oxPGx85958 さんの感想・評価
3.2
物語 : 2.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 2.5
状態:観終わった
教訓は「原作もので遊ぶな」
放映時は1話の途中でクマの声に違和感を覚えて中断。その後、最終回を終えて炎上しているという話は聞こえてきました。今回、ふと思うことがあって最後まで見てみたわけですが…
絵柄や演出から抱いた当初の印象とは違うシニカルなユーモアがけっこう面白くて楽しみつつも、こういうことを最後まで続けていって炎上したんだろうなと思っていたら、最後の2話の展開はこちらの予想を超える異様さでした。
放映終了後に原作者がブログに苦情を書き、脚本家がSNSアカウントを閉じて逃走した、という経緯が歴史に刻まれてしまっているいま、本作の終わり方は商業作品として失敗だったと言わざるをえないでしょう。
せめて脚本家が平然とした態度を取っていれば、本作はカルト的な怪作として肯定的に評価されえたかもしれません。本作で脚本にクレジットされている人物は2人ともアニメ・プロパーの人ではなく、いい意味でも悪い意味でも業界に縛られていなかったということなのかな、などということを思いました。
その上で言いたいのは、こういう視聴者置いてけぼりの「実験的怪作」が平然とまかり通るようになると、ジャンル自体が失速するというのは、日本映画黄金期のプログラム・ピクチャーや日活ロマンポルノの終焉を知る者にとっての貴重な教訓ではあるのです。
本作についていえば、これが原作ものでなければ問題はなかったはず。しかし原作ものでなければこの企画がそもそもなかった。また、この原作が超有名作というようなものではなかったことが、このようなアニメ・オリジナル脚本を可能にする雰囲気を作った、という因果関係もあったかもしれません。いい意味でも悪い意味でも、原作を「尊重」しないでいいという諒解があったはず。
オリジナル脚本である、村のコマーシャルを撮ったのに乗っ取られてしまったというエピソードは、メタ的自己言及を思わせて興味深いです。
そういったメタ的視点から離れて、本作を単なるアニメ・シリーズとして見ると、作画と音楽がいい、しっかりとした作りの作品ではありました。大役デビューである日岡なつみは、これがほんわかした日常系アニメを求めている視聴者を変に刺激したんじゃないかとさえ思わせる、妙な生々しさのある演技をしていて、気に入りました。今後の活躍に期待です。