ツークツワンク さんの感想・評価
4.9
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
登場人物の心理描写が非常に良かった
このアニメのテーマは変化と失恋だろう。
作中の喫茶店の名前が「トライアングル」だったりするが、三角関係をさらにぐちゃぐちゃにした人間関係で描かれる終始シリアスな恋愛もの。
萌え系の絵柄に反してラブコメでは断じてなく、コメディ要素は皆無なので見る人を選ぶ。
話の内容は人魚姫かと思いきや2期は浦島太郎だったりして海に関係する要素を分かりやすくストーリーに落とし込んでいるのは世界観と合わせて良い。
1期は終盤のまなかと紡のミスリードにはしてやられた感があったのも含めて、幼馴染の4人が陸に上がって紡と出会ってしまったために人間関係が変化していく転校生パターンの逆というのが割と新鮮で面白い。
死別した奥さんに代わってあかりがその後釜に入ろうとする深夜アニメにしてはいきなりのヘビーブローをかまして来るし、光を取り巻くドロドロの人間ドラマは割と好きである。
最後の引きといい1期は全体的に面白かった。
2期は主人公を美海に変えて5年後の変化を描いていくのだが、1期を終えた時点で視聴者は「神の視点」で光とまなかが両想いだということを知っているがために、2期の主人公の美海が玉砕されることは分かり切っているので、ここら辺の恋愛描写は退屈だった。
が、それも最終的に失恋というテーマを描く上であえて必要な描写だったことに気づくと見方が180度変わってくる。
海の人間に恋をする「人魚姫」という貧乏くじを引かされた美海をどう感じるかでこの作品の評価も人それぞれ変わってくるのではないだろうか。
ひたすら回りくどい人間ドラマを1期から続けるため、辟易する人もいるだろう。ただ5年の月日で成長したちさきの内面と変化の描写は非常に良かったし、不憫過ぎた要とさゆの告白シーンが作中で一番感動してしまった。
世界観に関して、海の中の建造物をどうやって作ったのか、テレビがどうやって映っているのか、水中の中で何故楽器の演奏ができるのか、2期で美海がお菓子を持ち込んで食べているけどふやけていないのか、そもそも食事(味噌汁を飲む)が出来るのかとか
色々突っ込みどころがあるのだが、そこらへんを突っ込むのは野暮というものだ。
むしろ色々説明を加えると余計に話がこじれそうなので完全にファンタジーとして割り切ってくれと製作側も思っているに違いない。
最終的に世界の崩壊は先延ばしのような不穏な発言をしているが、雪も止んだし想いの力で乗り切っていけるという明るい未来を匂わすような終わり方をしているので気持ちよく鑑賞することができた。
陸の人間との間に子孫が残せるから大丈夫という解決の仕方も首を捻ってしまうが、世界を救うとか海と陸の共存などという問題はこの作品においてあまり重要ではないし、あくまで人間ドラマがメインなのでそこに面白さを感じられないと設定の雑な面も手伝ってあまり楽しくないだろう。
ドロドロの人間ドラマを26話分見せられたのに飽きずに楽しめたというだけでも評価は高い。
変化するOPとEDの演出も良く、心に残る作品になった。