たばこ さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
期待値どおりの出来栄え
第1作の品質が過去に見た映画、アニメ含め最高レベルだった流れで、この第2作目に突入。
そのため、視聴前のハードルも史上最高に上がっていたのだが、その期待にこたえる面白さだった。
特徴としては、第1作よりも、より政治ゲーム中心の展開が色濃くなり、政治当局(合田)、テロ組織(クゼ)、そして公安9課(素子)の3者を交えた駆け引きがスピード感を持って描かれている。最終回でクゼが米帝のCIAに暗殺されるラストの演出からも、この第2作目は政治のパワーゲームをテーマにしていることがわかる。
一方、甲殻機動隊の本来のテーマ(だと私が考えている)「クオリア(自意識の問題)」についても、終盤、「タチコマ」による核兵器への突入シーンを筆頭に、上手く描かれている。
ただし、1作目に比べて決定的に劣るのが、「敵キャラの魅力」である。
もちろん、合田やクゼを筆頭に、公安9課の敵は存在はしている。が、1作目の「笑い男」と比べてしまうとどうしてもインパクトが弱い。例えば、シリーズを通して登場する合田は一言でいうと「かませ犬」なわけである。小手先の戦術を練り上げるのは確かに得意である。しかし、彼の動機は全て「自身の矮小なコンプレックス」に基づくものであると素子(の外部記憶を使ったバトー)に看破され、さらには、ジャイアンの背中でノビタを罵倒するスネオよろしくの、米帝の犬であることが終盤で明かされる。
これほどの小物に、知力戦・肉弾戦の超エキスパートである公安9課が振り回されるのがどうにも不釣合いである。
また、クゼについても、難民数百万人を一手に組織する英雄として描かれてはいるものの、得たいの知れない「より上部構造への進化」という理想が突拍子も無く終盤に登場する。視聴者としては「?」と首を傾げざるを得ない。彼がなぜそのような理想を掲げるに至ったのかが釈然としないのである。そして、ラストにはあっけなくCIAに暗殺されてしまう。合田と同じく、笑い男に匹敵する「不気味さ・大物感」に欠ける。
そして、2クールをかけて展開してきたこの3者三つ巴の抗争も、結局は米帝の手のひらで踊らされていたに過ぎないとういオチである。
とはいえ、ほぼ完璧に近い出来の第1作と比べてしまうのは少々酷な気もするので、純粋に政治サスペンスものとして楽しむのが正しい姿勢なのだろう。