ossan_2014 さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
愛の使者
表題の末尾に(笑)を付け加えたほうが、視聴感を適切に表現できたかもしれない。
美少女(どうも、美幼女といういい方は好きになれない)と、少女にウザいほど愛情を注ぐメイドの間に展開するドタバタコメディ。
アタマガオカシイ数々の家政婦の奇行に、いちいち律儀にツッコミを入れる少女が健気だ。
表情がよく動く丁寧な作画で、テンポ良い会話劇を、会話劇にありがちなビジュアル的な退屈さから救っている。
画面の奥や端っこにいるモブたちもしっかりリアクションする芝居をしていて、世界からメイン人物だけが切り取られているような平板さがない。
特に、フェレットやハムスターの小動物がかわいらしく描かれていて、ヘンタイ的なドタバタなのに何処か優しさの漂うこの「世界」の雰囲気を強く支えている。
冒頭、母親の死の欠落感から抜け出せない少女は、少女に異様に執着する家政婦から浴びせ掛けられる愛情の圧力で、日常への復帰を(渋々と)果たす。
アタマガオカシイ異常なヘンタイ行為として描かれる家政婦の愛情だが、しかし、「相手を全肯定して受入れ、限度なく無制限に、無償で捧げる」愛とは、母親の愛の類似物でもある。
ヘンタイと罵倒されるものの、少女へ「愛」を捧げるものが成人「女性」であることによって、性的要素を排除して、この「愛」がエロースではなくアガペー的なものであることを示している。
幼女全般に向けられる、数々のアタマガドウカシテイル家政婦の奇行と愛情は、時に奇跡とも見える無制限の母性をコメディ的に変換したもので、母を亡くした少女の欠落感を包み込む無償の愛を、押しつけがましさを回避して「笑い」として表現する仕掛けとなっている。
こうした「仕掛け」が、ウザいメイドのコメディが、刺々しさのない優しい「世界」として現れてくる印象を支えているのだろう。
母親と同質の無制限で無償の「愛」を、「アタマガオカシイ」「ヘンタイ」と設定することで、逆説的に絵空事に見せない設定は興味深い。
こうして「母親」に近似しながらも、家政婦と少女と血のつながらない父親の関係は、疑似家族にとどまる。
この数年を振り返ると、幼児に変身した妖孤の子供との同居であるとか、高校生のベビーシッター部など、疑似的に家族を作るアニメが思い出される。
「家族」を描きたいのであれば、なぜ当たり前に結婚して子供を持つ過程をスキップして、いきなり一足飛びに子供を持って「家庭」を演じることを望むのかと、不思議な違和感を感じさせられていた。
しかし、疑似的な母親でありつつも「家政婦」という距離感は、無理やりな「家族」という違和感を感じさせることなく、それでも「血縁」を超えて「家族」を営むという行為を自然に見せ、ドタバタを楽しく笑える優しい安心感を与えてくれる。