まっくす さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
すべてが完璧
このアニメより面白いアニメが存在しない。op〜ed、そしてシナリオ、キャラ、bgm、世界観、作画、もう何を取っても完璧。5年前に見た作品ですがやはり、未だにこのアニメを超える作品には出会いません。
自分なりの魔法少女まどか☆マギカ最大の魅力
{netabare}
1〜8話
このアニメは何なのか?色々なキャラの回想、行動。そして最期。それを見ながら魔法少女が何なのか。魔女とは何なのか。それを知っていく。
9話
ここでまずキュウベイの目的、そして価値観について明確に説明される。
キュウベイは所謂宇宙の熱的死を延命させるために人間の感情に注目、そこからさらに思春期で感情の起伏が激しい女子中学生にターゲットを絞った。人間の繁殖、成長に必要なエネルギーに人間の感情が放つエネルギーが勝る。そうエントロピーを凌駕するのだ。だからキュウベイは人間を、ひいては彼女達を使い潰したのだ。尚キュウベイは合意を得て契約していると言っている。間違っていない。彼は契約を強制などしていない。そして彼はこうもいった「今現在で69億人、しかも、4秒に10人づつ増え続けている君たちが、どうして単一個体の生き死ににそこまで大騒ぎするんだい?」
彼は他の個体が殺されても「代わりはいるけど無闇に殺されるのはもったいない」と言い放つのだ。彼との価値観は人間とは絶対的に違うのだ。
そして11話
まどかとキュウベイ(インキュベーター)との会話の中でインキュベーターの中の人間とは根本的に異なった、普遍的に客観的な価値観を知る事になる。
これまではキュウベイは魔法少女を使い潰す悪い奴。と誰もが思っていたに違いない。だがキュウベイ、彼にも理由があった。
まどかは聞いた「みんなあなたのせいで死んだのにどうでもいいって言うの?」
キュウベイは突然こんなことを言った。「例えば君は家畜に対して引きめを感じたりするかい?」
と言って家畜が食卓に並ぶまでのプロセスをまどかに見せる。まどかは家畜が殺され加工されていく姿を直視できず「やめてよ!」と嫌がった。当たり前である。今まで生きていた動物たちが加工されて食卓に並ぶまでの残酷な光景を見たいと言う人はいないだろう。
そんなまどかに対してキュウベイは「その反応は理不尽だ。この光景を残酷と思うなら君は全く本質が見えていない」と。
そして続ける。「彼らは人間の糧になるために生まれ、生存競争から保護され淘汰されることなく繁殖する。牛も豚も鳥も種としての繁殖ぶりは圧倒的だ。君たちはみんな理想的な共栄関係にあるじゃないか」と言うのだ。
そう、彼は人間はインキュベーターと同じことをしているんだよ。と言いたいのだ。だから糧にするために産ませそして食べる。そんな人間が僕たちインキュベーターを非難する権利なんてあるのかい?と言っているのだ。だから彼は「本質が見えていない」と言ったのだ。自分のしていることから目をそらすことを非難しているのだ。
まどかは「同じだって言いたいの?」と言う。
彼女は人間は家畜たちと同じだと言いたいの?と、家畜の命と人間の命が同じだっていいたいの?と言っているのだ。
それに対してキュウベイは直接的な回答は避ける。「寧ろ僕らは人間が家畜を扱うよりもずっと君たちに対して譲歩しているよ」と。
「曲がりなりにも知的生命体として認めた上で交渉しているんだしね」と。そう、彼らは契約を結ぶのが結ばないのかは本人の意志に任せている。人間が家畜を扱うみたいに強制したりはしない。
まどかは納得いかない。だって彼女たちは、杏子ちゃんもさやかちゃんも死んでしまった。キュウベイに使い潰されてしまったのだ。
それを見てキュウベイは回想を見せる。
「インキュベーターと人類が『共に歩んできた』歴史を」
有史以前から共存関係だったインキュベーターと人類の回想を見せられる。その中には例えばクレオパトラのような人物だったり卑弥呼のような人物だったりジャンヌダルクのような人物だったり。そのような人物も魔法少女になり、夢を叶え、そして絶望し死んでいく様子を見せられる。
それをみたまどかは心を痛める。「みんな信じていたの。信じていたのに裏切られたの!」と怒る。
それに対してインキュベーターは「裏切ったのは僕たちじゃないよ、自分自身の祈りだよ。人間では到底叶えられないような祈りを実現させてしまった時、それが何かしらの歪みを生み出す。そしてそれが最悪になる。そんなのは当たり前じゃないか。それを裏切りというならまず願い事なんかするべきではない」と言う。
全く誤りはない。インキュベーター自身が手を下して何かをしたわけではない。勝手に魔法少女が自分の願いに絶望して魔女になっていくのだ。それが嫌なら願いなんてするべきではない。ごもっともだ。
「でも愚かとは言わない。彼女らによって人の歴史は紡がれてきたんだし」
「そうやって流されてきた幾多もの涙を礎にして君達の暮らしは成り立っているんだよ。それを認識したならどうして高々数人の運命だけを特別視できるんだい?」
キュウベイは、まどか。君が存在すること自体が数多の魔法少女、ひいてはインキュベーターの存在があってこそだ。といっているのだ。
まどかは問う「彼女たちの近くにいて何も感じなかったの?」と。
インキュベーターは「それが分かっていたらわざわざこんな星まで来なくて済んだんだけどね」と。
インキュベーター達は感情を持っていないのだ。インキュベーターの住む星では感情が生まれること自体が極めて稀な精神疾患でしかないらしい。
まどかはショックを受けながら絞り出すように言った。「もしもあなた達がこの星に来てなかったら…」
インキュベーターは答える。「君たちは今でも裸で洞穴の中にいたんじゃないかな」と。
インキュベーター、ひいては魔法少女の願いが有史以前から文明社会へと生活水準を引き上げたと言っているのだ。
キュウベイのやっていることを間違っていると言えるのだろうか。確かにまどかの気持ちも分かる。だって彼女は親友をゾンビにされ、そして殺されたようなものだ。だがキュウベイは彼女達と契約を結んでいた。人間にはすることもできないようなことを叶えてみせた。しかもまずインキュベーターが存在しなかったらまどか達は存在していない。そしてインキュベーターが生み出した魔法少女の犠牲が無かったらまだ人類は有史以前だったのだ。ならまどかのこの指摘は偽善と言えるのではないか?インキュベーターが、ひいてはインキュベーターがもたらす魔法少女の願いが文明をもたらした、というよりインキュベーターが殺したさやかも杏子もインキュベーターが居なかったら生まれなかったといっても過言ではないのだから。だからインキュベーターは家畜の例を出したのだ。人間は家畜を無条件で糧とするために飼育し、そして食べる。インキュベーターも同じ事を、いやもっと高待遇で人間を扱っていると言いたいのだ。そして人間とインキュベーターは理想的な『共栄関係』だ。と言いたいのだ。
さらにインキュベーターがこれを行う1番の目的は彼女達を殺めることではなく宇宙を延命させることなのだ。人類が後何千年続くか分からないが宇宙を延命させることは勿論人類単位では利益がある事なのである。勿論まどか達にとっては何万年後の宇宙の熱的死の延命なんてどうでもいい事だろうがインキュベーター達は価値観が明確に違う。インキュベーターは同種が殺される事にも自分が殺される事にも何も抵抗がない。だから彼女達に「今現在で69億人、しかも、4秒に10人づつ増え続けている君たちが、どうして単一個体の生き死ににそこまで大騒ぎするんだい?」
と言えるのだ。だから彼らは全く悪気がない。彼らは自分がエントロピーを凌駕するならば喜んで自分の命を差し出すだろう。だからインキュベーターは本気で困惑しているのだ。インキュベーターは人類にとって良いことをしていると思っているんだ。宇宙の延命は人類にとっても必要な事だからその手伝いをしていると思っているのだから。
キュウベイは悪いことをしていると言えるのだろうか。僕には分からない。
ただ魔法少女アニメからエントロピー増大に伴う宇宙の熱的死、人類進化論に変わる新たな可能性、ここまでスケールがでかいアニメが面白くないわけがないという事です。{/netabare}