あんと萬 さんの感想・評価
2.6
物語 : 2.0
作画 : 1.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 2.5
状態:観終わった
隙を生じぬ二段構え。クソの多重構造。そして伝説へ。
はい。みなさんの言っている通り
作画の暴力です。
※このアニメには一部暴力的描写があります。ではなく、作画『が』暴力の塊そのものです。ここまでパワーの感じる作画崩壊アニメは初めて見ました。
作画崩壊アニメといえばアニメ界ではカテゴリそのものとして存在するくらいですが、徹頭徹尾作画が作画が低品質だったことも考えて、自分が見てきた中でもこのいもいもというアニメは作画崩壊系アニメトップの作品と言っても差し支えありません。
このいもいも以後、アニメ内で作画が崩れることを「いもいもする」という言葉が界隈で生まれたほどです。(使われ続けるかは知りませんが)
制作裏の事情といった意味でも放送当時の2018年秋、その瞬間にアニメの作画の歴史が動いたかもしれません。このアニメは絶対に伝説になり続けます。断言します。
作画崩壊アニメを探している方、愛してやまない方、摂取しないと死んでしまう方。このアニメは今後必修アニメになるでしょう。必ず見てください。そして恐れおののきましょう。
と、作画方面の話は十分したわけですが
レビューで作画にだけ触れている方も多いので、視点を変えてストーリーの評価を考えてみたいと思います。
ここで僕が言いたいのは、「このアニメ、もし仮に作画がずっとティザービジュアルのままだったらどのくらい面白かったんだろうか?」ってことです。みなさんはそれについて考えてみましたか?
考えてみると、答えはNO。もしくは自信をもってYESとは答えられません。
作画崩壊の粗に隠れていますが、実は原作の時点からこの作品はストーリーもあまり褒められた出来ではありません。
というのもキャラクターの魅力の見せ方に原因があります。
一般的なエンタメアニメのやり方でいえば、登場するキャラクターは作者が様々なアイディアを駆使して属性やドラマを肉付けしていき、極端に言えば画面の中で喋っているだけで魅力的なキャラクターを作ることが理想とされます。
過去にヒットした人気のラノベアニメもそういうキャラクターたちによって成り立っていたはずです。
しかしこの『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない』、早い話が立っているだけで魅力を感じるようなキャラクターが一人もいません。
安易なキャラ設定や性格が設けられ、それぞれのキャラにエピソードがあってもふとした発言や行動の端々からキャラの背景から繋がる魅力が伝わってこない。
なんというか「ストーリーを進めるための駒」にキャラクターが成り下がってしまってるという表現が一番ぴったり来ます。
どうしてこのキャラはここにいるんだろう…?そういった疑問があってもそれを納得させるだけの見せ方がアニメ全体を通してなされていません。
海に行けば全員ついてくるし。遊園地にデートに行けば全員ついてくるし。ひとりのヒロインが主人公の家に泊まりに来れば全員ついてくるし。
果ては主人公が編集部で揉めれば全員ついてきます。…これはアリかな。
それでも辛うじてキャラクター達に印象的な特徴を感じていられるのは、原作のキャラクターデザインとイラストを担当したぎん太郎先生の手腕と言う他ありません。
作画が悪ければ話が頭に入ってこない。しかし作画が少しでもまともになると、今度は話の粗が一気に流れ込んでくる。まさしく誰も予想しえなかった負の二重構造といえます。
作画崩壊のおかげで十二分に笑っていられるいもいもですが、本編のストーリーは一切笑えません。厳しい目線でごめんなさい。
もっというと作画がまともだったら、この作品ははたしてここまで話題にされていたでしょうか。
本当に悪だったのは誰だったのか。僕には分かりません。
もしかすると関わった人々の善悪がそれぞれの善悪によって打ち消され、『ただ漠然とした力』だけが残ったものが、このいもいもというアニメだったのかもしれません。
最後にこのアニメに関わった声優さん、音楽、背景美術のスタッフ、その他諸々の方々はこれ以上ないほど素晴らしい仕事をなされています。
出来ることならばアニメ化が決まれば放映までの期間はもっと十分な時間を設けてあげて、今後同じような悲劇を被る作品が生まれないことを祈るばかりです。