デリダ さんの感想・評価
1.5
物語 : 1.0
作画 : 3.0
声優 : 1.5
音楽 : 1.0
キャラ : 1.0
状態:観終わった
宝石の国の監督とは思えない技術の低さ
ポリティカルフィクション×異世界ファンタジーの作品かと思ってみましたが、
作画が安定しているにも関わらずよくこんなつまらないものができたと逆に感心しました。
異世界ものの最底辺といっても過言ではないのでは、、、
ハーレムものやギャグものとして見ても薄ら寒くて笑えません、、、少なくともアニメ化するに至って、限りある枠で何を目的として製作されたのかわからないです。ギャグ?ハーレム?アクション?全ての評価軸で魅力が感じられない。
私個人としては宝石の国をとても評価しているだけに、監督の力量を疑うほどのものになってしまったのは一体どうしてなのか残念です。
監督 京極尚彦、シリーズ構成 浦畑達彦、チーフ演出 安藤良どう考えたってミスらない安定メンバーでこの狂気が製作されてしまったのか、、、
原作は未読なのでわかりませんが、あらゆるドラマツルギーとなり得る要素をカットしてテンプレートの感動的な演出と爽快な一方的暴力が描かれる。BGMの使い方も完全におかしい。
特に最初の帝国側が薔薇騎士団を偵察任務につかせて、出陣する時ののほほんとしたBGMには違和感を強く感じました。自国の兵士の半分以上をたった3日程度で壊滅した相手の偵察にそんなお散歩気分で偵察に行けますか?ましてや中世程度の文明レベルで6万で半分以上の職業兵士を養えるとしたら、相当の強国であるだろうし、それなら当然戦争の経験値も政治的手腕も優れていて然るべきなのですが、終始無知で馬鹿な異世界人として扱われるのは気分のいいものではありません。完全に人種差別の構造じゃないですか。
自衛隊というのだから近代組織の集団としての力や現憲法解釈、官僚機構の限界等色々なメッセージ性を持つポテンシャルを持ちながらなぜそれを全てかなぐり捨てるのか。というかこんなモチーフで政治性と無関係でいられるなんてあるわけないじゃないですか。
まず最初、あからさまに外見が同じ人間を何ら命令なしに主人公は殺すが、これは完全にアウトだろう。本当に近代国家の兵士なのか?
異世界派遣後の12万人もの虐殺、いくら帝国側が攻めてきたからといって途中交渉もなしにこれほどの殺戮を続けて何も感じない自衛隊員。
日本本土で6万、異世界でだいたい6万、12万の大虐殺は世界史のどの時代だろうと絶対に消えない大虐殺であり大事件ですよ?
ちなみに帝国時代の日本軍のシンガポール華僑粛清事件ではおおよそ5千人が犠牲になりました。この過去は恐らく100年後も決して消えない事件でしょう。
死者数の比較は、命を量化してしまうのであまり良くないですが、12万は幾ら何でもやばいですよ。何でそんな惨状になる前に降伏なりさせることが出来なかったのか、常識的に考えて指揮官の無能さは戦犯級です。
国家予算等の話が出てこないのもあまりにもお粗末。軍、自衛隊は国家に所属しているのだから国家の財政が破綻してしまえば弾一発撃つことすらできないのにも関わらず湯水のように使われ続ける兵器。
しかもその後異文化調査で領民と平穏な接触を計るって、普通無理でしょ!いくら社会が中世と同等の段階で騎士と農民が離れているからといっても、突然現れて見知らぬ格好をした謎の集団が同じ国の人間12万も帝国の宗教上の聖地で虐殺しといて友好的に出会えるわけないでしょ?大丈夫?倫理観壊れてない?
命令無視の兵士は組織の規律上どうしても罰しなければならないが、軍事裁判などは見当たらず、兵士と道徳心との葛藤すら全く伺えない、人間性の薄さ、、、
何れにせよリアリティが欠け過ぎていることは間違いないです。そしてそれを隠せるほど優秀な演出や爽快感も皆無。演出上のお粗末なところが多過ぎてストーリーに引き込まれさえしない。
こうしたものを「政治関係なしに」評価してしまう人は一度よく考えた方がいい。
フィクションだからと瞬間的な快楽ばかりを優先した表現ばかりがこの先増えていくことにいい加減歯止めをかけなければ行けないと感じます。
このような杜撰なシナリオ、演出に過剰な広告費と制作費が注ぎ込まれてゆくのは単純に不愉快です。もっと評価されるべき作品がほかにあるのに。
ファシズムとオタクの親和性の高さは近年サブカルチャー批評でもよく言われています。
いわゆるアニメを見るオタクはもはやマイノリティではなく、ただマイノリティだという思い込みだけは消えず、マジョリティになるための何らかの記号(たとえばナショナリズムなど)や、あるいはマジョリティよりもオタク自身が優れているという証明(オタク気質な人間が最強だったり、オタク的知識の有用性など)が必要なのだが、それが無意識的なプロパガンダの生産に繋がっているわけで、決してナショナリズムや右翼を批判しているわけではないが、これを評価しているファン層が小学生や中学生ならいざ知らず高校生やそれ以上の年齢層だとしたら悲しいですね。
ファッション愛国心と自己肯定感、帰属意識、合理性への渇望等を埋める手立てとしてこのような薄っぺらい作品が評価されるのだとしたら世も末ですね、、、クールジャパンはサブカルチャーとしてのレベルを下げることは間違いない。