蒼い✨️ さんの感想・評価
2.8
物語 : 1.5
作画 : 3.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 2.5
状態:観終わった
歌い手のバラッド。
アニメーション制作:project No.9
2017年7月 - 9月に放映された全12話のTVアニメ。
原作は電撃文庫レーベルのライトノベルで原作者は蒼山サグ。
監督は、柳伸亮。
【概要/あらすじ】
とある過去からイジメを受けて人と接するのが苦手になっていた貫井 響(ぬくい きょう)は、
不登校の引きこもり状態の高校一年生。
アニメでは両親が姿を見せず、生意気な口調だがブラコンの小学5年生の妹がいる。
時間が有り余った自宅警備員暮らしのなかで響はギター演奏にのめり込む。ネットだけが外の世界とのつながり?
パソコンソフトで自作した楽曲を動画サイトに定期的に投稿して視聴者数を稼いでいた。
そんな彼に、曲を聞いてファンになったという、五島 潤(ごとう じゅん)という人物からメールが届く。
現状を変えたいという思いから指定された日時に待ち合わせ場所にいくと、
そこには気の弱そうなロングヘアの美少女小学生がいた。彼女こそが、五島 潤だった。
しっかりしたメールの文面から響は大人の社会人だと思っていたのだが。
紅葉谷 希美(もみじだに のぞみ)、金城 そら(かねしろ そら)と合計3人の小5女児に連れて行かれた先は、
敷地内に教会がある児童養護施設『リトルウイング』
彼女たち3人は施設の孤児であり、大らかな男性・佐渡(さわたり)に育てられている。
事業上の都合の規模縮小で教会を手放す予定であり、それを知って今の状況で教会できることはないか?
と彼女たち3人は考え、思い出づくりに教会でライブやりたいので手を貸して欲しいと響に言う。
佐渡のコレクションで楽器はびっくりするぐらい良いもの揃いだし、彼女たちの演奏は合格点。
とりあえずは教会をイベント会場として彼女たちのライブを開くとして、
引きこもり少年のプロデュース・サポートによるロリータバンド物語のスタートである。
【感想】
『ロウきゅーぶ!』の作者、蒼山サグによるロリータバンドアニメではあるが、
私の感性と蒼山サグの感性は合わないようだ。
この作者は、12歳以下の女の子を天使として崇めて癒やされたいという作風ではあるが、
女児をカワイイカワイイしたいという傾向が強すぎて鑑賞物扱いであり、
等身大の一人の人間としての女児のキャラ造形が練り込み不足であり、
会話のキャッチボールなどによる感情の起伏の描かれ方が不十分極まる。
前作の『ロウきゅーぶ!』では、描写に秀でているわけではないがスポ根要素と家族要素を盛り込んで、
強くなりたくてバスケを頑張る&チームワークを深めるという一般向け要素でガワを作ってはいたのだが、
今作のようにロリコンハーレムという作者の趣味や理想以外の部分を削ぎ落としすぎて、
ギャルゲーのイベントを消化するみたいな、単にストーリーをなぞるだけの作者お手製の人形劇っぽいと思った。
他人を避けて狭い交友関係で生きてきたという弱さを持った女児たちとお兄ちゃんという、
弱い心を持つ同士が身を寄せ合い、お互いに触発して心理的な成長をするというのが作品のテーマ性なのだろうが、
このアニメにあるのは、『わにゃ』『はむ』と言った口癖とテンプレ的なキャラ属性と台本通りのお芝居っぽさ。
少女キャラの可愛さを表現しようにも装飾過剰気味のキャラデザと記号化された性格設定しかなく、
ロリータ三人組に限らず女性キャラの全員が、まるでギャルゲーかエロゲの攻略キャラの如しであり、
どこか特別感を出そうとして、クラスにいる普通の少女に対する親しみに似たものが無いのである。
ただのロリコンアニメじゃないのですよ!とアリバイ作りに、
響の同級生のグラマラスな美少女の鳥海 桜花(とりうみ さくら)を出して彼と絡ませてはいるが、
彼女の見た目こそ派手だが、前作『ロウきゅーぶ!』の荻山葵と性格・声優・役回りに変化がなく、
作者の引き出しの少なさも気になった。
これがファンタジー異世界を扱う作品であるのならまだしも、
現代日本を舞台にしている日常バンド作品にしては、普遍的な日常要素や社会性が限りなく薄い。
『けいおん!』が何故大ヒットしたのか?を考えると、これに足りない部分がいろいろと見えてくる。
思うに、作者の蒼山サグが女児を偶像化し過ぎているために地に足の着いた子供像から遠ざかっているのではないか?
小学生は、小学校の中に子供同士のコミュニティや大人が触れられないパーソナルスペースや日常があり、
部外者の大人から隔絶された日常空間でも物語は完結し得るのである。
だが、このアニメではロリータ3人組は引きこもりのお兄ちゃんとの付き合いがメインで、
小学生にしか出来ない教室ストーリーが存在しないし、
単にお兄ちゃんキャラと作者の考えた理想の幼女キャラをイチャイチャさせたいだけ!なのが煤けて見える。
作者が描きたいもの以外を徹底的に排除するというキャラの性格や事情の設定が作為的なのである。
ロリ媚びだけじゃないマトモな作品性もあるのですよ!とシリアス話を練り込んでみても、
後付けっぽく見えるのは気のせいだろうか?
バンドと孤児と居場所づくりというストーリー性に小学生である必然性がない。
ぶっちゃけ、小学生の物語を描きたいのであれば、お兄ちゃんキャラは脇役枠で構わないし、
そのロリコンお兄ちゃんキャラも、うらなり顔の薄味なキャラ付けで見ていて面白くもない。
お兄ちゃんと群がる女児たちという構図を作者が手放せないからこそ、
趣味の上に作品性を作者が付与しようとしても、不自然になるのである。
比較として、『ばらかもん』を見ればいい。ロリータ3人組と『ばらかもん』の琴石なるを比べれば、
どれだけ『天使の3P!』が子供の描かれ方が媚び媚びの厚化粧で自我の薄い鑑賞物でしかない、
単にロリコンを満足させたいだけの作為的なアニメであるか口で説明するより解りやすい。
大きなお友達向けにカスタマイズされた不自然な子供である潤、希美、そらは、
ロリコン向けの接客業を演じている役者でしか無いのである。
ていうか、女児にマイクロビキニを着せているイメージビデオとコンセプトに大差がない。
ロリコンアニメとしてネタがぶっとんでいて可笑しみがあるわけでもなければ、
ドラマとしても作り込みの甘さが目立つ。
オタク趣味のラッキースケベと、とってつけたような感動要素で、
とにかく作りが浅い、残念な物語ではある。
ネタ回と思しき第10話のロリ媚びが酷すぎてトドメを刺されたので個人的には低評価にせざるを得なかった。
結局の所、ロリ5~6人に揉みくちゃにされる少年という図を描きたい!
三次幼女と違って、引きこもりお兄ちゃんを決して拒絶しない、
水着やら際どい格好やらでベタベタとサービスしてくる都合の良すぎる甘々な自作幼女キャラから、
“バブみ”を感じたいという作者の願望が強すぎる。
不健全なエロスは存在しないと言うものの子供を性的に見て興奮するという響少年のインモラルさ、
女児キャラの過剰なあざとさが鼻につく部分がキャラ付けとして美味しくもない。
コミケに行って二次元幼女ラブを公言するような人たちには、ご褒美アニメには違いないが、
個人の嗜好の差は埋められようがないと思った。
とは言ってみたものの、原作未読なのだから原作を読んでみると感想が変わってくるのかな?
意向の大元がどこにあるのかは解らないが、この制作会社と柳伸亮監督の手にかかると、
アニメ映えするシーンが最優先の映像作品として作られる傾向が強く、
微細な会話や心情描写の簡略化や省略は、いつもどおりっぽい。
同じ監督が手がけた『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』『りゅうおうのおしごと!』
も参考にするといろいろと得心した。
むしろ、1クールで原作を無理に消費する今どきの深夜アニメの作り方のパターンそのもので、
原作が大事にされてないのかもとも思った。
原作者の前作の『ロウきゅーぶ!』をちょっと読んだけど、
嗜好に合わなかったので、このアニメについては割とどうでも良いのだが!
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。