「ゴブリンスレイヤー(TVアニメ動画)」

総合得点
85.7
感想・評価
1043
棚に入れた
5029
ランキング
230
★★★★☆ 3.7 (1043)
物語
3.7
作画
3.7
声優
3.7
音楽
3.5
キャラ
3.7

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ネタバレ

雀犬 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7
物語 : 3.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

ある意味象徴的な第1話

 ゴブリンスレイヤーはオンライン小説が原作のダークファンタジー。ゴブリン狩りを生業とする男の物語。そもそもの起こりは2ちゃんねる掲示板のAAスレで、登場キャラの元ネタを調べると面白い。

 このアニメの第1話は今のアニメの傾向が色濃く出ているような気がします。そして困ったことに第1話が飛び抜けて面白かったんですよコレが。

 1つ目。今のアニメはセールス的に海外の比重が高くなっている。それ自体は悪いことではないのですが、海外受けを狙って安易にエログロ描写を強化する傾向にある。これはNetflix限定アニメの内容を見れば明らかで、昔はOVAで制作していたような暴力的な表現もバンバンやってしまう。これが実際に海外では受ける。実はこのゴブリンスレイヤー、海外最大手のアニメフィンサイトMyAnimeList(通称MAL)で2018年秋の作品群で登録者数1位なんだよね。僕はエログロには別に抵抗がないし自己責任で観れば良いと思うけど、深夜アニメに対する風当りが強くなるのは嫌だなぁと勝手なことを考えるわけです。

 2つ目。インパクトある展開を早い段階で持って来ること。第3話に超展開を持ってくる構成を「まどマギメソッド」なんて呼んでいたけれど、それがさらに先鋭化されてとうとう第1話で鬱展開をやってしまった。今季のゾンビランド・サガしかり。この背景には言うまでもなくアニメを作りすぎという問題がある。今はネット配信でも観れるから放送前に無条件で候補から外せる作品が減っている。視聴者からすると数十あるタイトルから現実に観れる本数分、アニメを早目に絞り込みたい。しかし余程時間に余裕がなければ全ての作品に目を通すことは難しい。そこでネットでの口コミが重要になるのだが、そうすると制作側も早い話数で過激な展開を用意し、耳目を集めようと考えるわけです。こういった傾向に追従する制作会社が増えていくと今後ゆったりした展開のアニメは厳しくなるかもしれません。

 さて、前置きはこの辺にしてゴブリンスレイヤーの本編についての感想です。

ψ第1話ψ
{netabare}
 暗い洞窟で少女が倒れこみ、怯える表情を映す陰惨な雰囲気の映像でアニメはスタートする。そこからタイトルロゴを大写しにした後、場面は街のギルドへと移動する。本作は冒険者たちがギルドで依頼を探し、討伐を行うというよくあるゲーム的世界観を採用している。

 メインヒロイン、15歳で成人した神官の少女は駆け出しの冒険者。いわばピカピカの1年生。そんな彼女はギルドで冒険者登録を済ませた後、同じく新米冒険者たちに誘われてゴブリン退治へと向かう。この時点ですでに死亡フラグが立ちまくりなのですが、案の定ゴブリンたちの返り討ちにあう。戦士は滅多打ちにされ死亡。魔法使いと女格闘家はゴブリンたちに輪姦される。絶体絶命の神官。

 そこに救世主として登場するのがゴブリンスレイヤー。本作の真の主人公だ。彼は熟練した手捌きでゴブリンたちを次々に仕留めていき、洞窟にいた全てのゴブリンを殲滅する。九死に一生を得た神官はサポート役として彼についていくことを決める。・・・というのが第1話のあらすじです。

 話題騒然となったこの回について、苦手な方は苦手かと思うが僕は文句なしに面白いと思った。ゴアな描写の数々にも圧倒されるが、特筆すべきはリアリティーにある。本作のリアリティーはゴブリンを徹底して生き物として描いていることで生み出されている。通常ゲームやアニメでモンスターを討伐するとき、「生き物を殺している」という自覚を持つことはまずないが、本作はその感覚を生々しく視る者に伝えてくる。ゴブリンの子供を殺すシーンなど最たるものです。

 ゴブリンスレイヤーのキャラクターも非常に印象深い。彼らの生態・習性・戦術を熟知し、敵の思考の一歩先を行くことで数の暴力に対抗する。高い等級の冒険者らしからぬ地味な装備もゴブリン退治に特化した、機能性を重視したものになっている。ゴブリンを殺す方法も手段を選ばず、確実性を最重視する。一切の妥協をせず、ゴブリンを倒すことに執念を燃やす彼のストイックな姿勢はヒーローというよりはプロフェッショナルと呼ぶにふさわしく、通常の主人公とは全く違う魅力が感じられる。鉄兜をまとい素顔の見えない彼の平素の姿や過去エピソードなども大いに気になるところ。

 そしてこの作品は「人間の業」をテーマとして提示しているように思えました。ゴブリンスレイヤーは「人前に出てこないゴブリンだけがいいゴブリンだ」と言い放ち、子供のゴブリンを始末した。この発言の元ネタは「The only good Indian is a dead Indian(死んでいるインディアンだけが良いインディアンだ)」というフィリップ将軍の言葉です。このレイシズムの権化といえる発言の引用は、ゴブリンを殺すこと道義性を揺るがす重大なものです。子ゴブリンを殺す事に抵抗を感じる神官は甘いといえば甘いが、その感覚は人として正常なものといえる。ゴブリンスレイヤーに仕える事を決意した少女は小鬼殺しの罪を背負い切れるのか?これから何を心の支えにしてゴブリン退治という過酷な仕事を続けていくのか?非常に興味を惹かれる。

 正直、第1話を観たときは神アニメの予感がしました。
{/netabare}

ψ第2話以降ψ
{netabare}
 が!!!第2話こそ第1話のテンションをそれなりに保っているものの、パーティーが増えてからはちょっとエログロ描写が多目の普通のライトノベルファンタジーになり、そのまま最終回まで突っ走ってしまう。

 2話以降、物語はほぼゴブリンスレイヤーの視点で展開し、女神官の内面描写はほとんどなく、ゴブリン退治を続けても気に病む様子はない。カリカチュアライズされたただの萌えキャラと化す。戦闘でも自らは手を汚すことなく後方支援に徹するというなんともお優しい待遇。「人間の業」がテーマかと思っていたがどうやら気のせいだったようです。

 なので見る方も2話以降は気持ちをスイッチする必要がある。まぁ、主人公最強系のファンタジーよりはずっと面白いし、よくできているとは思うけど第1話のような非凡さはありません。ゴブリンスレイヤーのぶっきらぼうなキャラを最大限魅力的に見せているところはすごくうまいし、評価できるんですけどね。でも観たかったのはコレじゃないんだなー。


 足らんわっ……まるで…!!
 わしは……
 もっともっと……
 重厚で精神的ダメージのある作品が見たかったんじゃ!!

ということです、はい。
{/netabare}

投稿 : 2019/01/02
閲覧 : 310
サンキュー:

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