界の危機に現れる具体的存在であっても、
実は都市伝説に過ぎない非存在であっても、
そのずっと先にまだ、謎を残して屹立している。
そういう世界観が魅力なんだと思います。