ふじき さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
生きたいと思うこと
日本最古の物語文学「竹取物語」をベースにしており、キャッチコピーは「姫の犯した罪と罰」。地球に舞い降り、鳥や獣のように生きたいとだけ願った女性の話です。
人生は選択の連続です。その時代毎で、「相応しいとされる選択」があります。ジェンダーによって著しくその選択肢が限られることもあります。
私たちが生きている今は、常に過去よりも自由になっているはずです。
私は女ですが、先人たちの苦労や、今同じ時代を生きる異性、同性のお陰で、不自由を感じることはほぼありません。
けれど、それは、私が無意識のうちに「損をしない選択」をしてきたからなんだと思います。
みんなどこかで、「自分が一番イージーに生きられる道」を探しています。
本当の自由は孤独です。本当の自由を求めて争ってきた先人たちのをみて、私は無意識に「自由に生きたいと振る舞えば振る舞うほど、人はがんじがらめになってしまう」と思っていたようです。
正確な時代は不明ですが、「ミカド」の結婚相手、という当時からしたら「女性の一番の幸せ」という選択肢をかぐやは拒みます。
私がもし彼女なら。喜んだかは不明ですが、その話を絶対に受けたはずです。きっとそれが一番イージーな道だから。
かぐやは、永遠の世界で、永遠以外を望んでしまいました。永遠を生きるよりも、有限の時の中で、あらゆる命の営みに囲まれ、愛する人と共に喜び、悲しみたいと思ってしまった。そのことが、罪なんだと。
映画館で彼女を観て、私は涙が止まりませんでした。思うように生きてきた、何も制約は無かったと思っていたけど、きっとそんな人ほんの一握りなんだと思います。みんな、無自覚に何かを諦め、折り合いをつけて生きている。
真の「自由」なんて更々望まず、緩やかな支配の中で「自由に生きている」と思えている程度に飼い慣らされている呑気な私ですら、そう感じます。
高畑勲監督は本当に真摯な方だったんだと思います。「竹取物語」を映画化したいという思いが先なので、主人公の性別は付随的なものだとは思うのですが、なんで女性じゃないのに、こんな作品が作れるんだろうと思いました。
少しジェンダーに寄った話で作品を矮小化してしまいましたが、作画や音楽含め、とても素晴らしい作品だと思います。