なばてあ さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
80%の小気味よさみ
アニメ版物語シリーズのアイデンティティでもある「話と画の乖離」は、本作でも堅持されている。ともすればその「乖離」が、『終物語』などではただのなおざりな作業の結果のようにも見えていて、やや鼻白むところがあったが、本作はあらためて諸々の制作リソースを積み増して、丁寧にその乖離を彫り込んでいる。たとえばキャラクタのトラックアップも、単純なカメラワークで静止したキャラに寄るのではなく、原画さんと動画さんが手描きでグリグリと寄ってくれる。この類いのテマヒマが、全編にわたって刻まれていて、たんなる手抜きの拙速ではない、小気味よいテンポ感が実現されている。
{netabare}ただ、ラストの扇ちゃんとの対話シーンは、脚本(原作)の分量もたっぷりしすぎていて、いささかもったりしすぎ。どれだけカット割りを洗練させて画のテンポを上げたところで、あれほど話がスローダウンしてしまうと、乖離が乖離として機能しなくなる。話にフォーカスすると画がせわしないだけになるし、画にフォーカスすると話が進まなすぎて退屈になる。 {/netabare}
とはいえ、それまでのパートは、西尾維新お得意のミステリ仕立てがハマりにハマり、ひとつ解決したらふたつ問題が出てくるというサイクルがくるくる回って、すごく引き込まれる。パッケージ絵にもなっている某キャラクタがひたすらかわいく、ギャップ萌えをねじこむCVの力の入った演技もあって、久方ぶりにみる完成度に到達していた。脚本(原作)のマニエリスティックに混迷する構成を、シャフトのスペックで料理しきる意気込みのようなものがほのかに香り、濃密な観賞経験だったと思う。
衝撃:★★★☆
独創:★★★★
洗練:★★★★☆
機微:★★★★★
余韻:★★☆