banjo さんの感想・評価
3.1
物語 : 1.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 2.5
状態:観終わった
先ほど全話見終えました
この作品は解釈が分かれそうなので、私個人の解釈を前提としたコメントになることを注意しておきます。
仕事関係、賠償金の返済、精神障害と世間体、父娘関係等、社会によって究極的に追い詰められた状況の人間たちが登場し、彼らは『少年バット』という通り魔に襲われます。襲われた彼らは病院の一室で、一時的とはいえ社会から隔離され安堵の表情を浮かべます。実は『少年バット』は、初めての被害者である月子の生み出した妄想上の存在なのでした。2人目以降の被害者は『少年バット』のウワサにすがりついたのです。
そう言ってしまうと、被害者たちが都合よく『少年バット』を利用しているようにも聞こえますが、違います。そんなことをしても根本的な原因は解決しませんから。
彼らは単に被害者を演じている訳ではないのです。本当に襲われたと思い込んでいるのです。
つまり、『少年バット』の本性は、究極に追い詰められた状況の中、精神が潰れる寸前に働く、一種の防衛本能。究極の逃避行動として脳に見せる幻想のようなものでした。
少年バットとは別に『マロミ』というマスコットも登場します。マロミは愛くるしい姿で人を癒します。人によっては、精神にストレスが生じたときに「きみは悪くない」「きみを守ってあげる」と声をかけてくれます。『マロミ』は人の精神を救う妄想です。その点は『少年バット』と同じです。
違う点は、いわば精神の砦であり、言い換えれば窮地極まった状況の象徴である『少年バット』ほど、究極的な存在ではない点です。ですから、その状況に至る前になんとかしようと、マロミは少年バットから人間を救おうとします。作中の描写には、マロミが消えていくとともに、少年バット率いる黒い物質が人間たちを、社会全体を飲み込む場面がありました。
この作品は現代社会に蔓延る精神的ストレス、その崩壊に至る前にあらわれる2つの現実逃避の在り方を表すものであると考えます。
さて、以上の私の解釈を踏まえ、最後に、私の評価が厳しくなった理由を記載します。
まず、推理モノだと思って見ていたため、途中からは着地点を見失って暴走したのかと思いました。例えば、特にストレスを抱えていない人物(牛山)まで狙われていることによって警察の読みが外れていく様や、犯人だと思わしき少年(狐塚)が真犯人によって殺される事件等、推理モノとしての謎を深める展開をしている点です。その着地をせずに別ジャンルに移行していったので、煙に巻かれたかのような印象を受けました。
また、無意味な過剰演出と、5、8,9、10話は「何を見させられているんだ」という気分になり、シラケます。