takarock さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
漢なら背中で語れ!!
この物語は多くを語らない。
照りつける太陽の下、
荒野を疾走するロードバイクの群れの中でひたすらペダルを漕ぐある男の
滴る汗が、吐き捨てるような呟きが、そして、その背中によって
物語の背景が徐々に浮かび上がってきます。
2003年7月に劇場公開。
原作は、黒田硫黄の短編漫画集『茄子』に収録された『アンダルシアの夏』。
宮崎駿も大ファンと公言する程絶賛しており、
本作の監督は高坂希太郎。
故にという訳ではないのですが、
非常にジブリっぽい作風を感じましたw
特に飲食が絡むシーンなんかはまんまジブリですw
予備知識がない状態で、
「これはジブリ作品だよ」と言われたら、
何の疑いもなく信じてしまっていたと思いますw
私が本作を視聴した経緯は、
まず『弱虫ペダル』を視聴して、ロードレースに興味を持ち、
同じロードレースを取り扱う本作をたまたま視聴したのですが、
「あっこれやばい(小並感)」と視聴中に感じました。
『弱虫ペダル』と本作を比較すると、
同じロードレースを取り扱ってはいるものの、
作品の性格はまるで対照的で、
『弱虫ペダル』が「動」ならば、本作は「静」です。
少年誌的な分かりやすい友情・努力・勝利なんてものもなく、
手に汗握る熱血感というのも全面的に押し出してきたりはしません。
そういう熱い気持ちは内に秘め、
プロのロードレーサーとしての役割を飄々とこなしていくという感じです。
しかし、ふとした瞬間にその激情を垣間見えるシーンがあって、
これがなんとも心地よいです。完全に大人向けですね。
故に本作の方が、
ロードレースのリアリティを相当シビアに落とし込んでいると予想できます。
しかし、ここで一つ断っておきたいのは、
どちらが優れているとかそういう話ではないと私は思っています。
ターゲットとしている層が違う訳ですから、
そのような比較はあまり意味がないでしょう。
どちらが好みかという話なら全然ありですけどね。
私は『弱虫ペダル』と本作の両作ともとても楽しんで視聴できました。
主人公のペペ・ベネンヘリの声優は大泉洋です。
大泉洋は強烈なキャラクター性を持ち、べしゃりも立ちますが、
声が非常に魅力的です。
気っ風のよい味があるとでも表現すればいいのでしょうか。
例えるなら、渋いルパンのような演技で本作を彩っていたと思います。
以前から作品名やその評判は耳にしてはいましたが、
いざ視聴してみて、その出来にちょっと吃驚しました。
最近感じるのは、
どの層をターゲットにしているのかにかかわらず、
顔芸だったり、
分かりやすい豹変っぷりというようなインパクト重視の作品が増えたなと。
つまり、もの凄く自己主張が強く、語りたがりなんですよね。
もちろん、読者ないし視聴者の予想を裏切る意外性というのは、
とても重要なファクターではありますが、
どの作品もこれ見よがしにそれを主張されると、
なんだか画一的で面白味を感じませんし、若干辟易とします。
本作のように、敢えて必要最低限のことしか提示せず、
後は背中で語るというような作品がもっと出てきてほしいのですが、
それを成立させる為には高い作家性と先鋭的なセンスが求められます。
そんな作品は稀有なんですよ、稀有!