takarock さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
女の意地
「マリーさん(岡田麿里)の脚本、苦手なんだわ」
これは親しいあにこれ仲間たちに、私が言っていることです。
「何故苦手なのか?」と問われれば、
非常に感情的な作風だからです。
男が思い浮かべている女性像の幻想をぶち壊すというような
リアルな女性の心情を高圧的にこちらにぶつけてきます。
まるで胸ぐらを掴まれて捲し立てられているような、そんな気分です。
イラッとします。
もちろん、それがハマる作品もあるので、一概に否定はできないですし、
それだけなら別に構わないんですけど、
そこにフィーチャーし過ぎて整合性についてはおざなり。
メッセージありきで、物語全体から見ると浮いている。
私がマリー脚本の苦手な点をざっと挙げるとこんなところなんですけど、
本作は素直によかったです。
マリーさんの良さも存分に発揮されていたと思います。
心無い人はこんなことを言うのかもしれません。
「女性は結婚して子供を産めば安泰でいいよね」
おいおい、育児ナメんなよ?
それを描いたのが、押水菜子(なこち)のパートです。
彼女は母親ではないのですが、
兄弟姉妹の年長者なので母親としての役割を無理やり担わされます。
そんななこちに「ちゃんと大人やれてるよ」と号泣する御花。
なこちは、この一言にさぞ救われたと思います。
心無い人はこんなことを言うのかもしれません。
「仕事と育児の両立は無理でしょ」
そりゃ仕事に家事、育児を同時にこなしていくなんて
身体壊れちゃいますよ。
でも、無理だ無理だ言われて、そんなものに屈したくない。
言うなれば、女の意地です。
「喜翆荘」の女将さんである四十万スイ、
地元を離れ東京へ行った娘の松前皐月、
彼女たちは、各々の意地を貫き通して、
仕事に、育児に全力で取り組んできました。
その心は子供である娘にはなかなか伝わるものではないですけど、
いつしか成長して、母親の愛を知ることになる。
これはそんな物語なのかもしれませんね。
本作のテーマを考えた時に、
真っ先に挙がられるのは、「家族」でしょうし、それは正しいと思いますが、
私が思い浮かんだのは、「女の意地」ですかね。
マリーさんの感情的なシナリオと、この作品の相性は非常に良いと思います。
劇場版である本作の出来もすこぶる良かったです。