じん さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
時代の捉え方こそがまさに芸術、爆発だ!
このアニメはテレビシリーズものの劇場版作品の中では飛び抜けて評価が高い。外のどのレギュラー作品も寄せ付けない良さがこの作品にはあるということ(個人的にはドラえもんのおばあちゃんの思い出もある)だ。何度見ても私を泣かせてくれるその才能はどこから来たのか。レビューしていこう。
ストーリー。所々に内輪ネタのようなものを挟みながらも興味をそそる展開になっている。重要な部分の因果関係は明らかにしつつも、回想部分や現実と区別のつかない部分には少々大人向けのスパイスを効かせた考察の遊びを残してある。これがやはり名作といえる由縁であろう。子供向けでありながらも、その手を引いて劇場に行くのは紛れもない大人だからだ。感覚を大事にして欲しいと考えるためここでは細かい部分にはあえて触れないでおく。
作画については、コンテが上手すぎる。子供向け映画だとしても観客の目線の誘導が上手い。コアなファン向け映画には遠く及ばないものだとしても、登場人物の感情に根拠を持たせるべく計算されたその目線の構図は映画という小箱劇場内で見事に論理を展開していた。注目すべきはバスでの逃亡劇。
キャラクターデザインはテレビ版と比べてこれといった変化はなし。セル画時代なので地道な作業が多く、スタッフも同じであることを希望したのだろう。
音楽は秀逸だ。管楽器を使い分けるやり方が非常に妙である。ひろしの回想、階段を上るシーンにはどうか耳もよく使って欲しい。
声優の演技は上手いが、テレビ版に求められているものと同じであり、あくまで突出したものはない。ただ、ひろしの泣き声はその上手さから私含め視聴者のものであるに違いないと思っている。
時代は変わった。私たちは子供の世代に向けて何を残していけば良いのか。確実な経済の成長の確信が自分の成長と重なり嬉しかったあの時代に閉じ籠ったままで良いのか。働く大人たち(現在にはそれよりも少し上)が直面する課題にも通じるこの映画は決して子供向きで片付くようなものではない。最近レビューした妄想代理人の言葉を借りれば、その居場所がないという確信こそが俺の居場所なんだ!ということである。時代の捉え方は様々だが、決して良かったなあの一辺倒で成長を止めてしまうようでは子供に対して顔向けが出来ないというものだ。その時代も捉え直しながら、現在を考えていく、それが今に求められる芸術なのだろう。平成だってあと少しで終了する。大事なのは私たちが現在と未来に自ら干渉して行くことなのだ。