bcnfne さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
人類の最終形態とは何か?その命題に対して一つの提案を試みている作品。
周知のことだと思うが、エヴァ以降の人類社会では急速にインターネットが普及し、多くの人間が時間と場所を問わず互いの情報を交換できる、ユビキタス社会が到来した。
ユビキタスとは、ラテン語で神の遍在という意味を持ち、これは、米国ゼロックス社パロアルト研究所のMark Weiser氏が提唱したものである。彼によると、来るべき人類社会では、ネットワークを通して、性別、年齢、国籍、宗教に関係なくありとあらゆる場所で情報を交換することができ、そして、それに適応できる人類は、旧世代の人類とは比較にならないほど進化した存在になるだろうと考えられていた。
しかし、インターネットの普及はMark Weiser氏の当初の思惑とは別の方向へと傾くことになる。現代社会では、情報は必要以上に溢れすぎたせいで、必要な情報を選択することすらできなくなったのである。
そのため多くの人々は、ネットで見かける表面的な情報のみを読み取ることのみに満足し、それ以上の深く詮索することを怠るようになってしまったのだ。
それどころか、人々はネット社会で点在している意見をあたかも自分たちの意見であるかのように錯覚し始め、いつしか自分の認識できない思想を排除するようになったのである。
、このことから分かるように、インターネットの普及は、人類を多様化させたのではなく、お互いの思想に大きな壁を作り、本来あいまいだった思想をより大きな思想へと人々を統一させる結果となった。
現在、統一されているのは思想のみである。故に町に出かけても他者との区別はつく。だが、これから先、トランスミット技術(人間の脳とネットを接続すること)の開発が進むと、肉体すらもネットでつながることできるような社会が訪れる。その社会では痛覚も味覚も他の人間と同様の感覚を得ることになり、それはつまり、他者との境界線をなくし人類全体何らかの形で統一することを意味する。
長くなったが、私は、当作品でLCLに還元された人類を、来るべき統一社会で存在する人類そのもの比喩ではないかと思っている。そして、統一された人類こそが人類の最終形態であるのだ。しかし、果たしてその統一生命体を人類と呼べるもなのだろうか?
その問いに対してもエヴァは一つの解答を提示している。物語の終盤、人類はLCLに還元され一つ生命体になるものの、しかし主人公であるシンジは、人類全体が単一の生命体になることを拒み、元の個々の肉体を持った生命体に戻ること望んだのだ。私は、それこそがエヴァンゲリオンの真骨頂だと考えている。人間とは他者との比較によって自らを存在を定義するものであって、統一された人類、それは最早人間ではなく別の生命体であるのだ。
なんにせよ、我々は、インターネットによって人類が統一されつつあることには間違いない。人類統一社会が良いか悪いかは、今の人類ではわからない。しかし、人類が一つ存在に成り果てたその時、エヴァンゲリオンの存在は、人類が再び人類であるための一つのヒントになりえるのではないだろうか。
最後に20世紀にこのような作品に出合えたことに感謝したい。
by Bcnfne
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というおっさんの妄想でした~