プクミン さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
凄く良い物語でした
最後まで見終わり、このアニメを一言で言い表すなら「重い」。
物理的な面はアニメなので現実的にあり得ませんが、心理的な面は現実にもあり得ます。
そこが上手く描かれた作品でした。
ちなみに、主人公が凄く良い人過ぎます。
{netabare}
主人公は『思春期症候群』と呼ばれるトラブルに巻き込まれ、物語が進みます。
と言ってもアニメなので、どういうものかと言うと、
・周りがヒロインAを認識出来ず姿が見えない(声も届かない)。更にはその人の存在まで認識出来なくなる。
・ヒロインBが原因で同じ日をループする。主人公と原因となっているヒロインBだけが、ループを認識出来る。
・ヒロインCが二人になる。人格は同じで姿形も同じ。別行動をしている。
・ヒロインDがヒロインAと中身だけが入れ替わる(外見が入れ替わると言ってもいい)。
・ヒロインEが過去にいじめに遭い、記憶を失うと同時に人格が変わる。何もしてないのに傷やあざが出る。
{/netabare}
上記(ネタバレ)のような事は非現実的ではありますが、これらが起こる原因、つまり状況は普通に現実世界でも起こり得る事です。
作中に出て来るキャラクター達は、とても精神力が強いと思いました。
人が持つ心の強さと弱さ。
そして弱さを受け入れる強さが良く描かれており、似た状況に陥った事のある人には、胸に刺さる部分も多いかと思います。
本作品に惹かれた理由は、生きているのに『死』がとても近いところにあるからだと考えました。
{netabare}
作中でも、ヒロイン達が良く主人公に対して『目が死んでる』と言ってます。
ここで、ヒロイン一人一人の『死』について。
・桜島麻衣:みんなから認識されていない、存在も忘れられるというのは、存在自体が『死』に直結します。
・古賀朋絵:何度も同じ時間を繰り返す事で、主人公と本人だけの世界になっている。未来が無いという時点で『生』が無いと考えました。
・双葉理央:対を成す人格形成により二人に分離。当然どちらか一方が消える為、消える方は『死』となる。
・豊浜のどか:親から常に姉のようにと求められ、実際姉と外見が入れ替わるが、それによりアイデンティティが更に失われた。心理的な『死』。
・梓川かえで:主人公の妹であるが、いじめが発端で現れた新しい人格。2年という歳月が経過し、本来の人格が戻って来るのを自覚し、この2年間生きて来た人格(自分)が消滅する事も自覚。まさに『死』。
最後に主人公ですが、2年前妹が記憶を失い人格も変わり、まるで別人。家族もバラバラ。更に妹への虐めの影響は主人公にも及び謎の怪我を負う。しかも周囲に理解されず、主人公は一瞬にして全てが破壊されたような状況。それでも変わり果てた妹を受け入れ、1からやり直そうとしたのだから、周りに気を遣う余裕が無くなったり達観したりするのも無理はないと思いました。
目が死んでるというのも、自分の気持ちを押し殺していたからだと推測します。
{/netabare}
あくまでも個人的な見解です。
さて、この作品では主人公が科学部のヒロインに相談をしますが、その都度ヒロインは丁寧に科学的な観点から、物理法則や量子論を用いて考察し説明します。
ただこれは答えでは無く、原因となっているのが一体何なのか?というものであり、視聴者に対する説明そのものと考えています。
そしてその原因を知った主人公が、どのように行動し、その結果どうなったか、その心理的な側面こそがメインテーマだと思っています。
もちろんアニメの楽しみ方は人それぞれなので、この考え方に同意出来ない方も多いと思いますが、自分はこの作品のそういった部分に強く心を打たれました。