Progress さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:今観てる
賭ケグルイ×× レビュー
今回レビューするのは、「賭ケグルイ×× 」。
コメディを描いて滑らかに、エロスを描き妖艶に、人物のプライドを描き気高さを表現し、それらが混ざり合い、すべてはギャンブルの最高の高揚感に繋がる作品です。
そんなこの作品の高揚感の秘密を少しでも紐解いていきましょう。
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Introduction(公式サイトより引用
良家の子女が集う名門、私立百花王学園。
ギャンブルで支配されたこの学園の頂点に君臨するのは、
弱者の人生を支配し、政財界にすら影響力を持つ絶対的な支配者、生徒会だった。
しかし、生徒会長の桃喰綺羅莉は突然、生徒会の解散・総選挙を宣言する。
選挙のルールは一人一票。全生徒に学園の頂点を目指すチャンスが与えられる。
カオスと悦楽を求める綺羅莉の思惑による選挙戦。
さらに、その機に乗じ、新たな脅威が訪れる。
百喰一族――綺羅莉と夢子に連なる者たちが。
蛇喰夢子と友情を深めてきた鈴井涼太、早乙女芽亜里、皇 伊月の4名は、
この仕組まれた総選挙の中、自らの信念をかけた闘いを迫られる。
弱肉強食の学園で「餌」となるか、他を喰らい生態系の「長」となるか。
ギリギリの選択が心を揺さぶる「究極の選挙バトルロイヤル」がいま始まる!
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コメディとエロスとプライドが混ざり合う、ギャンブルバトル
まず、ここでいうコメディとは、紛れもなく「顔芸」「演技」のことです。
夢子もそうですが、登場人物は凄みを増したときや、苦痛や、快感を得た時に、とんでもない顔をしてしまう。
それはもちろん、視聴者を笑わせにきています。綺麗な顔立ちがぐしゃぐしゃに、しかも邪悪な顔になるのは気持ち悪さも有りますが、それを超えてコメディになるように調整された絵が素晴らしい。
「顔芸」については、人間の感情、追い詰められた人間の尋常ではない緊張感と挫折感の混じった顔や、様々な欲の感情が表に出るときが多く、人間の中に確かにある嫌な感情を面白おかしく見ることが出来ます。その顔芸が空虚にならない声優さんたちの迫真の演技も、聞き逃せないポイントですね。
次にエロス。まあエロスと言っても、そんなに扇情的なシーンはないのですが、夢子に関しては、感情の昂ぶりがあった時、身もだえをするようなワンクッションが描かれ、如何に彼女が高ぶっているかのバロメータとして、エロスを利用していますね。
他にもギャンブルの盛り上がりに比例してとんでもない隠語を連発するようなキャラがいたりと、如何に場が盛り上がっているか、それをエロスによって表現しています。まあ、隠語連発はコメディなので、だからギャンブルのシーンでは様々な感情が混ざってしまうのですけどね。
そしてプライド。積み上げてきた実績から生じる自信や、将来の夢のために賭ける勇ましさ、そのような精神的な支えをベットすることで、登場人物も、視聴者も、精神的昂ぶりを得ることが出来ています。
その精神的プライドを表現するのは、鬼気迫った覚悟や、気高さ、ハイリスクを省みない勇気の感情であり、それを演出した引きの強さや物語の過程などが組み合わさっている面白さが興味を尽きさせません。
精神的なコインを賭けること。その意味を懇切丁寧にテンション上がって説明してくれる夢子がいると、その場はコメディ空間に包まれますが、すべてのサブキャラクターが精神的ベットを見せることによって、精神的ベットをするまでの感情の揺れ動きに意味を持たせることが出来ていることが素晴らしいと感じます。
プライドという観点で言えば、プライドのベットを客観的に語ってしまう夢子は、積み上げたものに対するセーフティが弱いので、夢子がプライドをかけることがベットとして安く見えるため、サブキャラクターがプライドをベットすると言う作品構造が見えてきますね。際限なく賭けてしまう夢子が破滅的に見えるのも物語の結末と作品構造が密接に関わっているからかもしれません。
そのプライドさえも、敗北によって破壊され、顔芸を晒し、コメディ空間、あるいは清清しいほどの敗北者という形で、視聴者に笑いか充足感のような感情を与えてくれるのでしょうね。
さて、いかがでしょうか、「賭ケグルイ×× 」。前作よりも作品導入説明がなくなり、スタイリッシュになった印象を私は受けますね。
会長は学園を会長が作ったアクアリウムと言って、調和した世界に、夢子のような破滅的存在が現われ魚達の精神的テリトリーが壊されることを楽しんでいるようですが、その辺の会長の心理も興味の沸くところです。
夢子はかなり感情的では有りますが、登場人物のほぼ全てが、冷静にギャンブルの内容を理解し、イカサマを見抜き、相手を出し抜こうとするギャンブル作品として成立しつつも、感情によって決断をする、その時の自身のプライドをかける気高さや、決断できなかった人間の弱さを描く、非日常的な感情の昂ぶりを描いた作品になっていると思います。