二足歩行したくない さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
サイバーパンクの革命児
アクの弱いデザインに派手さの無いストーリー展開、ごく普通の小学生の平凡な日常を描いているかのような雰囲気を漂わせている作品ですが、とんでもない、これは実現可能な近未来技術とそれによって起きる歪を舞台にした、立派なサイバーパンク作品でした。
2020年代「電脳メガネ」というウェアラブルデバイスが世界的に普及した近未来を舞台にした作品で、電脳メガネは電話やメールに使用できる他、現実の世界に付与されたデータを見たり操作したりすることができるという設定になっています。
例えば、3Dビジョンの電脳ペットを仮想飼育したり、人体の任意の箇所にデプロイしてその箇所から対象のデータを破壊するビームを射出したりでき、そして当然、メガネを外すとそれらは見えなくなる(=扱えなくなる)わけです。
街には物理的な空間上に電脳空間が広がっていて、電脳空間はメンテナンスされ、バージョンアップが行われているのですが、稀に廃ビルなどで古い空間のままになっている場所があり、そういう場所にはバグが発生しやすくなる。
古い空間やバグを消滅して回る管理ソフト「サッチー」、空間の歪に現れる「メタバグ」、謎のウイルス「イリーガル」、そして、アッチの世界に住み子供を連れてゆくという都市伝説の存在「ミチコさん」など、とにかく設定が技術的にすごく良く練られていて、とても面白く、また興味深い作品でした。
開始時から伏線が大量にばらまかれているのですが、ほぼ全て解消し、解消仕切っていない謎もあるにはありますが、ストーリーの根幹には関係しない箇所のため、物好きの考察の余地があるのもグッドです。
ストーリーの前半は日常劇になっていて、後半から徐々にシリアス展開にシフト、謎が少しずつ明かされるような展開になっています。
一見して子供向けな雰囲気なのですが、蓋を開けてみると結構難解です。
世界観は序盤でうまく説明していて、今は一人一台のスマホがあるのでとっつきやすいところもあると思うのですが、後半は特に、途中途中で少しずつ明かされる秘密を理解しないとおいていかれる可能性があります。
理解が追いつかないまま視聴を続けると、必要性があって行っている結果や行動が超展開に移り、訳がわからない話と誤解しそうになると思います。
個人的には説明不足と感じていないのですが、説明が難しいところがさらっと流されている箇所もあり、解説が必要かもしれないと思いました。
意外とハードSFです。箱庭感がありますが風呂敷は広く、組織や企業や人命を巻き込んだ話となっています。
見た目はこんな感じなので騙されがちですが、SF好きにおすすめの作品。
とはいえ、ビジュアル負けしているという意味では決して無く、本作の雰囲気にはあっていると思います。
逆に言えば、この雰囲気であの内容ができるというのは、ある意味でサイバーパンクの革命児とも言えると感じました。