101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
学園・バトル物の沸点を越え全面戦争へと昇華した貴重な完結編
原作ライトノベルは一巻で挫折……。理由は文体が合わなかったこと。
何より“紅世(ぐぜ)の輩(ともがら)"だのトーチ”だの“ミステス”だのといった基本設定に、
私の想像力が追い付かなかったことw
よって私にとってアニメ版『シャナ』は、1期・番外の解説コーナーも含めて、
想像がたくましくない人間でも世界観に引き込んでくれた、
そして本作の3期で完結までやり切ってくれた、大変ありがたい番組でした。
学園やその周辺を舞台にした能力バトル物は大抵、
事件の背景に迫り来る世界の危機をほのめかしながら盛り上げて行きます。
その街ばかりに事件が集中する理由を、例えば“闘争の渦”といった特質から説明し続けていても、
やがては拡大する危機や激化する能力インフレは、狭い街から飛び出し、
本当の世界の危機として具現化するのが筋。
『シャナ』3期では御崎市を飛び出し、世界を舞台に
“フレイムヘイズ”VS“紅世の輩”の全面戦争が展開。
それらを前作よりパワーアップした作画により再現された戦場は圧巻。
膨大な内容をできるだけ盛り込もうとしたスタッフの熱量により、
しばしば本編はEDまで延長。
思えば2010年代、実質18分程度の30分アニメ枠に話が収まらないなら
頻繁にOP、EDの時間まで狩り出してでも……。Cパートに落し穴w
むしろ積極的に枠を崩すことでスケール感を出す。
という演出傾向はトレンドを越えてすっかり定着した感がありますが、
本作の2011年当時は私もまだ慣れてなくて、
本編が延長される度、このアニメ何回EDまではみ出すんだwとツッコんでいましたw
逆に今のアニメに慣れたこの身体で、クライマックスでもいつも通り悠然とEDを流す、
昭和のアニメなんかを見るとソワソワとした感覚をおぼえますw
視聴者も時代の流れには抗い難いようですw
シャナと悠二の関係について意外と、
よく分らない……という感想も耳にする本作。
{netabare}要は……仲間だったはずの二人がどうして世界を股にかけた夫婦喧嘩……、
いやw全面戦争の敵味方に分かれて戦っているのかイマイチ伝わっていない。
ということなのですが、私はこの点も本シリーズは明快に表現していたと思っています。
シャナの背中に、情を捨て、凛として“紅世の輩”を討滅する
“フレイムヘイズ”の生き様、理想的な強さを見た悠二。
冷徹さを求める彼を担ぎ上げようと忍び寄る“仮装舞踏会(バル・マスケ)”
討ち手として非情な戦いを繰り返した過去とは異なる、
悠二との日々を通じて情や愛を知り、変わっていこうとして、恋心すら芽生えたシャナ。
二人が互いの背中に、正反対の物を見て、憧れ、追い掛けてしまっていた。
それ故のすれ違い、対決。そして改めて互いが向き合った末に開かれた新世界への道……。
これほどハッキリと構図が示されている作品なのに、
何故、視聴者とのキャッチボールが成立しない場合があるのだろう?
と当時は結構考え込んだりしていました。
あまり考えたくはありませんが、これも結局、
テーマなど伝わっていなくても、手軽にキャラを消化していれば、
極論言えばS型釘宮病の発作にのたうっているだけでも楽しめてしまうw
テーマとエンタメ部分が分離しがちな、ラノベの宿命なのかな?と嘆いてみたり……。{/netabare}
とは言え、私自身、激戦が続く中、
束の間、ラノベらしいほっこりシーンに癒やされたのも事実。
特に16話の、{netabare}メロンパン(笑)
シャナたちも未だ海外にて敗走&立て直し中だったので、
まさかそこで唐突にジャパニーズフードでカリカリモフモフを喰らうとは思っていませんでしたw
メロンパンもついにグローバル化の波に乗ったのかと私も謎の感慨を覚えましたw{/netabare}
難解な異能力設定ばかりでなく、こういうまったりとしたシーンもある。
やはり本作はラノベアニメとして語り継がねばならないシリーズだと思った一コマでした♪