World さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 2.5
状態:観終わった
受けている評価と違った感想を持った初めての作品
今作は、世間的にかなり高い評価を受けている。
レビューの平均点数を見てもわかる通りだ。
私はミーハーな部分もあり、高評価の作品はなるべく見るようにしてきた。
平均評価が高いということは、それだけ万人受けする作品だということでもあり、今まで見てきた所謂名作と呼ばれる作品は、どれも大変満足することができた。
世間に評価されている作品は、大抵私が見ても面白かった。
だが、今作は評価通り面白いとは思えなかった。
初めての体験だ。
気になった所を何点か書いていく。
まず、物語自体はスポ根なのだが、どうにもすんなり行き過ぎてしまっている様に感じる。
私は楽器に詳しく無いが、描写などを見ると、リアリティをある程度は追求して作られていることが分かる。
又、心理描写等も、きっちりと細かく描かれている。
だが、だからこそ、すんなり行き過ぎているストーリーに違和感を感じてしまう。
ドロドロとした人間模様や、挫折の過程、吹奏楽部の詳細をきっちりと描いているにも関わらず、物語の根幹のみがイージーに進んでいくため、余計に気になる。
これが、全てをある程度は雑に描いて、一つのポイントに絞って作られた作品ならまた違うのだが、今作のコンセプトと実際のストーリーがマッチしていないとどうしても感じてしまう。
スポーツでも勉強でも、趣味でもゲームでもなんでもいいのだが、真剣に全国レベルを目指していた人なら分かるかもしれない。
たったの半年程でそこに到達できるほど、甘くは無い。
あの程度の努力、あの程度の団結力では、到底無理だ。
そこの違和感を、どうしても拭う事が出来ない。
リアリティを追及するなら、そこまでとことんやってほしかった。
次に、上記に関連してだが、主人公やその他主要キャラは好感が持てるのだが、不快感を感じるキャラが多数いた。
その問題が根本的に解決していない為、大会を勝ち上がったという感動がどうしても薄れてしまう。
くどい様だが、2年間ないし1年間だらだらと過ごした部員が、たった半年で関西大会出場は、ありえない。
そこに至るに値する努力の説明もなされていない。
努力したのは当たり前だろうが、それは他の学校の部員も同じ事。ましてや強豪校は2年間キッチリと練習してきたのだろう。
それに勝るだけのものがあったのかと感じてしまう。
結果感動がより薄れる。
それから、高坂のキャラとしての説明不足も気になる。
尺の問題かもしれないが、高坂のバックボーンがまるで描かれていない為、どういう人物なのか理解することが難しかった。
主人公が影響を受けるシーン等には感情移入することが出来たのだが、当の高坂の人物像が明確ではないので、やや説得力に欠けてしまった。
問題点ばかり書いたが、良い点も多数あった。
まず、作画が相変わらず素晴らしい。
演奏の迫力というのは、身体で受け止めないとなかなか感じることが出来ないものだが、見るだけで演奏の凄みを感じさせる事が出来ている。
キャラクターの動きも素晴らしく、仕草の一つ一つに無駄がない。
又、黒板に文字を書く際にたまに鳴る嫌な音を入れてみたりと、「あぁ。高校時代はこんなだったなぁ」と感じることが出来る所が何点もあり、非常に良かった。
音楽に関しても、楽器の素人でも分かる様に違いがきっちりとなされていて、キャラクターの成長を感じることが出来た。
演奏中の音楽も、違和感を感じることはなかった。
全体で見て、駄作という訳では決して無いのだが、世間の評価と比べると、見劣りしていると感じてしまった。
これは、好みの問題もあるだろう。合う人が見れば、面白いのかもしれない。