シャベール大佐 さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
リーダーに人間的な魅力があるスポーツアニメ
箱根駅伝を題材にしたスポーツアニメ。三浦しをんの小説が原作で全23話。
物語は、大学のオンボロ学生寮で暮らす4年生・清瀬灰二(ハイジ)が、寮の住人たちを強引に巻き込んで箱根駅伝を目指していく、みたいな流れ。とある理由で陸上競技から距離を置いていた天才ランナー・蔵原走(カケル)というキャラはいるものの、メンバーの大半が陸上競技は素人で、人数も出場ギリギリの10人だけというメンツで箱根に挑むという設定は、いくらフィクション作品とはいえ、あまりにも無理があるなあ、というのが正直な第一印象。正統派のスポーツアニメとして期待しても大丈夫なのか半信半疑という感じで序盤を観ていたのですが、人物の掘り下げ描写が丁寧で、最初はあまり魅力的にも見えなかったメンバーたちも、物語が進むに連れてどんどん立体感を増していきます。作品が中盤に差し掛かるころには毎週の放送が楽しみになっていました。特に良かったのは、ハイジのキャラクター。EDのクレジットを見ると、カケルが主人公という位置づけだったようですが、実際に観た印象としては、この物語の中心はあきらかにハイジで、いつも穏やかで飄々としているけれど、夢に向かって突き進む信念、無謀とも思える目標に他人を引っ張っていくリーダーシップ、苦難にも挫けない強い心などを持った人間として描かれていて、非常に魅力的でした。また、その他のメンバーたちもそれぞれ人間臭くて、キャラの描写は全体的にとても上手だったと思います。
ただ、やや不満だったのは、作品終盤の展開にトラブルや試練を過剰に詰め込みすぎたこと。現実の箱根駅伝の報道などでもありがちなことですが、ちょっとドラマを作りすぎ、求めすぎという感じがしました。アニメ作品としては中盤までの丁寧な人物描写の積み重ねによって、十分に感動の下準備はできていたわけで、最後はスポーツ競技それ自体の本来の魅力を、もう少し信用して物語を作っても良かったような気がしました。
作画は綺麗。音楽は、前後半ともED曲が作品の雰囲気と合っていて良かったです。
最後まで観終わって、スポーツアニメとして求められる熱くて爽やかな内容に、きちんと仕上がっていました。このジャンルが好きな人なら観てみても損はない、高品質な作品だったように思います。