たわし(爆豪) さんの感想・評価
3.8
物語 : 5.0
作画 : 3.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
絶望から希望を見い出せ
はたまた藤子F不二雄先生の名作のアニメである。
原作は公害問題や人口爆発が最も社会問題化していた1970年代。「ポストアポカリプス」と呼ばれる漫画や映画が出てきたのはこのあたりからになる。
現在でも海外ではこういう作品は多く作られ、アメコミドラマ「ウォーキングデッド」やスティーブンキング原作の映画、コーマックマッカーシーの小説などは全てこの題材が主である。
1970年代から既に人間は日々の生活の歪に気が付いていたと言える。紛争はどこでも起きているし、資源は有限であり、人の気持ちは日々変わり続け曖昧だし、都会というジャングルには外を歩けば皆知らない人間ばかりである。
そういった今でも通じる不安そのものが、F先生のSF短編には如実に現れている。
この「みどりの守り神」は、またしてもある日、主人公の女の子を除いて殆どの人間が死滅しており、人間文明が崩壊している様を描いているわけだが、「カンビュセスの籤」などとは違って、地球の自然は「自己治癒」をしようと懸命に再生し、主人公を助ける役割を果たしている。まるで宮崎駿の「風の谷のナウシカ」の「腐海」のようではあるが、実はナウシカよりも4、5年前に原作が描かれているのでF先生のほうが少し早い。流石である。
そして最後にはかすかな希望が記されて、絶望に陥っていた人間がわずかながらそれでも立ち上がろうとする強さを描いている。
人間社会は常日頃変化し、一定どころに収まらず驚異に脅かされる毎日がほとんどだが、人が生命を維持し「生きよう」と希望を持つ限り、少しずつでも進化しているという結末に感動を覚えるのだ。
「人間の運命は円環ではなく螺旋である」とベルセルクの大魔導師フローラの言葉だが、実際そうでありそうであると信じたい。
参考SF小説としてブライアンオールディスのSF小説「地球の一番長い午後」とハーランエリスンの「少年と犬」が大元のネタだと思える。