プランタン さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
想定外の出来! OPに集約される物語。
ブシロードは百合厨向け作品、もとい少女同士の友情物語を作るのが上手いな、と思った。「ガルパ(バンドリ)」も二期が始まったし。そして、棒読み気味だな、というのが第一印象。
視聴前は、津田健太郎の演じるキリン、というキワモノが出るネタ作品かな、と思っていた。完全にネガティブな視線から入った。
しかし、舞台が上がり始まる歌を織り交ぜながらの戦闘に加え、「アタシ再生産」の演出から、一際目が離せなくなる。しかし、日常はゆるく進む。なんだこれは。私はどう見たら良いのか、二話目にして視聴者としてのスタンスが分からなくなった。
転換点は七話だ。第六話まではひかりが転校してきてからの刺激しあい、今までと変わり始めた関係性を描いてきた。そこから、時系列の話へといきなり飛躍する。
大場なな。彼女の視点にシフトしつつ、この物語の骨子が露わになる。
トップスタァの願いは叶う。
最高の演劇を、再演する。第99回目の、離れ離れになる演劇を、全員が力を合わせて演じるためのループ。それを大場ななは望み、勝利し、叶えた。
しかして、それは破綻する。予期せぬひかりの転校によって。
八話ではその彼女の過去と現在に至る物語が描かれる。
すでにキリンの選別が他の場所であったことを、既にキラめきは奪われていたことを、「トップスタァ」になるために来日したことを。
そして九話で華恋とななの対決によって明かされる。
華恋の復帰で8人のバランスが崩れたこと。(8を横にすればInfinityを示す記号∞になる)
再び動き始めた物語は、10話で一応の決着を迎える。されど物語は続く。ひかりが「いらない」と言い、放棄したからだ。
まぁ、贖罪で賽の河原地獄みたいなことさせられるわけだが。やっぱりおかしい。
舞台が幕引きを終え、星は離れ離れになる。
はずだった。しかし幕は下りない。
「スタァライト」の、手の加えられた結末に進むために、華恋は再び舞台へと上がるからだ。
といったところが物語の見せ場になる。
結末はOPの最後の場面に繋がる。
とても綺麗にまとまった演劇であった。
この作品自体が一つの見世物であるのは、キリンがこちらを見て話しかけてくる時点で察した。
これは、諦めない、一人の少女の物語だった。
約束のために、一人だけしか勝者のいないはずの舞台に、二人で立つために落ちてなお這い上がる。
そして手を取り合い、二人で舞台に立ち、演じる。
舞台少女たちの、青春の物語。
レヴュースタァライト。
(私的な感想)
・幾原作品へのコラージュめいたリスペクトを感じる。ウテナ、ピンドラ、ユリ熊嵐、などなど。これらのエッセンスを煮立てて、「仲良くなりながらも頂点を目指す物語」という異色な話が出来上がった。
・設定自体は蠱毒というかfateの聖杯システムというか、そんな類のエグさがあるのだが、ヒロインの権利放棄によって元に戻る、というのがとても良かった。
・華恋の「再生産」のタイミングが実に丁度良く、こちらの望むタイミングに合致したりして、わかってんなー、と思った。子供がヒーローショー観ている感じに近いか。
・舞台が始まってからのSEがとても心地よい。ライティングに音が付随するから目と耳で楽しめる。全部見て最終話が一番良かった。次は5話、その次は8話。ストーリーも見返すと発見があったり、歌も楽しめるから何度見ても飽きないのはいい。歌曲集を歌詞を気にしながら聴くと本編の味わいが増す。
・次回予告でキリンが言う「わかります」の言い方が毎回違うのが笑えた。「わかります わかります」
と二回いうの好き。
・キネマシトラスは「メイドインアビス」と「灼熱の卓球娘」を作った会社であった。なるほど、いずれも音と映像の見事な混ざり合いがアニメとして一際惹かれるものがあった。個人的にこれからどういった作品に関与するのか楽しみである。