101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
壁越しのセッション♪
原作ゲームは未プレイ
あらすじ
{netabare}2007年秋……高校三年の春希は成績優秀で、既に進路も決め、今は前クラス委員長として、
11月の学園祭に向けて、あれこれとお節介を焼きつつ、残りの高校生活を消化していく日々……。
最近の楽しみはと言えば、軽音楽同好会の“補欠”として、
部活動終了後、メンバーがいなくなった音楽室にて、一人でギターを弾くひと時……。
たどたどしいギターで、往年の名アイドルソング「WHITE ALBUM」を演奏していると、
第二音楽室からピアノ伴奏で合せてくれる“お隣さん”がいて……。{/netabare}
音楽を聴いているとしばしば、前奏で良曲が確定する歌があったりしますが、
本作の壁越しのセッションと言う導入は、
キッカケ一つで運命が大きく動き出しそうな予感で
胸が高鳴る素敵な“プレリュード”
主人公少年は、三人の素晴らしい友情がいつまでも続くと思えていた、
学園祭コンサートの頃に戻りたいとナレーションで述懐します。
が、私はむしろ、少年が何も動き出していないと無邪気に思えていた。
顔も分らないあのピアノと過ごした穏やかな夕暮れに戻りたいです。
内容は学園祭に向けて音楽活動と共にボルテージが上がって行く、
少年&美少女二人の友情の裏で、
ヒタヒタと張られていった恋愛の伏線が、
冬の嵐、修羅の大三角形として切なさ大爆発する波乱のドラマ。
本作が卓越していて、そして、痛切なのは、
三人誰も責め切れないもどかしさ。
私は本作ではかずさ推しですが、
だからと言って、誰が一番悪いとか軽々しく言えないです。
三人とも良い子だったから友情が始まり、
やがて恋心が芽生えて、燃え上がったのでしょうし、
三人とも少しずつ躊躇したり、策を弄したり、嘘つきだったり……。
ちょっとずつズルくて、悪い子だったから、もつれてしまう。
そもそも友情と愛情が簡単に両立できると
諸々を誤魔化し、先送りにする時点で、
三人とも幼いと言うことなのでしょうか。
三人はそれぞれ優等生だったり、稀代の才能を持っていたりとスペックも上々のはず。
それでもいざ初恋となると一筋縄には行きません。
普段、爆発を願われたりする一般的な凡庸ギャルゲー主人公少年は
美少女ヒロインの萌えを守るため、類い稀なる鈍感力を発揮して、
優柔不断な言動で、ヘイトを一手に引き受けてくれていたんですよ、きっと。
そんな考えも浮かんで来る位、
とにかく、振り上げた拳を何処にも下ろせず、叫ぶしかない。
胸を締め付けられる感覚がいつまでも残る。
本作は中々、手強い恋愛物だと思います。
前作『WHITE ALBUM』は留守電機能等が発展途上だった固定電話ならではの
すれ違い恋愛を描いた、昭和な懐古風味もあった作品。
対して本作『~2』は2007年から始まる“現代劇”として描かれ、
交遊関係を取り持つツールとして、
定額かけ放題プラン全盛のガラケーが活躍します。
こうした描写も、今の時代から見ると、
早くも“懐メロ”に感じる辺りに歳月の流れを感じます。
そんな中、『~1』から『~2』移り変わる時代を超えて歌い継がれる“名曲”がある。
そして本作で創作される友情の中に秘められた想いを乗せた“オリジナル曲”もまた、
この季節に聴くと、イントロを耳にした瞬間から、切なさが蘇り溢れて来る……。
本作もまた音楽のパワーを実感できる恋愛アニメです。