たわし(爆豪) さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
ディック特有の「夢か現か」ドラッグ中毒ムービー
原作はフィリップ・K・ディックによる『暗闇のスキャナー』(A Scanner Darkly、原題は同じ)。リチャード・リンクレイター監督(6才のボクが、大人になるまで。)、キアヌ・リーブス主演。
ディックのSF作品には共通点が多くある。
現実と虚構が混ざり、境目が曖昧になる感覚。
貧乏で暗く陰鬱な主人公。
自分以外の人間が信用に足りうる人間性を持ち合わせていないこと。
などが挙げられる。。
フィリップKディックは生前は相当金に苦労していたらしく、いつも金欠で、小説もたいして売れなく(生前は映画化企画さえたたなかった)借金まみれの生活で遂に栄養失調などの合併症(直接の原因は脳梗塞)で53歳という若さでこの世を去ってしまう。
才能ある芸術家というものは本当に短命で、後に評価されても本人には何の利益もないのである。
そんなディックの最底辺の生活が、薬物乱用や偏執病・統合失調症などと相まって、こういった終始曖昧で敵味方が入り混じり混沌とした未来像に反映されたのである。
押井守や今敏、タルコフスキー、リドリースコット、クリストファーノーランなどなどの数多くの映像作家に影響を与えたディックの作品にはこのスキャナーダークリーでも反映されており、
実写をあえてアニメにしているのは、麻薬中毒患者から見た世界の姿であるからで、それはこの間話した「コングレス未来学会議」でも挙げられる。
そもそもが正義や悪など「相対的」なものに過ぎなく、日々変わり続けている社会の様子を。。悲観的に「ポストモダニズム文学」の一旦として描くのである。