RFC さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
本編の1年後 Ob.みぞれとFl.希美の心情にフォーカスを当てたスピンオフ
原作未読。
ユーフォ大ファンとしては視聴は必至でした。
【作品概要】
ユーフォ1,2の1年後の物語。
本編の主人公はユーフォの黄前久美子でしたが、
今作は2の前半で登場した
Ob.鎧塚みぞれ と Fl.傘木希美に
フォーカスを当てた作品です。
【作品に対する感想】
ユーフォ本編が熱い青春物語だったのに対し、
今作は二人の心情描写に特化した作品で、
かなり静かにトーンを落として描かれています。
コンクールの結果とか、外界の事は描かれていません。
コンクールの自由曲「リズと青い鳥」の物語に
かぶってしまう二人の関係。
曲を完成させていく過程でみぞれの成長を描いています。
みぞれが精神的にあまりに自立できていないところに
さすがにイラッとしました。
最後はスタートラインに立ったものの、前半のイライラが
解消し切れずいまいち感動できなかったです。
音楽に関してはさすがで、言うことないです。
本編ユーフォのような熱血アニメを期待している人は
拍子抜けかもしれません。
ただ、吹奏楽部を織りなす物語は常に熱いものだけとは
限りませんので、こういう物語もありましたという点では
リアリティがあると思います。
1)物語
童話と二人の関係を関連付けて進めていくというのは
なかなか面白かったです。
みぞれの世界の全てである希美を手放す意味が分からない。
彼女の考え方(希美の存在がすべて)なら仕方ないでしょう。
新山先生とそれを一つずつ解きほどいていき、みぞれが依存から
一歩を踏み出したところは良かったと思います。
ただ、ちょっと疑問があります。
童話と現実の関連について。
一人のリズ
⇒ 孤独なみぞれ
リズのもとにやってきた青い鳥
⇒ みぞれを吹奏楽に誘った希美
孤独を満たされ幸せなリズ
⇒ 希美の存在が全てとなり安心できるみぞれ
に対して最後、
「翼の枷になっていたと気付いたリズが青い鳥を解き放つ」
というのは逆の立場になっていて、
「翼を持つみぞれ(=音大に行けるほどの力を持つみぞれ)の
ソロの掛け合いの枷になっていたのは希美」でした。
さらに言うとみぞれが翼を持ちながら解き放たれて
なかったのは希美を依存した自分自身が原因であり、
希美がみぞれに枷をかけたわけではありません。
ということで、いまいちリズと青い鳥をなぞらえた展開から
外れてたなと感じているのですが、
このあたりうまく噛み砕けなかったので、
ご意見頂けたら嬉しいです。
2)作画
リズと青い鳥の絵本の絵とリアルの方と描き分けられてました。
絵本の方は足が異様に長く描かれてあるのがやや気になりました。
3)声優
全体的にかなりトーンを落として話していたので、
作品全体的に暗い雰囲気になってしまいました。
童話の方はあえて棒読みな感じにして
昔のアニメっぽい雰囲気にしてたのかと思います。
4)音楽
吹奏楽の曲が非常に多かった印象です。
おそらく「リズと青い鳥」の一部を
シーンに応じて使っているのではと想像しています。
5)キャラ
①鎧塚みぞれ
「またウジウジ引きこもりかよ」が最初の感想でした。
去年の関西大会でのあの生き生きしたみぞれは
どこへ行った!?
ただよく思い出したら、みぞれが本来の演奏を
取り戻したのは希美との間の誤解が解け、希美の為に
演奏することを肯定できるようになったから
だったんですよね。
最後のコンクール、そして卒業…大切な希美と離れる
刻が迫っている事が彼女を追いこんでるんですね。
2のレビューでも描きましたが、「自分の為に」と
思えるようには、1年経っても
なっていなかったということでした。
みぞれの希美への依存はまあ酷いレベルで{netabare}
希美の後をついて回ったり、希美が音大に行こうかなと言えば
自分も行くと言ったり…。{/netabare}自分の意思は無いんかいっ!って。
自分のことで手いっぱいなものだから後輩に
気を使わせたり泣かせたり。
中学の時は後輩の指導とかどうしてたんだろうか?
②傘木希美
1年経ってちょっとパワーが弱くなったかなという気がします。
あすかに猛反対されてもめげなかったバイタリティーが
感じられません。
彼女は進路を音大から普通の大学に変更した件で、
リボンちゃんから咎められますが、
あれはちょっと不条理かなと。
進路なんて自分で選ぶべきで、人が変わったから自分も…
なんてありえないからです。
6)印象深いシーン
{netabare}
①高坂麗奈 みぞれに苦言を呈す
麗奈の成長が凄く感じ取れます。
1年前の麗奈なら突き放すような言い方しかできず、
部内のぎくしゃくの間接要因になってたと思います。
でも今回は自分の想いを述べつつ、ちゃんと後輩としての
立場を考えながら言葉を選んでいたと思います。
②麗奈&久美子 信頼の掛け合い
この二人の信頼を絶対的なものと示していたと思う
このシーン。
おそらくみぞれと希美に目を覚ましてくれという
メッセージを乗せていたのではないかと想像します。
こんなことまで後輩にさせるな!
希美とみぞれは反省しなさい!
ただ他のパートの演奏なんかしてたら
「自分のパートをもっと昇華させろ」と
めちゃくちゃ怒られるとは思いますが…。
まあそれはそれで。
③新山先生 希美に対して「え?あなたも?」といった反応
これ、リアリティの面でいいシーンだなと。
全国レベルの吹奏楽部でも音大というハードルが
どれだけ高いかを示しています。
部内の1学年で2,3人ってところじゃないでしょうか。
もちろん部のレベルによると思いますが。
希美も部の中では上位の実力者でしょうが、
高い金をかけて音大に行ってさらに
プロとして生きていくのがどれだけ狭い門か…
という話です。
2年でも音大行きとなると麗奈くらいかなと。
甲子園出場者の中からドラフトに名前が挙がるのが何人かを
イメージして頂ければなんとなくわかるかも。
④希美と違う方に歩いていくみぞれ
みぞれがやっと自分の意思で歩き始めたと象徴するシーン。
ただ、「やっとですか」…という気はしました。
{/netabare}
7)原作読破、誓いのフィナーレ視聴後(2020/3/29追記)
原作読破・誓いのフィナーレ視聴後、リズを再視聴しました。
リズと青い鳥を含む久美子が2年生の頃の期間は
原作の「波乱の第二楽章 前編・後編」
にあたります。
2冊でリズと青い鳥・誓いのフィナーレが並行して進む
感じですね。
原作読破+誓いのフィナーレを視聴して感じたこと。
➀私のような脳筋にはリズ単品の視聴では拾いきれない
繊細な心の機微がちゃんと作画されていた。
原作のテキストを読んだうえで視聴するとほんのちょっとの
口元や眉の作画で実は表現されていたことが解ります。
{netabare}
リズ単品で希美に黒い感情があったこと読み取れました?
希美は多少ドライなところがあるとはいえ、
そこまでみぞれを嫉妬の対象にしているとは
思えませんでした。
{/netabare}
➁恐らくこの北宇治高校吹奏楽部は鎧塚みぞれの視界を通しての
描写だったのかなと感じました。
ゆえに、本編のような熱量がない。
物語が進む中、ずーっと音楽が鳴りっぱなしということが
多いんですよね。
音楽の上を人が歩いている。そんな印象を受けました。
これがみぞれから見た北宇治高校吹奏楽部の
心象風景なんでしょう。
原作を読むことで、情報不足も補えました。
読んでよかったと思います。
全体的に原作のほうが生々しいです。
その分リアリティがあります。
みんなきれいごとだけじゃありません。
打算もあるし、下心もあるし、嫉妬などの黒い感情もあります。
そんな中で特に印象深かったのが、覚醒したみぞれの初3楽章。
劇場版の映像はあくまでみぞれの心象風景だったのでしょう。
ずいぶんマイルドで「すごくよくなりました」
「よかったです」程度の表現でした。
しかしすべての感情を生々しく乗せたみぞれのOb.は{netabare}
滝・橋本先生をも「どうすんだよこれ」と唸らせるほど
であり、希美の自尊心を木っ端みじんに叩き壊すほどの
破壊力がありました。
これにより希美のFl.は
「私が前に出る」から「みぞれを支える」に変わり、
みぞれのOb.は自由に羽ばたけるようになったと…。
あー、みぞれの高校生活の真の完結として
アンサンブルコンテストでのワンカット
どっかで見れないかなー。
というか、リズの最後に入れてほしかったなー。
{/netabare}
生々しい真の姿を見たい方は原作おすすめです。
そして限られた時間で目いっぱい詰め込もうとした
京アニさんの努力がさらに感じられるかと思います。