「交響詩篇エウレカセブン(TVアニメ動画)」

総合得点
90.3
感想・評価
4412
棚に入れた
20476
ランキング
56
★★★★★ 4.1 (4412)
物語
4.1
作画
4.0
声優
4.0
音楽
4.2
キャラ
4.1

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ネタバレ

こまたち さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 3.5 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

ハード面は一級品、ソフト面はジャンク

2005年放送のロボットアニメ
全50話

制作はBONES。雰囲気は同社制作の『忘念のザムド』や『絢爛舞踏祭』に近い。いわゆるボーイ・ミーツ・ガールものの作品です。視聴後の第一声は「いい話だったなぁ…」と。あとから考えてもそれ以外の感想があまり出てきません。あにこれの90点評価作品の中では唯一過剰評価が過ぎる作品だと感じました。いや、普通にいい作品・いいお話ではあるんですよ。ただその領域から全く出てこないだけで…

【総評コメント】
・話が面白くなってくるのは2クール目の中盤から。それまでが苦行ではあったが、全体を通してみると、1クール耐えたい甲斐があるいい見応えの作品でした。レントンの語りのウザさや恋愛・友情・(家族的な)温もりのどれにも振り切れないストーリーが退屈感の原因であり、本作品におけるおおきなマイナスポイントになっています。

・”レントンの成長”に主眼をおいて物語は進行していきます。他サイトも含む多くのレビューでは、本作は「レントンの成長物語」であると言われているが、その明言自体は私もその通りだと感じました。確かにレントンは成長した。ただ本作における評価の大部分を、はたしてこの”レントンの成長”という要素に求めて良いのか?ということに関しては甚だ疑問であります。

・物語全体についての私個人の印象としては、「レントンが成長した」というよりも「エウレカがレントンを受け入れた(または成長した)」という印象のほうがよっぽど強く、またより適切に感じられる。そもそもの話、レントンの性根やスタンスは最初から最後までほとんど変わっていない。「エウレカが好きだ」とか「エウレカを守りたい」といった、エウレカ本位の言動をラストに至るまで一貫している。レントンとエウレカ―。この2人の関係性はニルヴァーシュ等を通して徐々に変容していくわけだが、それはなにもレントンが成長したからではなく、第一に一般的な恋愛過程が進行した結果として、第二にエウレカが自身の成長を通じて己の気持ちに気付き、その結果としてレントンの気持ちを受け入れたことに起因する。ただし、何度も言うようだがレントンの成長ももちろんあります。月光号からの脱走と夫妻のもとでの生活(そして別れ)はレントンの心を大きく成長させたと思います。ただ、ここで言いたいのは全体を通しての”印象”についてであり、レントンの成長はエウレカの成長に比べて、(印象としては)過小に感じられるということです。

【GOOD】
・本作最大の魅力はドミニクとアネモネのサイドストーリーに詰まっています。個人的にはこちらをメインに進めて欲しかった。好きな女の子のために一生懸命になれる男の子ってやはり素敵ですね。レントンも同じはずなのだが、好感度で言えばドミニクのほうが圧倒的に高い。またドミニクの一方通行ではなかったことも好印象。”好きな男の子に素直になれない女の子”というアネモネのキャラクター(性格)が作中を通して丁寧に描写されていたので、終盤に明かされるアネモネの本心には深く共感できました。本作において唯一感動で涙を流したのも、ドミニクとアネモネが結ばれるシーンでした。

・重厚な世界観とそこで繰り広げられる壮大なストーリーが本作の特徴にして魅力。主題は「人類とスカブの共存の道を探る」でしょうか。レントンとエウレカをその希望(または可能性)として、二人の成長や恋愛物語と主題を重ねることにより、作品のテーマ性を色濃く演出できていたことは素晴らしく思う。私が「いい作品、いい話だったなぁ…」とか「一度見始めたらとまらない」という雑感を抱く所以はおそらくここにあります。未回収の伏線や説明不足に感じる部分はありましたが、作品としてのまとまりは他のセカイ系作品に比べればよいほうです。ラストの超展開を批判せず、素直に受け止められたという事実にも本作のプロット・構成の良さが見え隠れしています。

・その他、音楽・作画は一級品のできです。

【BAD】
・ホランドの奇妙な性格がマイナスポイント。全体を通してみれば好印象なかたではあるんですよ。ただ、常時子供っぽいというキャラクターなのに恋愛面だけは異常に大人ぽい思考をしているのがどうにも引っ掛かる。「レントンの姉のことが未だに忘れられない」とか、それにも関わらず「タルホを手籠めにして」おり、なおかつ「エウレカに惚れている」といった具合。字面だけみればただの屑野郎なんだよなぁ。こういった理由からホランドに対して悪印象も抱くし、ホランドという人物の”像”が不透明であるとも感じた。”やるときはやる男”といった魅力は十分伝わってきた。が、しかしだ。それ以外は?と聞かれると……ねぇ。。。だからこそ、なぜゲッゴウステイトのメンバーはホランドについてきたの?とすごく疑問に思うわけ。

・ホランドに限らず、この作品は人物の掘り下げや設定、心理描写がおそろしく不足している。ところどころ情に訴えかける描写があったものの、ほとんど感動や感慨を得られなかったのはこのためであろう。

・本作を楽しむうえで最も弊害となったのはレントンとエウレカの恋愛模様にあまり魅力を感じなったことです。これがドミニクとアネモネをメインにして描いていれば、評価もだいぶ変わってきたことと思います。

・伏線の回収の仕方が安易すぎます。「そんな単純なことだったのかよ(怒」
と何度思ったことか。まずもって必要ない設定・伏線が多かったですね。そんな膨大で面白味のない伏線のせいで、物語において極めて重要な設定がほとんど説明されないまま終わってしまった。ファースト・サマー・オブ・ラブ、アゲハ構想、月光号の建造理由などなど。ここらへんに説明を詰めたほうがよっぽどマシだったと思います。

以上

雰囲気を楽しむセカイ系作品としては一級品です。
オススメ度★★★☆☆

投稿 : 2018/10/22
閲覧 : 291
サンキュー:

5

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