Keiner さんの感想・評価
3.7
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
なろう系へのアンチテーゼ
異世界ファンタジーは転生チートなしでも面白くできるということを示そうとした意味のある作品だと思う。これ単体では薄味で地味なのは否定できないが、昨今のいわゆる「なろう系」の流行の中である種のアンチテーゼとしての面白みがある。
特別な能力を持たない主人公が経験と知恵を武器にゴブリンを淡々と狩り、一個人や村が救われるというストーリー。
明らかに、チート持ちの勇者が最強魔法で魔王を倒して世界を救うストーリーのアンチテーゼとなっている。作中に実際に勇者を登場させてさらに強調までしている。
戦闘は毎回主人公たちがいろいろと工夫して戦うので見ていて飽きがこない。主人公のある種のプロフェッショナルとしての描かれ方も、最近にはない主人公像でかっこいい。
ショッキングなエログロの演出は、普通雑魚扱いされるゴブリンがいかに恐ろしいものであり、これと戦うことが魔王と戦うことに負けないドラマになることを表現するための仕掛けでしょう。ついでに言うとこの演出だけで結構話題になっていたので、そういう宣伝的効果もあったかも。
作中に固有名詞が登場せず、キャラクターは職業名で言及されるという演出が印象的だった。これも、「特別な存在」による「特別な物語」を否定する演出でしょう。
こういう徹底した演出は、昨今の流行を頭に入れていると色々と考えさせられる。ある意味でメタ的なアニメでもある。
しかし、やはり単品として見たとき、どうしてもキャラもシナリオも地味に感じる。「ありふれた冒険を描いてもいいではないか!」というメッセージはよく伝わるし共感する一方で、やはり「ありふれた冒険なら描かなくてもいいのでは?」と問いたくなる。ストーリーを発展させていくのであれば、「平凡」であるところからいつか脱線せざるを得ないようにも感じた。1クールのアニメとしてはきれいにまとまっていたが。
ある程度ファンタジーアニメに慣れている人が見た方が味わい深いと思います。