101匹足利尊氏 さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
人の心に寄り添う魔法
とても優しい世界だったなぁ~という感想がまず残りました。
社会に認知されている魔法が邪な野望にも、
物質科学文明の利器の機能強化にすらも流用されず、
徹頭徹尾、人々の心を豊かにするために使われている。
魔法使いも森や山奥に引き籠もらず、
まちなかで魔法店を構えて、魔法を販売。
まるでアロマかハーブティーでも取り扱うようなオープンな感覚で
人々に幸福のきっかけを提供している。
こんな理想的な人と魔法の関係なんて、リアルにはなかなか想定し辛いのですが、
だからこそ人の良心に宿る魔法のような可能性が際立った、
私にとっては2018年秋の癒やし枠でした。
ただ、クール前半までは、私にとって本作は視聴断念候補でもありました。
物語の展開が乏しく退屈だったのか?と言えば、
標準的な青春アニメより、むしろ展開はあった方だと思います。
結局は、魔法とタイムスリップ!と言う設定に
無意識に抱いてしまった、より派手なシナリオへの期待と、
終始、繊細な青春の心理描写を貫いた本作との間に生じた齟齬だったのでしょうか。
本作の場合は多少演出がクドくても、視聴者の目を心情に注目させる仕掛けが
もっとあっても良かったのかもしれません。
また本作ではヒロインがなぜ色を認識できなくなったのか?
など主要人物の心のトラウマを終盤まで謎にして
視聴継続を喚起するプロットを組んでいましたが、
心理描写に引き込むためには、早い段階でヒロインの過去等を視聴者と共有し、
感情移入して、問題解決に挑む構成も一手だったかな?とも感じます。
何より、登場人物が人と魔法の良好な関係に感化されたのか、皆いい人過ぎます。
{netabare}三角とか、片想い玉突き事故とか、{/netabare}
割と修羅場に直行しかねない惨事も起こっているはずなのに、
この世界の住人は、まず相手の心を思いやってしまう。
展開の山や谷も穏やかな大海原にしてしまう。
その魔法のような優しさに浄化されてしまいます。
(心地よくなって何度か寝落ちしそうになったのは内緒w)
とは言え、青春の心の機微を色彩豊かに反映した
背景作画の美しさには目を見張る物がありました。
その流れで芸術絵画が持つ魔力も感じました。
画家が描く絵には、普段、簡単には暴露しない描き手の心の一端が溶かし込まれている。
こうした着想から見ると、絵画を展覧会で並べたりするのって
剥き出しの心を陳列する大胆な行為で、何かエロいと思ってみたりw
第六話にて唯翔(ゆいと)が{netabare} 「魔法使いって何様」と怒った{/netabare}気持ち何となく分ります。
それだけに、私自身の絵画鑑賞力の欠如も口惜しかったです。
(金色のサカナが何を示していたのか?私にはサッパリ分りませんでしたw)
絵からより多くのメッセージを感じ取れる方ならば、
本作をもっと深く味わい尽くせるのでしょうね……。
それでも、本作は人の善意が持つ可能性を描いた素敵な青春アニメだったと思います。