じん さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
沈黙の春の思想に傾倒したアニメ
この作品は日本アニメを代表する監督、宮崎駿による原作脚本監督作品の第一号である。
公開は1984年ということから、輸出されるアニメとしても黎明期に属するものだ。私というより親が好んでいて、VHSでよく見ていた思い出がある。
ストーリーについては、テーマがあらすじから早々に見え透いてしまい、最後の綺麗な完結には至らなかったと考えている。原作を読んだ身としてはもう少し世界観の本質に触れて欲しかった。この作品は、カーソン著の沈黙の春の影響を受けていると考えている。その書物もこの映画も産業文明の行き過ぎた未来像としては非常に現実的なものである。科学も自然法則の中にあり自然と同様扱いきれないとする思想はチェルノブイリ事故、チャレンジャー号爆発事故以前において重要だが世界中でその息を潜めていたことだろう。
作画は非常に面白い。予算が潤沢にあったのか、スタッフを酷使したのかは分からないが非常に写実的な動きが目新しい。質感にも非常に拘っているのだろう。コンテについては動きがよく分かる素晴らしい出来だ。雲の間での戦闘シーンは非常に面白い。
キャラクターデザインは監督の持つ技量からもふさわしいものであると言えるだろう。表情に加えて髪の毛がビリビリと動く描写の起源はここだろうか?
音楽はクラシカルなサウンドがセル画によくあっていて厚みを持たせている。吹奏楽的な要素が強いのは私には嬉しいことである。以後ジブリ作品においてお互いを高め合うコンビの結成である。
声優については元々写実的な作品なので専業声優がいないのは当然だろう。そもそも当時専業はいたのだろうか?昔は兼業というか俳優業の吹き替えの仕事だったはず...
全体を通していえるのは、この作品の世界観、ストーリー、作画、音楽などどれを取っても非常に高いレベルにあり、作られた年代など考えなくても良いくらい練り込まれた作品に仕上がっているという事だ。我々が今この作品の存在と立ち位置を知ってから見ても、確信が強まるのみである。