モヤモヤ さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
昭和30年 鬼太郎の原点がアニメ化
原作者は言わずと知れた天才漫画家、水木しげるさん。
この「墓場鬼太郎」は終戦直後の昭和30年ごろに貸し本出版社から貸本として世に出た作品です。
貸し本とは今で言うレンタルビデオ店の漫画版のことで1泊2日10円程度で借りる事が出来たそうです。(漫画1冊買うのに現在の価格で2千円程度を必要としていたため、当時の庶民では漫画を買う事がとてもできなかった。)
そんな貸し本版を21世紀にアニメ化するのですから奇跡と言っても過言ではありません。
私も「のんのんばあ」や「河童の三平」などを見て育った水木しげるの大ファンなので、雰囲気を味わえるだけでも感激でした。
前置きが長くなりましたが、原作を既読の上でアニメの感想です。
まず、原作にどのくらい忠実かと言うとストーリーはほぼ原作通りです。ただ、残念な点は戦後の日本の苦しい事情の描写は全てカットしていることです。
戦争を経験した水木しげるさんは戦争に対する描写も忠実に書いています。しかし、内容がキツイためアニメ化では大幅にカットしています。
そのため墓場鬼太郎の持つオドロオドロしさが見えず、一部のエピソードがアニメでは淡白に表現されてしまい、全体を通してコミカルな印象が強い点が残念です。
次に本作の魅力について…
本作は「ゲゲゲの鬼太郎」のように人間を守る正義の味方といったものとは違う、全く別の鬼太郎が見れる点が実に面白いです。
墓場鬼太郎は日々の生活のために日銭を稼ぐし、欲張りで口も非常に悪く、何よりとても弱いです。
本来は終戦後の世界観とマッチした卑しさが出ているのですが、それが反映されなかったのは残念です。
最後にこの作品に重厚なストーリーや圧倒する展開はありません。
この作品は当時の時代背景を感じ取りノスタルジーに浸れるところや、実に人間味溢れるキャラのコミカルなユーモアを楽しむ点に面白さがあります。
現代の感覚ではつまらないと思うシーンもいくつもあると思いますが、当時の時代背景の再現を楽しみながら水木しげるの世界観に浸って欲しいと思います。
オススメは8話と11話です!