「リズと青い鳥(アニメ映画)」

総合得点
85.9
感想・評価
572
棚に入れた
2363
ランキング
220
★★★★★ 4.1 (572)
物語
4.0
作画
4.3
声優
4.0
音楽
4.2
キャラ
4.1

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ネタバレ

RFC さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

本編の1年後 Ob.みぞれとFl.希美の心情にフォーカスを当てたスピンオフ

原作未読。
ユーフォ大ファンとしては視聴は必至でした。

【作品概要】
 ユーフォ1,2の1年後の物語。
 本編の主人公はユーフォの黄前久美子でしたが、
 今作は2の前半で登場した
 Ob.鎧塚みぞれ と Fl.傘木希美に
 フォーカスを当てた作品です。

【作品に対する感想】
 ユーフォ本編が熱い青春物語だったのに対し、
 今作は二人の心情描写に特化した作品で、
 かなり静かにトーンを落として描かれています。
 コンクールの結果とか、外界の事は描かれていません。

 コンクールの自由曲「リズと青い鳥」の物語に
 かぶってしまう二人の関係。
 曲を完成させていく過程でみぞれの成長を描いています。
 みぞれが精神的にあまりに自立できていないところに
 さすがにイラッとしました。
 最後はスタートラインに立ったものの、前半のイライラが
 解消し切れずいまいち感動できなかったです。
 
 音楽に関してはさすがで、言うことないです。

 本編ユーフォのような熱血アニメを期待している人は
 拍子抜けかもしれません。
 ただ、吹奏楽部を織りなす物語は常に熱いものだけとは
 限りませんので、こういう物語もありましたという点では
 リアリティがあると思います。

 
1)物語
 童話と二人の関係を関連付けて進めていくというのは
 なかなか面白かったです。
  
 みぞれの世界の全てである希美を手放す意味が分からない。
 彼女の考え方(希美の存在がすべて)なら仕方ないでしょう。
 新山先生とそれを一つずつ解きほどいていき、みぞれが依存から
 一歩を踏み出したところは良かったと思います。
 
 ただ、ちょっと疑問があります。
 童話と現実の関連について。
 一人のリズ 
  ⇒ 孤独なみぞれ
 
 リズのもとにやってきた青い鳥 
  ⇒ みぞれを吹奏楽に誘った希美

 孤独を満たされ幸せなリズ 
  ⇒ 希美の存在が全てとなり安心できるみぞれ

 に対して最後、
 「翼の枷になっていたと気付いたリズが青い鳥を解き放つ」
 というのは逆の立場になっていて、
 「翼を持つみぞれ(=音大に行けるほどの力を持つみぞれ)の
 ソロの掛け合いの枷になっていたのは希美」でした。
 さらに言うとみぞれが翼を持ちながら解き放たれて
 なかったのは希美を依存した自分自身が原因であり、
 希美がみぞれに枷をかけたわけではありません。

 ということで、いまいちリズと青い鳥をなぞらえた展開から
 外れてたなと感じているのですが、
 このあたりうまく噛み砕けなかったので、
 ご意見頂けたら嬉しいです。


2)作画
 リズと青い鳥の絵本の絵とリアルの方と描き分けられてました。
 絵本の方は足が異様に長く描かれてあるのがやや気になりました。


3)声優
 全体的にかなりトーンを落として話していたので、
 作品全体的に暗い雰囲気になってしまいました。

 童話の方はあえて棒読みな感じにして
 昔のアニメっぽい雰囲気にしてたのかと思います。

4)音楽
 吹奏楽の曲が非常に多かった印象です。
 おそらく「リズと青い鳥」の一部を
 シーンに応じて使っているのではと想像しています。

5)キャラ
 ①鎧塚みぞれ
  「またウジウジ引きこもりかよ」が最初の感想でした。
  去年の関西大会でのあの生き生きしたみぞれは
  どこへ行った!?
  
  ただよく思い出したら、みぞれが本来の演奏を
  取り戻したのは希美との間の誤解が解け、希美の為に
  演奏することを肯定できるようになったから
  だったんですよね。
  最後のコンクール、そして卒業…大切な希美と離れる
  刻が迫っている事が彼女を追いこんでるんですね。
  
  2のレビューでも描きましたが、「自分の為に」と
  思えるようには、1年経っても
  なっていなかったということでした。

  みぞれの希美への依存はまあ酷いレベルで{netabare}
  希美の後をついて回ったり、希美が音大に行こうかなと言えば
  自分も行くと言ったり…。{/netabare}自分の意思は無いんかいっ!って。

  自分のことで手いっぱいなものだから後輩に
  気を使わせたり泣かせたり。
  中学の時は後輩の指導とかどうしてたんだろうか?

 ②傘木希美
  1年経ってちょっとパワーが弱くなったかなという気がします。
  あすかに猛反対されてもめげなかったバイタリティーが
  感じられません。

  彼女は進路を音大から普通の大学に変更した件で、
  リボンちゃんから咎められますが、
  あれはちょっと不条理かなと。
  進路なんて自分で選ぶべきで、人が変わったから自分も…
  なんてありえないからです。
  

6)印象深いシーン
{netabare}
 ①高坂麗奈 みぞれに苦言を呈す
  麗奈の成長が凄く感じ取れます。
  1年前の麗奈なら突き放すような言い方しかできず、
  部内のぎくしゃくの間接要因になってたと思います。
  でも今回は自分の想いを述べつつ、ちゃんと後輩としての
  立場を考えながら言葉を選んでいたと思います。

 ②麗奈&久美子 信頼の掛け合い
  この二人の信頼を絶対的なものと示していたと思う
  このシーン。
  おそらくみぞれと希美に目を覚ましてくれという
  メッセージを乗せていたのではないかと想像します。

  こんなことまで後輩にさせるな!
  希美とみぞれは反省しなさい!

  ただ他のパートの演奏なんかしてたら
  「自分のパートをもっと昇華させろ」と
  めちゃくちゃ怒られるとは思いますが…。
  まあそれはそれで。

 ③新山先生 希美に対して「え?あなたも?」といった反応
  これ、リアリティの面でいいシーンだなと。
  全国レベルの吹奏楽部でも音大というハードルが
  どれだけ高いかを示しています。

  部内の1学年で2,3人ってところじゃないでしょうか。
  もちろん部のレベルによると思いますが。
  希美も部の中では上位の実力者でしょうが、
  高い金をかけて音大に行ってさらに
  プロとして生きていくのがどれだけ狭い門か…
  という話です。
  2年でも音大行きとなると麗奈くらいかなと。
  甲子園出場者の中からドラフトに名前が挙がるのが何人かを
  イメージして頂ければなんとなくわかるかも。

 ④希美と違う方に歩いていくみぞれ
  みぞれがやっと自分の意思で歩き始めたと象徴するシーン。
  ただ、「やっとですか」…という気はしました。
 
 
{/netabare} 

7)原作読破、誓いのフィナーレ視聴後(2020/3/29追記)
 原作読破・誓いのフィナーレ視聴後、リズを再視聴しました。

 リズと青い鳥を含む久美子が2年生の頃の期間は
 原作の「波乱の第二楽章 前編・後編」
 にあたります。
 2冊でリズと青い鳥・誓いのフィナーレが並行して進む
 感じですね。

 原作読破+誓いのフィナーレを視聴して感じたこと。
 ➀私のような脳筋にはリズ単品の視聴では拾いきれない
  繊細な心の機微がちゃんと作画されていた。

  原作のテキストを読んだうえで視聴するとほんのちょっとの
  口元や眉の作画で実は表現されていたことが解ります。
  {netabare}
  リズ単品で希美に黒い感情があったこと読み取れました?
  希美は多少ドライなところがあるとはいえ、
  そこまでみぞれを嫉妬の対象にしているとは
  思えませんでした。
  {/netabare}

 ➁恐らくこの北宇治高校吹奏楽部は鎧塚みぞれの視界を通しての
  描写だったのかなと感じました。

  ゆえに、本編のような熱量がない。
  物語が進む中、ずーっと音楽が鳴りっぱなしということが
  多いんですよね。
  音楽の上を人が歩いている。そんな印象を受けました。  
  これがみぞれから見た北宇治高校吹奏楽部の
  心象風景なんでしょう。

 
 原作を読むことで、情報不足も補えました。 
 読んでよかったと思います。
 全体的に原作のほうが生々しいです。
 その分リアリティがあります。
 みんなきれいごとだけじゃありません。
 打算もあるし、下心もあるし、嫉妬などの黒い感情もあります。

 そんな中で特に印象深かったのが、覚醒したみぞれの初3楽章。
 劇場版の映像はあくまでみぞれの心象風景だったのでしょう。
 ずいぶんマイルドで「すごくよくなりました」
 「よかったです」程度の表現でした。
 しかしすべての感情を生々しく乗せたみぞれのOb.は{netabare}
 滝・橋本先生をも「どうすんだよこれ」と唸らせるほど
 であり、希美の自尊心を木っ端みじんに叩き壊すほどの
 破壊力がありました。
 これにより希美のFl.は
 「私が前に出る」から「みぞれを支える」に変わり、
 みぞれのOb.は自由に羽ばたけるようになったと…。
 
 あー、みぞれの高校生活の真の完結として
 アンサンブルコンテストでのワンカット
 どっかで見れないかなー。
 というか、リズの最後に入れてほしかったなー。
 {/netabare}  

 生々しい真の姿を見たい方は原作おすすめです。
 そして限られた時間で目いっぱい詰め込もうとした
 京アニさんの努力がさらに感じられるかと思います。

投稿 : 2023/03/27
閲覧 : 492
サンキュー:

43

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