ピピン林檎 さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
リアル《N・H・Kの陰謀》企画←なぜそこまでゴリ推ししたの?
しばらく前にレビューした『獣の奏者エリン』と同じく、児童文学作家・上橋菜穂子氏のファンタジー小説が原作となっているアニメ、ということで気になって視聴してみました。
なお、本作『精霊の守り人』は、天下のNHKで、西暦2006年~2018年の13年間に、①ラジオ番組、②アニメ、③実写TVドラマと、ご丁寧に3媒体そろい踏みで放送作品が制作されたそうで、凄い力の入れようですね(※私は全然知りませんでしたけど)。
(1) 2006年8月から、NHK-FM「青春アドベンチャー」枠で、『精霊の守り人』(ラジオドラマ)を放送(全10話)
(2) 2007年4月から9月にかけて、NHK-BS2の衛星アニメ劇場枠で、『精霊の守り人』(アニメ)を放送(全26話)
(3) 2016年3月からシーズン毎の中断を挟みながら2018年1月まで、NHK総合テレビジョンの土曜日21時の連続ドラマ枠で、大河ファンタジー 『精霊の守り人』(3部作)を放送(全22話)
とくに、最後のTVドラマの方は、ヒロイン(バルサ)役に綾瀬はるかを起用して鳴り物入りで放送が始まったそうで、第1回と第2回は視聴率が10%を超えたそうですが、その後は低迷して、トータルで見ると視聴率的には"爆死"だったようです(私は一度も見てないので何ともいえませんが)。
・・・って我が家からも毎月徴収している視聴料から、その数千万分の一?くらいの制作費が出ているはずなのですが、本作って、そこまでして視聴者にゴリ推しする必要があったのか?N・H・K!(※この機会に、視聴料支払い拒否を本気で検討しようかな?)
◆総評
いかにも“大作”“名作”然とした堂々たる作り込みで、一話一話の脚本良し・作画良し・キャラ良し(※ただし音楽はやや微妙)なのですが、全体を見終わっての率直な感想・・・
{netabare}男が卵を孕んで、周囲を巻き込んで散々辛苦を重ね、遂に無事産卵を迎えたら、コウノトリ?が飛来して、卵を大事そうに抱えて飛び去っていきました{/netabare}・・・って、いったい誰得?
これは、もしかしたら出産の苦労を男どもも分かち合え!と主張するフェミニストの先生方が歓喜雀躍する作品だったんでしょうか?
・・・というのは冗談ですが(※半分本気)、どうも本作については、
大山鳴動して{netabare}卵一個{/netabare}
という印象が拭えません。
私はもう少し、「皇子たるもの/将来の皇帝たるものの“器”とは何か」みたいなことを、第二皇子チャグム少年(※主人公)の成長と、彼の用心棒兼親代わりの保護者バルサ(※メインヒロイン)を始めとする周囲の人たちとの交流を通じて、ジワジワと心に染み入るように描き出していく作品なのか?と少しばかり期待を持って視聴していたのですが・・・
そういう点では、やはり以前視聴した同じ東洋風ファンタジー作品、『十二国記』(小野不由美氏原作、2002-3年、NHK製作/放送、全45話)と、視聴中の期待と視聴後のガッカリ感が、割とよく似ているかも知れません。
こういっては何ですが、やはり女性ファンタジー作家の書く作品に、『銀河英雄伝説』を書いた田中芳樹氏のような見応えのある歴史感覚/政治感覚の描出を期待してもムダということでしょうか?
(※『ローマ人の物語』を書いた塩野七生氏あたりの作品をアニメ化すれば話は別かも知れませんが←こっちはファンタジーではなく歴史論評ものですしね。)
本作の個人評点については悩みましたが、『十二国記』(※個人評点 × 3.2)よりは作画がずっとよく、計45話もあってダラダラした展開の多かった同作に比べて、計26話(2クール)とそこまで長くないこと、一話一話の脚本も割とよく工夫されていて飽きが来ることが少なかったこと等を考慮して、私個人の平均点としている 3.5 よりやや上の ☆ 3.7 としました(※『獣の奏者エリン』☆ 3.8 より一段階下)。
◆視聴メモ
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・第1話視聴終了時点
シナリオ自体は動きが早くて興味を惹かれるものの、君主の呼称が「ミカド」ととされている点に軽率さを感じるのと、「チャグム」という皇子の名前が有名韓流ドラマのヒロインの名前「チャングム」を連想させる点が少々引っかかる。
あと、女真文字か契丹文字みたいなのが出てくる点は結構面白いと思った(※10~12世紀(五代十国~北宋・南宋期)の東アジア風世界)。
・第4話視聴終了時点
人外生物も出る話と判明。
・第5話視聴終了時点
ユンガロ・チャガ(精霊の守り人)とは「精霊の卵を産み付けられた人」という意味と判明。
・第25話視聴終了時点
男が卵を無事産んで誰得?
コウノトリ?が飛来して男の産んだ卵を投げ与えるという展開は流石にトンデモ感を否めない。
あと、コウノトリ?が飛び去っていくシーンのBGMが微妙・・・。{/netabare}
◆制作情報
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原作小説 上橋菜穂子(『精霊の守り人』1996年7月)
監督 神山健治
脚本 神山健治、菅正太郎、櫻井圭記、岡田俊平、檜垣亮
キャラクターデザイン 麻生我等
音楽 川井憲次
アニメーション制作 Production I.G{/netabare}
◆各話タイトル&評価
★が多いほど個人的に高評価した回(最高で星3つ)
☆は並みの出来と感じた回
×は脚本に余り納得できなかった疑問回
==================== 精霊の守り人 (2007年4-9月) ==================
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第1話 女用心棒バルサ ★ 2年ぶりの新ヨゴ皇国入り、第二皇子チャグム救助、二ノ妃のバルサ召喚・依願、皇子の憑き物、バルサ用心棒承諾(自らに課した8人目の救済)、ニノ宮炎上
第2話 逃げるもの 追うもの ☆ 二人の逃亡先(トーヤ&サヤの川船)、聖導師ガカイの星読博士シュガへの忠告(星の宮の闇)・追っ手派遣(水妖成敗)、狩人来襲
第3話 死闘 ★ バルサvs.狩人(帝(ミカド)直属隠密衆)、ジンのチャグム刺殺失敗、バルサ重傷、チャグム単身逃亡・タンダへの依願、バルサの救助者
第4話 トロガイの文 ☆ 呪術師トロガイの気付き、シュガの帝拝謁、第一皇子サグムの憂慮、碑文解読の任(シュガ)、トロガイ師のチャグム接触
第5話 秘策、青い手 ☆ チャグム胎内の卵、現世(サグ)と異世界(ナユグ)、ユンガロ・チャガ(精霊の守り人)、山狩り前夜、バルサの秘策(人買い)
第6話 青霧に死す ★ チャグム断髪、フェイク逃亡劇(バルサと狩人の読み合い、青霧山中の追撃)、チャグム皇子の葬列
第7話 チャグムの決意 ☆ チャグム市井の生活開始
第8話 刀鍛冶 ★ 短槍直し、鍛冶屋の来客者(狩人)、ヨゴ刀鍛冶の例え話と狩人棟梁の返し言葉
第9話 渇きのシュガ ☆ 乾の相と水妖の呪い祓い、シュガとガカイの言い争い、サグム皇太子のチャグムの遺品集め、一年以内の旱魃への危惧(シュガ)
第10話 土と英雄 ★ チャグムの社会勉強、イカサマ賭け事師との対決
第11話 花酒をタンダに ☆ サヤの縁談と魂抜け、タンダの魂戻しの呪術、サグとナユグの行き来(タンダ)
第12話 夏至祭 ★ 市井の生活3年経過、ロタ人父子との土俵勝負(バルサ&チャグム)
第13話 人でなく虎でなく ★ 用心棒カルボからの果たし状、バルサの誓い、斬られなかったカルボ
第14話 結び目 ☆ シュガのナナイ碑文読解進行、トロガイ師の探索進行(卵喰いの脅威、サグとナユグの“結び目”)、建国聖史(皇国ヨゴの起源伝承)の嘘
第15話 夭折 ★ 卵の孵る日(春分)と卵喰いの脅威、チャグムの存在確信(シュガ)、皇太子サグム病没
第16話 ただひたすらに ☆ シュガの打ち明け、チャグム捜索開始(狩人に目をつけられたトーヤ)
第17話 水車燃ゆ ★ シュガのチャグム皇子発見、バルサの皇子引き渡し拒否、水車小屋炎上(トーヤの機転)
第18話 いにしえの村 ☆ トウミ村への行路(村娘ニムカの案内)、ヤクーの里到着、ニュンガロチャガ(精霊の守り人)の伝承、チャグム動揺
第19話 逃亡 ☆ ニムカのチャグム逃亡幇助、バルサの怒り・引き留め、狩人侵攻、トウミ村村長の協力拒否
第20話 狩穴へ ☆ トロガイ師とシュガの対談、村人の見送り、狩穴の冬籠り
第21話 ジグロ・ムサ ★ バルサの自分語り(貧国カンバル、陰謀に巻き込まれた実父、養父ジグロvs.王の槍)
第22話 目覚めの季(とき) ☆ 続き(八人の魂の供養、ジグロ病死)、チャグム槍修行始め、異世界(ナユグ)を垣間見たチャグム、碑文解読進行
第23話 シグ・サルアを追って ★ チャグム等青い池へ、シャガ軍到着、卵喰いラルンガ来襲、碑文の早馬
第24話 最後の希望 ☆ 宴の地の間違い、ナユグへ(チャグム)、タンダの機転、ラルンガ一体撃破
第25話 宴 ☆ ナユグヘ(バルサ他)、ラルンガとの死闘、夜明け、卵産み、ナージ(コウノトリ?)飛来、託された卵
第26話 旅立ち ☆ チャグム王宮帰還・二ノ妃との再会、帝の訓戒、褒賞式典、チャグムとバルサの別れ、バルサの一人旅再開{/netabare}
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★★★(神回)0、★★(優秀回)0、★(良回)11、☆(並回)15、×(疑問回)0 ※個人評価 ☆ 3.7
OP 「SHINE」
ED 「愛しい人へ」
挿入歌 「ナージの唄」