rie-ru.2 さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.5
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
春にして君に出会い
この作品の特色は何といってもその季節感だと思う。
曇りがちな空、雪降る街、人気のないバスの中…
そしてそこで織りなされるのは、高校3年最後の、固くこわばった恋愛模様。
{netabare}
●一目惚れやら憧れやら
ヒロインである美緒は昔から片思いをしていた。
その相手は主人公、瑛太の友人である。
…これだけでドロドロとしそうな感じを受けるけれど、実はそうではない。
美緒の片思いは、一目惚れであり憧れであった。
落とした消しゴムを拾ってもらい、庇ってもらっただけの些細な初恋。
だから彼女はライバルが現れても、ずっと返せなかった消しゴムを返しただけで満ち足りてしまった。
そして「実らず、実らせようともせず、それで満足だった初恋」へ別れを告げるのだ。
そうして幼い夢が潰えた時、美緒はライバルに全てを打ち明ける。
「好きだったけど、でも今はもういいの」と。爽やかな顔で。
なぜ?
瑛太への好意が、初恋の影に隠れていたものが灯をともしたからだ。
静かに消え、静かに始まる冬のような恋が。
●好きと好かれる
その瑛太は、一貫して美緒にずっと恋心を抱いていた人間だ。
転校して再び地元に帰って来てもそれは続いていた。
だがそんな彼を好きになる後輩、恵那が現れる。
それでも瑛太は一途さを崩さない…けれど。
恵那がいたずらで、瑛太の携帯の壁紙を恵那の写真に変えるシーン、そして後にそれを美緒に見られる場面。
「なぜ壁紙を元に戻さなかったのか」と、恵那のようになじることは簡単だ。
けれどそこには、確かに「人から好かれることへの喜び」があった。
そこに男女の違いは無いと思う。
だから私は彼を責められないし、むしろ人間らしいと感じる。
誰かを好きであることと、他人から好かれることの幸福は決して簡単に切り離せはしないのだ。
●冬ではなく春に
結論から言えば、瑛太と美緒は結ばれる。
しかし不自然なところがある。
卒業式の日、瑛太は美緒から呼び出しを受けるがすれ違いで会うことが出来なかった。
そしてそのまま大学入学まで美緒と連絡が取れなかった。
携帯があるのに、なぜ二人は会うことが出来なかったのだろう?
呼び出しは明らかに告白の類だったのに、一か月も会わないのはおかしい。
そこで思い出す。ああ、『この作品は何よりも季節感を描いていたではないか』と。
本作において『恋愛は冬でなく春にこそ成就すべきもの』なのだ。
その感性の為なら、些細なリアリティなど捨ててもいいと作られたのが本作なのだ。
事実、ラストで再会した二人と春の並木道だけが映る画は、とても美しかった。
{/netabare}
Just Because!という作品は、長い冬を描くことで、あたたかい春の始まりをも描く作品だったのだ。
作画崩れやらも少しあったけれど、
この雰囲気と感情の変遷は本作を特別なものにしたのではないだろうか。
…なんて、ちょい長文で考えてみたのでした。
(ちなみに、瑛太についてはとあるサイトの方のレビューがとても参考になりました)