プラ さんの感想・評価
3.2
物語 : 3.5
作画 : 3.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
考える題材として◎ 内容は△
内容は一言で表せば、「結局、ゴジラには勝てなかった」となるだろうか。
ナノメタルと同質化してゴジラを倒すことは人類の尊厳を冒涜する行為だと感じたハルオたち。ゴジラを倒すことができそうな寸前で、作戦遂行を諦め、また多くの仲間を失うことになった。そして、もはやゴジラを倒す手段がなくなってしまい、希望などないように思えた。
いままでのゴジラとの数々の戦闘を静観していたメトフィエスらエクシフが動き出す。彼らはハルオがナノメタルと同質化しなかったことを「奇跡」と称し、ゴジラとの闘いを生き延びた意味を考えるように説く。絶望に真っただ中にいた人類たちは、その選民思想にすがり、エクシフを中心とする勢力がついに表舞台になる。・・・もちろん、フツアの治療によってナノメタルに対する免疫を獲得したことが真の理由であるが、それを知っているのはハルオ含めごく一部の人間たちだけであった。そして、エクシフはそれを隠そうとした。
エクシフたちは、彼らの文明がもたらした高度な演算システム「ガルビトリウム」から得られる神託-未来予測-をもとに、どちらかといえば他の人類たちとは独立に今まで行動をしていた。
さて、エクシフたちの究極的な目標は何なのか。それは”星の破壊”であった。時空間を自在に動き回るゴジラの上位互換の存在である「ギドラ」を召喚し、地球ごと破壊してしまうのが、エクシフたちの答えであった。エクシフたちは”破滅こそが救い”という信念で、地球にやってきた時からその機会をうかがっていたらしい。
ハルオはメトフィエスに洗脳されていく人類たちを見て、怒りを覚えメトフィエスに苦言を呈す。そんなハルオに対して、メトフィエスはこう言う…高度に発達した科学は、宗教と見分けがつかない…名言である。ハルオは否定したくとも立証できないので、口ごもるしかなかった。
エクシフは彼らの母星に滅亡=救いをもたらしたギドラをがルビトリウムを通じて召喚する。ギドラは特異点(ブラックホールの中心)から現れる絶対的超重力存在であり、地球の空間にありながらして、地球と違う時空に存在する。地球の物理法則に従わないギドラ、ゴジラはその物理的存在を認識できないため、いっさいの干渉ができない。ゴジラもとい地球は、自らより上位の存在に喰われるのをただただ待つしかないのである。
ハルオはなんとかしてギドラを地球に”引き摺り下ろす”ことはできないかと考える。それは、ガルビトリウム・メトフィエスの眼の破壊である。これによって、ギドラは地球にその物理的存在を認識されるようになり、絶対的地位を失う。結局、ゴジラに退治され、元の時空に戻っていった。
ギドラはあらゆる物質を”時空の闇に放り込む”攻撃手段しか持っておらず、ゴジラに対して物理的打撃を与えられないのは非常に興味深かった。
メトフィエスは最期に、ハルオのいかにも人間臭い怒りと憎悪の念を称え、死す・・・メトフィエスは、このことを望んでいたのではなかろうか?ギドラという存在をハルオに早めに教えていたし、ギドラを地球から追い出す方法のヒントを与えていた気がする。ハルオという人間によほどな感銘を受けたのだろうか、エクシフたちは同じ手段で宇宙のあらゆる惑星を滅ぼしてきたらしいが、メトフィエスは地球を滅亡から守ったのかもしれない。
ビルサルド・エクシフがいなくなり、宇宙船も破壊され、地球に残った元地球人類たちが選んだ道は、共生である。ゴジラが君臨する地球において進化した新人類「フツア」たちとの新しい文明を築き始めた。それはある意味ゴジラとの共生をも意味した。
時が経ったある日、対ゴジラ戦闘機・ヴァルチャーの再起動に成功する。ハルオはそのことに危機感を覚えた。対ゴジラ戦闘機の復活、それはゴジラに殲滅される悪夢の再来である。高度な科学技術という禁断の果実を手に入れるたびに、ゴジラが現れ淘汰されることを悟ったハルオ。思い立ったかのようにヴァルチャーに乗り込み、ゴジラに特攻を仕掛け、あえなく散る。弔いの意味もこめて、ユウコを連れて・・・
このあと、フツアと人類がどのような発展を遂げていったのかは、知る由もない。
さて、テーマは一貫していた。人類たちは、自分たちの生活を豊かにするためという目的で、科学技術を発展させていくが、それは単なるエゴである。環境破壊や生態系の崩壊などの犠牲に成り立っているこれらの科学技術が究極の答えを出した瞬間、ゴジラに復讐され、果てにはギドラによる滅亡を招く。
我々は無尽蔵に発展をしている。果たして、それが招くのはいったいどんな未来なのか。パラダイスなのか、ディストピアなのか。考えてみるといい。