ワドルディ隊員 さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
聖人と狂人が入り混じった悪役カギ爪の男
この作品は、2005年に制作された谷口悟郎監督
のロボットアニメである。ちなみに、放送日までロボット物だという
事が伏せられたことで、視聴者を大きく驚かせた経緯がある。
自分も表紙だけでは、ロボットアニメとは思えなかったし。
これは、彼らの思惑通りに行ったということでいいのかな?
キャッチコピーは痛快娯楽復讐劇と書いてある通り、全体的
に話が暗くなることはないので気楽な気持ちで望んでいただけると幸いだ。
全体を通した感想だが、復讐ものにしてはかなり爽快な作品だった
ように感じられた。バトルシーンはそれなりに挿入されてはいるが、
コメディ物としての側面が強かったし。主人公がそこまで芯が
ぶれないキャラとして描かれているのも大きい。
(彼が葛藤する場面や彼の過去をもっと掘り下げてもいいとは思うけど)
まずは良かった点から。
ストーリー展開は非常にシンプルなので、変に身構える必要がないこと。
ほぼ予想通りの展開で進むため、安心して視聴できるだろう。
キャッチコピーがキーワードそのものなので、その言葉を信じてみれば
特に問題はないと思われる。
次に、伏線が適度にちりばめられていること。私自身視聴していて
「この話いる?」と思った回でも、結局は後半の展開に
直接関わってくるのだ。コンビニエンスストア並に忙しい方
なら仕方ないのだが、ある程度余裕のある方はなるべく全編
に目を通す事をお勧めする。所々熱い展開もあるしね☆
個人的な意見だが、OPは好みの部類に入る。
物語が進んでいくにつれ、塗りつぶされていた登場人物が露になるので
事前整理がしやすいのだ。また、死亡されたと思われる人物は逆に黒く
塗りつぶされる。OPだけで、二重チェックができるという訳だ。
特に印象に乗っているキャラクターだが、やはりカギ爪の男。
設定を踏まえた上で視聴しても、この手の悪役はかなり
珍しいように思う。大抵の悪役は、登場した時点で直ぐに分かる
ケースがほとんどだが、このカギ爪の男に関しては一発で
見定めるのが難しい。よくよく聞くと、かなりの外道で
あるのは間違いないのだが、彼のしていることに理解を示すことはできる。
(彼の行いを許すという訳ではない)
当初は、なぜこんな奴に皆がついていくのか疑問に
思っていたが、見ていくうちに、カリスマ性が非常に高い人物
であることが分かった。それは、彼は愛という感情を持っており、
怒などといった負の感情が一切ないことが理由だろう。
但し、相手を殺してしまった直後の立ち直りが異様なまでに早いのだ。
これは、「自分の心の中で相手は生き続けている。
つまり、死んでいない。」
という考えが頭の中にあるからなのだが、常人からすれば常軌を
逸してるとしか思えない。それを見せつけられて、動揺しない
人物がいるだろうか。少なくとも私は鳥肌が立った。
そういった理由から、わたしにはとても興味深いキャラクターに見えた。
(直接話したくはないけど)
ここからは気になった点を。
別サイトの方も言及していたが、痛快娯楽復讐劇という
キャッチコピーにはどうも疑問符がついてしまう。復讐という単語が
出る時点で、痛快という表現は適さないように思う。要は作風が
明るすぎるのだ。まあ、大衆向けに作った作品で
あるのは分かるのだが、流石にやりすぎな気がする。
悪役陣営に関しては、割と納得させられることが多かったのだが、
主人公陣営に関してはそこまででもない。説明が足りていない点
が多く、感情移入がしにくいのだ。
ぶっちゃけ、なんでこいつがいるのと?感じてしまう場面もあったし。
案の定、カギ爪の男とヴァンに関する回想シーンも不十分だった。
カギ爪の男はまだいいが、ヴァンの方は明らかに説明不足
だったように思う。なぜ、その話を掘り下げようとしなかったのか。
その上、ヨロイについての設定も不十分なので、視聴していて
非常に気になった自分がいた。色々と勿体ない作品だった。
ずば抜けて面白いという訳ではないが、熱くなれる場面が
多かったのも事実。SFロボットアニメの入門としてはかなり
見やすい部類の作品だと考えている。
また、相当に癖の強い悪役がいるので、悪役に興味がある方は、
時間に余裕がある時に視聴してみるのもいいだろう。
個人的には良作だと思う。