ワドルディ隊員 さんの感想・評価
2.8
物語 : 2.0
作画 : 4.5
声優 : 2.0
音楽 : 4.0
キャラ : 1.5
状態:観終わった
殺人事件とは何かを考えさせられたアニメ
この作品は、「花とアリス」の前日談として制作された
アニメ映画である。視聴した後に、「花とアリス」の存在を
知ったため、それに関する詳しいコメントはできない。
ちなみに、このアニメではロトスコープという手法を採用している。
ロトスコープとは、実写で撮影した映像を、セル画にトレース
していく技法の事だ。これを使うことで、リアルな動きの作画を
作ることが出来るというメリットがあるが
反対に、顔が実写映像になりやすいというデメリットもある。
岩井監督は、これをいい具合に活用したようだ。
独特の世界観を生み出せたように思う。
全体を通した感想としては、監督の個性、作風を受け入れられるか
によってかなり左右されるタイプの作品なのだと感じた。
いい所はあったような気がするが、気になる所も多々あった。
まずは良かったところから。
ロトスコープを活用した映像表現はかなり良かったように思う。
最初は抵抗があったのだが、徐々に薄れていった。途中からは、
違和感なく見ることができた自分がいた。まあ、私が初めて
体験したロトスコープ作品がこのアニメだったというのが
大きいのだけど。製作スタッフのこだわりを感じられる映像だった。
後は特にないかな。正直な所これくらいしか出てこなかった。仕方ないね。
ここからは気になった所を述べる。
声優の演技に差がある。
大半の方は特に問題ないのだが、ごく一部の方の演技が
追い付いていない。良く調べてみると、前作の花とアリスに
ゆかりのあるキャストをそのまま声優に
引っ張ってきたようだが、アニメにおいてはそれが裏目に
出たようだ。実写映画を作る時と同じノリで取り掛かっている
のが手に取るようにわかる。
実際に、目を通して確認をしたのかがかなり気になる所だ。
肝心のストーリーだが、悪くはないが良くもない。これといった
ひねりのない微妙な出来。キャラクターにおいても、記憶に
残りそうにない者たちが多数。
一部のキャラクターに至っては、必要ないのでは
と頭の中で考えるレベル。
冒頭、自宅の部屋の2階から落下していたようだが、果たして
あのような形で作業員が受け止めるのだろうか。私では、
あんな上手いこと受け止められない。
両腕を怪我するのがおちだ。良いこのみんなは真似を
しないようにしようね。
途中から、バレエに関する話題が出てきたようだが、その
設定を上手く活かしきれていない。バレエで踊る場面は
あるものの、全体の一割あるかないか位。
その上、バレエと殺人事件とは何の関係性もないし。
私としては、主人公の友達を強引に引っ張るための囮として
使われているようにしか見えなかった。
花は、ある事件をきっかけに引きこもりとなるのだが、
初対面のありすが訪れたらすぐ外に出られるように
なるのは不自然だ。警戒心バリバリで、普通は自分から
近づこうはしないはず。これは監督が元来持っている
特殊能力を花に与えたのが理由だと自らを
納得させることにした。(要は、ただのこじつけである。)
まあ、終電をのがしてしまうというのはわかるし、自宅に
電話をいれたくないという気持ちもあっただろう。だが、
パーキングで停められていたトラックの下で夜を明かすのは
いくらなんでも無理がある。結局、夜明けと同時で色々と
大変な目に合ってるし。やれやれだぜ。
この作品における重要人物であるユダだが、彼に関しての
掘り下げが全く出来ていない。
一応花の幼馴染という設定が付与されているようだが、どうも
しっくりこない。なんせ、キーワードともいえる、婚約届に
関する下りが説明されないので、なぜあのような事態を
引き起こしたのかが見えてこないのだ。今思い返しても
全然わからんし。もしや、魔女もどきの儀式が関係しているんだよ
とのスタッフからのメッセージなのか。それなら納得だ。
この作品における一番の弱点は、明らかに誤解を招く
タイトルそのものだ。物語の終盤になって判明するのだが、
ユダは殺されたのではなく別の場所へ転校しただけに
過ぎないのだ。途中からもしやとは思ったのだが。
そのことを知った時、完全に呆けてしまったのは言うまでもない。
これを劇場で見た方は、どのように感じたのであろうか。
機会があれば、一度聞いてみたいものである。
(流石にいないと思うけど)
要は、作品名と内容の関連性が全く見えてこないのだ。
せめて、「プロローグ」とか「失踪事件」とか「ユダ事件」とかに
変更すれば大きな違和感を抱くこともなく比較的すんなり
視聴できたというのに…。
もしや、「このタイトルをつけた俺って本物の天才じゃーん♪」
などと思っているのだろうか。仮にそうだとしたら、
勘違いも甚だしい。このタイトルに反対するスタッフは
いなかったのかが、かなり気になるところだ。
このタイトルに納得できるものは、製作スタッフや
花とアリスを心の底から崇拝している人々位だろう。
私からすれば、ただの自己満足にしか見えない。
「花とアリス」が大好きな方なら見る価値はあると思うが、それ以外
の方にも面白いと感じるかはわからない。それなりに癖は
あるので、耐えられるかによって評価も変わってくるだろう。
内容重視の方は見なくても大丈夫だ。
私の方からは無理に勧めない。